プラスチックごみは、国内でリサイクルされるだけでなく、海外にも輸出されています。輸出先は、どの国が多いのでしょうか。近年プラスチック輸出を巡る国際情勢は変化しています。今回は、変化を踏まえたプラスチックごみ輸出の現状、課題について触れたいと思います。

■  プラスチックごみの輸出の始まり

2017年、中国がプラスチックごみの輸入禁止を突如表明、これにより「ごみ貿易」の実態が明るみになり、先進国がプラスチックごみを中国やアジア諸国に輸出していたことが広く知られるようになりました。

輸入国は、プラスチック製品を自国でつくるには、石油プラントを建設しなければならないため、工業化が遅れている国では、廃プラスチックを輸入して再加工したほうが安上がりであり、一方、輸出国は廃プラスチックをリサイクルすると設備費や人件費がかかり、輸出すれば儲かるとのことで、輸出入双方にメリットがあり、

「プラスチックごみ貿易」が2000年代に急増し、2019年には日本は世界第2位のプラスチックごみ輸出国となってしまいました。

■ 日本から中国への輸出激減・東南アジア諸国に拡散

2017年12月末、プラスチックが深刻な環境汚染をもたらすため、中国では生活由来のプラスチックごみの輸入禁止に踏切、それ以降、中国への輸出は殆どなくなり、中国から東南アジアにシフトされるようになりました。[下図参照]

■東南アジア諸国もプラスチックごみの輸入規制に動く

2018年以降、先進国のプラスチックごみの行き先が、中国から東南アジアにシフトされるようになりましたが、輸出国の不正が相次ぎ、東南アジア諸国においても「先進国のごみ捨て場ではない」との反発があり、有害物質の越境を取り締まる『バーゼル条約』が改正され、2021年から汚染プラスチックごみを輸出する際に相手国の事前同意が必要となり、東南アジア諸国の規制も厳しくなってきています。[下表参照]

それでも依然として「ごみ貿易」はつづいており、日本のプラスチックごみの輸出量は、プラスチックごみリサイクルの約1割を途上国に依存しています。

■ プラスチックごみ輸出、次に向かう先はアフリカ?

2018年、2019年にはアフリカに輸出していたプラスチックごみは2,000~3,000トン程度なので、それに比べると2020年の輸出量は8,100トンに増えています。

アフリカへの輸出が増えた理由として、日本のプラスチックごみの主な輸出先だった中国や東南アジア諸国がプラスチックごみの受け入れを規制・禁止したことで、行き場を失ったプラスチックごみの一部がアフリカへシフトされたと思われます。

「バーゼル条約」でプラスチックごみが有害廃棄物として輸出入が制限されるようになり、統計上、日本からのプラスチックごみ輸出量は減っていますが、現在でも違法にプラスチックごみを輸出し続けている業者があるとの報道があり、このような輸出は、統計データに入ってない可能性があります。

東南アジア諸国と同様にアフリカへのごみ輸出も「アフリカは世界のごみ捨て場ではない」とアフリカ各地で輸入反対運動が起きています。

■ プラスチックごみのリサイクル

プラスチックごみの輸出が規制・禁止される状況のもとでは、国内での資源循環が重要となり、効率化するには、プラスチックの回収やリサイクルが従来以上に求められます。

プラスチックのリサイクルには大きく分けて(1)マテリアルリサイクル、(2)ケミカルリサイクル、(3)サーマルリサイクルの三つの方法があります。[下図参照]

日本での廃プラスチックの有効利用率は2005年の58%から2021年には87%まで上昇しました。

ただし、処理の内訳を見ると、サーマルリサイクルが多くを占めています。

サーマルリサイクルを除いた場合、日本でのプラスチックごみの有効利用率は低い水準にとどまっていると言えます。

■ プラスチックごみのリサイクルの課題

サーマルリサイクルは、廃プラスチックを燃焼させるため、新たな製品の原料として循環させることができないという問題点があります。

マテリアルリサイクルでは、プラスチックごみの再利用は品質の劣化などのため難しく、新たなプラスチック原料を追加する必要があり、匂いなどから再度飲食物などの容器に用いることは難しく用途が限られます。

ケミカルリサイクルについては、現状では処理を行える工場が少なくリサイクルを行える量が限られています。

このようにプラスチックのリサイクルには様々な課題があり、原油など化石資源は限りがあることや廃プラスチックによる自然環境の汚染を防止するためには限りある資源を消費、廃棄し続けていくのではなく、日本での循環型社会の実現に向けた体制の構築が求められています。

プラスチックの循環を促すには、リサイクルの処理能力を高めるだけでなく、

(1)使い捨てプラスチック等の削減、(2)未利用プラスチックの回収・リサイクル

(3)効果的・効率的なリサイクルシステムの構築、(4)再生材市場の活性化が効率的に行われる体制を構築することが必要となります。

■EU諸国のプラスチックリサイクルの取組みと日本の課題

EUでは、使い捨てプラスチックの禁止、マイクロプラスチック添加製品の販売禁止といった対策が行われており、2021年、これらの実施にあたっては円滑な実施に向けたガイドラインが公表、近年ではケミカルリサイクルを推進し、新品素材と同等の品質の再生リサイクル材が得られ、資源循環に繋がることや焼却・熱回収に比べて二酸化炭素排出量が50%削減されるメリットがあると言われています。

日本でも資源循環体制の構築にはケミカルリサイクルの普及・活用が求められますが、現状ではマテリアルリサイクル、サーマルリサイクルを併用しつつケミカルリサイクルの普及を推進していく必要があると思われます。

プラスチックごみ再利用の義務化は事業者の負担となり得、また、新しく産業廃棄物処理の施設を作るには、周辺住人の理解が必要となるという課題もあります。

■行き場を失ったプラスチックごみ:対処・解決策は⁉

世界中でこれまで作られたすべてのプラスチックのうち、リサイクルされたのはわずかで、埋め立てられたり、燃やされたり、自然界に流れ出して海の底に沈んだりしています。

使い捨てプラスチックごみ問題の解決策は、日々の暮らしの中でプラスチックごみを減らすための工夫を続け、「プラスチックごみの総量を減らす」ことであるのは明らかです。

プラスチックを取り巻く環境が大きく変化する中、「プラスチックごみ輸出」においも新たな輸出先を探すという視点だけでは、対応が困難です。

プラスチックごみ排出量の削減や代替品の開発など、プラスチックに対する従来の発想を抜本的に変える必要性があります。              By 海士人