前回は「自分の目見たベトナムのごみ事情」を写真を中心に見て頂きました。

今回のブログはベトナムのプラごみの取り組みをレポートします。

ベトナム国家としてのプラごみに対する取り組み

1. ベトナムは世界的に見てもプラスチックごみの廃棄量が多い国の一つとされており、特にハノイ市ホーチミン市の2大都市だけで、毎日2,000トン以上のプラスチックやビニール袋などがごみとして廃棄されており、2019年、当時のグエン・スアン・フック首相は、2030年までの海洋プラスチックごみ管理に関する国家行動計画を公布しました。

同計画では以下の5つを目標に掲げています。

◇2030年までに海洋プラスチックごみを▲75%削減。

◇海上で一切の漁具投棄をしない。

◇全ての沿岸の観光・宿泊施設で使い捨てプラスチック製品、分解されにくいビニール袋などを使用しない。

◇自然保護区でプラスチックごみを一切無くす。

◇主要11河川流域の一部河口、および郡レベルの島12か所では海洋プラスチックごみに関する年次調査と5年毎の調査を実施し、実態・状況の調査・評価を行う。

 上記目標の達成に向けて、以下の5つの項目を国家の重要任務とするとしました。

◇意識向上に向けて情報周知を図る。

◇沿岸・海上でのプラスチックごみの収集・分類・保管・輸送・処理に取り組む。

◇ごみの発生を抑制する。

◇海洋プラスチックごみの処理において国際協力、研究、技術の開発・応用・移転を行う。

◇海洋プラスチックごみを効率的に管理する仕組みの構築に向けた調査・研究を行う。

中国がプラスチックごみの輸入を禁止して以降、ベトナムにも多くのプラスチックごみコンテナが入ってくるようになりましたが、再生出来ないようなごみが混じっており、厳しく検査されるようになり、全国の港に放置されるコンテナがあふれています。こうしたプラごみの送り出し国の一つとされるのが日本です。フック首相は「ベトナムをゴミ捨て場にするわけにはいかない」としてプラごみの輸入を2024年12月末で停止する方針を表明しました。(VIET JOより)

2. ベトナムにおけるプラスチック廃棄物の管理強化プロジェクトに関する首相決定第1316号/QD-TTgが2021年7月22日、公布と同時に施行されました。

プロジェクトは2025年までの具体的目標として、◇ショッピングセンターやスーパーマーケットでは非分解性レジ袋に替えて生分解性レジ袋を使用する、◇プラスチック廃棄物の85%を収集・再使用・再生・処理する、◇海洋のプラスチックごみを50%削減する、◇全ての観光地・宿泊施設・ホテルで非分解性レジ袋や使い捨てプラスチック製品を使用しない、◇非分解性レジ袋や使い捨てプラスチック製品の生産量と使用量を徐々に削減する、を掲げています。

プロジェクトの実施に当たっての課題と解決策としては、「プラスチック廃棄物の発生・収集・処理状況の調査・観察、プラスチック廃棄物の管理に関する政策・規定の整備」、「プラスチック廃棄物の管理に関する知識の教育・普及、国際協力」、「プラスチック廃棄物の管理に関する研究・ITの応用・活動モデルの展開、環境に配慮した製品の生産」の3つの項目をあげ、それぞれ具体策を示しています。(VIET JOより)

3. 2021年、プラスチック使用・廃棄の規制が動き出しました。ベトナム政府は従来のビニール袋類の使用を、2010年と比べて65%削減するという目標を掲げ、この目標実現に向けて、プラスチックリサイクルに特化した工業団地を整備したほか、2026年からは、自然分解しにくい従来のビニール袋の生産を全面的に禁止する方針です。また、分解しにくいビニール袋に対する環境保護税を高めたり、市民にビニール袋が引き起こす環境問題などの知識を広めることも始めています。(IC Net Limitedより)

4. ベトナム当局は、2025年までにスーパーマーケット・商業施設で使用するレジ袋の100%を環境に配慮した袋に切り替えることを目標に掲げており、2026年以降、買い物客に使い捨てのビニール袋を提供するスーパーマーケット・商業施設に対し罰金を科す方針。資源環境省傘下の資源環境政策戦略研究所(ISPONRE)の調査結果によると、国内のスーパーマーケットにおける1日当たりの使い捨てビニール袋使用枚数は約10万4000枚で、年間3800万枚に相当します。 調査に参加したスーパーマーケット48か所のうち、46か所は買い物客に使い捨てビニール袋を無料で提供しています。(VIET JOより)

プラごみの終着点 「プラスチック村」

ベトナムにはプラごみの終着点といわれる「プラスチック村」があります。フンイエン省ミンカイ村のことで、村には国内外から持ち込んだプラスチックをリサイクルする作業所が並んでいます。

 海外からのプラごみが少なくなり、ベトナム全土からプラごみを集めているが、ごみ原料のペレットは強度が弱く、安物の限られた製品しか作れないとのこと。さらに、問題は環境汚染で、村のあちこちの水路には、作業所から排出される墨汁のような色の汚水が流れており、村の中心にある川にはプラスチックの袋や、プラスチック片が浮かんでいます。

 川はいずれ海へとつながり、世界的な問題になっている海洋プラスチックの要因にもなります。名もなき人々が担う「リサイクル」は責任の所在がわかりにくく、改善もしにくい弱点があり、行政もこの現状を知らないわけはないと思うのですが、改善の気配は見えません。

プラごみ海洋汚染、日本の協力で防ぐ

ベトナムではプラごみの埋立地が満杯状態で、海に流出するプラスチックが問題になっています。海に流出させたプラごみ量は、中国、インドネシア、フィリピンに続いて4番目に多く、日本の協力でプラごみ海洋汚染を防ぐべく対応を急いでいます。

1. 2022年1月より、北部バクニン省で国内最大規模の廃棄物発電施設の建設工事が始まり、2024年1月の完成を目指しています。日本のプラント大手「JFEエンジニアリング」が、プラスチックを含む家庭ごみと産業廃棄物を同時に効率良く燃焼させる技術を用いた施設の設計・建設を手がけ、完成後の操業も担います。日本政府は建設費の一部を援助しています。

この施設では、ごみ焼却時の熱を利用して発電も行う。ベトナムでは、ごみを1日500トン焼却することで年間約9万2000メガ・ワット時の発電を想定し、電力公社への売電も計画しています。(読売新聞オンラインより)

2. 2023年8月25日、西村日本国環境大臣とベトナムのダン・クオック・カイン天然資源環境大臣との間で、海洋ごみの管理等に関する協力に係る基本合意書を締結しました。

これまで、ベトナムに対する本分野の協力として、令和元年度より研究者及び政府担当者の人材育成のための研修を行い、令和2年度には海洋ごみモニタリングの分野における協力に関する基本合意書を締結していますが、今般、同合意書の終期に伴い、協力を更に進展させるため、日本国環境省とベトナム天然資源環境省は、海洋ごみの管理等に関する協力に係る基本合意書に合意しました。

基本合意書における協力活動の概要は、

(1)ベトナム周辺で海洋ごみ共同パイロットモニタリング調査・研究の実施

(2)モニタリングや処理を含む、海洋ごみ(廃棄物)管理に関する人材育成研修の実施

(3)海洋ごみ(廃棄物)管理に関する知見共有、マニュアル等の策定

(4)プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に向けた政府間交渉

 委員会(INC)における連携

(5)モニタリングデータの共有

(6)その他両国が合意した事項 

です。(環境省発表より)

 

まとめ

以上のベトナム政府の動きから見るとごみの収集は、現在はプラスチックリサイクル業者が主に回収しているようです。プラスチックを買ってくれる業者もいるとのことで、家の前に出しているのかも知れません。大都市では自治体が回収しているとのことで、ごみのポイ捨ても

少ないようです。ベトナムの大都市や観光地ではプラスチックごみ対策は進んでいるようですが、全土に広がるのはこれからでしょう。

数年後、ベトナムのプラごみの状態はどうなっているのか、道路沿いのプラスチックごみは無くなっているのか、再度ベトナムに行って見たいと思いました。

                                           (by umi-bugyou)