今年7月26日から開催されるパリ五輪は、使い捨てプラスチックを禁止する史上初の大会となる見込みです。昨年5月、フランス・パリのイダルゴ市長が、2024年に開催されるパリ五輪を、史上初の使い捨てプラスチックのない大会にすることを発表しました。

 市内競技会場へはペットボトルの持ち込みは原則禁止となり、マラソン競技の給水所では、再利用可能なカップを使用する計画。パリオリンピック・パラリンピック公式スポンサーのコカ・コーラ社は、再利用可能なガラス瓶や、200を超えるソーダファウンテン(清涼飲料水を供給する機械)を設置して飲料の提供をする予定です。

 イダルゴ市長は、オリンピックの誘致の時から「環境に優しい大会にするか、そもそもパリでは開催しないか」の2択を宣言し、史上最もサステナブルな大会の開催を目指してきました。

 パリオリンピックのサステナブルな取り組みとして、競技施設の95%を既存または仮設の建物でまかない、100%再生可能エネルギー使用、廃棄物ゼロ、ゼロエミッション車の走行などが計画されています。

 また、パリ協定に沿うため「CO2排出量を2012年開催のロンドンオリンピックと比較して半分にする」という目標を掲げています。

目標実現のため、すべての関係者が炭素排出量を削減できるよう、カーボンフットプリントを削減するのを助けるアプリ「Climate Coach」を開発し、オリンピック施設内の持続可能な食料使用率100%、スポーツイベント用にカスタマイズした「カーボンフットプリント計算機」を作成し関係者に提供するなどの取り組みを実施しています。

 交通政策による炭素削減も進められ、観客の100%が公共交通機関、自転車、徒歩で会場に移動することを目指しています。オリンピック会場周辺に大量に専用駐輪場を設置し、55キロメートルの競技場間を結ぶ新たなサイクリングロードを敷設、大会チケット保有者にはパリの交通機関を無料で利用可能にし、地方競技場へのアクセスのため鉄道網の増強が進んでいます。それでも回避できない炭素排出量は、森林や海洋を保護・回復するプロジェクトですべてオフセットする予定です。

 フランスは、世界でもいち早く廃棄物対策法を制定し、その一環として、2020年1月からプラスチック製使い捨て容器・カトラリーを禁止する法律を施行しています。2023年1月からは、飲食店での使い捨て容器による食事や飲料の提供も禁止となりました。

ペットボトル飲料は売られているものの、メーカーは「再生プラスチック利用」の表示を商品名よりも大きく記載したり、小売店にペットボトル回収機を設置したりと、提供側の努力も浸透してきています。

(左)「JE SUIS 100% RECYCLEE(私は100%リサイクルです)」と表示されたボトル

(右)販売されている簡易カトラリーは、木製または洗って再度使えるプラスチックのみ

 そんなパリでは、昨年5月29日から6月2日までの間「プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(プラスチック条約)の策定に向けた第2回政府間交渉委員会(INC)」が開催されました。

 INCに先立って開催された関連会合の「プラスチック汚染に対する国際市長フォーラム」でイダルゴ市長はスピーチで、「プラスチック汚染の被害には国境がありません。気候変動や環境破壊、食糧危機にも同時に取り組まなければ、プラスチック汚染に打ち勝つことはできないのです。」と、プラスチック問題に世界一丸で取り組む必要性を強調しています。

 国連環境計画(UNEP)の分析では、各国が既存の技術を使用し、主要な政策変更を行うことで、2040年までにプラスチック汚染を80%削減できると報告しています。

パリが、使い捨てプラスチックのない史上初の五輪を成功させることができれば、世界のあらゆるイベントの手本となることでしょう。 

(IDEAS FOR GOOD 2023-06-14を参考にしました)

                                           (by umi-bugyou)