近年、食品ロスと並んで問題となっているのが、衣料品ロスです。

イギリスのエレン・マッカーサー財団の調査報告によれば、全世界で、1秒に付き
ゴミ収集車1台分の衣料品が、埋め立てもしくは焼却されているといいます。

 

 

全世界で2015年に供給された衣料用素材は、約5,300万トン(内プラスチック素材が63%)で消費者によって、使用後に廃棄されたものは73%にものぼり、更に回収・処理中の損失などを合わせると、衣料ロスは87%にもなり、リサイクルされたのは13%に過ぎないといわれています。

日本でも2020年に約51万トンもの衣服が再利用・リサイクルされず、こみとして廃棄され、そのほとんどが焼却処分され地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を大量に排出しています。

衣料廃棄物が増えている背景には流行に沿ったデザインの服を素早く大量生産し、短期間で売り切ってしまう販売モデルのファストファションにあると見られています。

 


 

1990年から2019年にかけて衣服の国内市場が縮小する一方で供給量は増加し続けました。これは需要より供給される服の量が上回っていることを示します。衣服1枚当たりの価格は、供給量の増加に伴って低下しています。

つまり、服の必要量が減っているのに、安く大量の服が供給されていることを意味し、大量生産で1着当たりのコストを下げる必要性が高まります。こうして、衣服の需要が少なくなっていく一方で、安い服が大量に作られ続けていく状況が生まれているのです。

ファストファションの半分以上は、買ってから1年もしないうちに「自分に合わない」「気に入らない」「ダメージ、型崩れで着られなくなった」などの理由で半分以上が捨てられています。

 

 

そのため繊維・アパレル産業は石油産業に次ぐ「世界第2位の環境汚染産業」とみなされており、地球温暖化の影響が徐々に表れている現在、事業者や事業者団体も適量生産・適量消費により廃棄を減らし、リユースやリサイクルを重視する循環型モデルへの転換を意識した取組みに着手しています。

ファションと環境の現状の解決に向けては、事業者・事業団体の活動・取組みに加え消費者一人一人の主体的行動も鍵となります。

明日から私たちが取り組める「ファションと環境へのアクション」にどのような行動から始めることができるのだろうか・・・?

環境省と消費者庁から「明日から私たちが取り組めるアクション」として、下記の
18のヒントとそれに関わる事業者や事業団体の事例が掲載されていましたので、その概要を紹介します。

●  買うとき・選ぶときのヒント

ヒント 1 : 本当にその服が必要かどうか、もう一度よく考えてみる
同じような服を持っていないか? 着ていない服はないか? クローゼットを確認する。

ヒント 2 : 長く着ることができるものを買う
3年後にその服を着ている自分をイメージできるか?を考える。
所有する衣服を長い期間利用し着ることで環境負荷削減に繋がる。 

ヒント 3 : 処分するときのことも考えてみる
トレンドに左右されないデザインであり、引き取り手が見つかり易いか?を考える。

ヒント 4 : 買うと決めたら服のストーリーにこだわる
価格やデザインに加え服のストーリーにこだわり、自分の価値観に合うブランドを選ぶ。

ヒント 5 : カスタムメイド(受注生産)での購入を考えてみる
アパレルメーカーの在庫管理の適正化、廃棄量の適正化に繋がる。
<受注生産の企業事例>
 ㈱Enter the E “スローファッション”、

 ㈱島精機製作所 “BLUEKNIT(ブルーニット)”、
 ㈱ワンオー “EQUALAND-TRUST & INTIMATE”、 
  三菱商事ファッション㈱ “NAGI(凪)”

ヒント 6 : レンタルサービスを利用する
長くは着ない、何回も着る機会がないけど、着てみたい!を感じる。
<レンタル、サブスクリプション、シェアリングの事例>
 ㈱DMM.com “いろいろレンタル”、 
 ㈱EDIST “EDIST.CLOSET”、 
 ㈱Brista  “BRISTA”、
 ㈱エアークローゼット “airCloset”、
 ㈱大丸松坂屋百貨店 “AnotherADdress”

ヒント 7 : バザーやフリーマーケットなどで古着を買う
古着の購入は、服の廃棄を減らしライフサイクルを長くすることに貢献する。
上手に活用すれば経済合理的におしゃれに着こなすことも可能になる。

ヒント 8 : メーカー売れ残り在庫販売での購入も考えてみる
売れ残り在庫を回収して原価で販売するサービスもあり、在庫削減にも繋がる。
アウトレット在庫を販売したいブランドとお得に商品を購入したいユーザーを繋ぐ。
<ブランドアウトレット在庫とユーザーを繋ぐオンラインマッチングプラットフォームの事例>
 ㈱ウィファブリック “SUMASELL(スマセル)”

日々の手入れや洗濯時などのヒント
ヒント 9 : 大事に使い長持ちさせる
素材に適した手入れや洗濯を心掛け、丁寧に長く着られるようにする。
繊維や生地がしっかりした服を買うときに選ぶことが大事であることを意識する。

ヒント10 : マイクロプラスチックを流出させない
洗濯時に合成繊維からマイクロプラスチックファイバーの流出を防ぐ専用ネットを利用する。
<マイクロプラスチック流出防止洗濯ネットの事例>
 バタゴニア  “グッピーフレンドウォッシングパック”、
 ㈱アダストリア “ファイバーホールドバッグ”

ヒント11 : 直しやリペアで長く着られるようにする
少し古びていても最新のトレンドを取り入れて直しやリペアすれば長く着られる。
直しリペアで少し手を加えるだけで新たな魅力と共に蘇える。
<WEB修理受付サービスの事例>
 ㈱ユナイテッドアローズ “WEB修理受付サービス”

ヒント12 : 家族や友人同士で着まわす
親子・兄弟・姉妹や友人間で着まわすことを考えてみる。

処分するときのヒント
ヒント13 : 買取店、バザー、フリーマーケットを活用する
まだ着られる服であればリサイクルショップなどの買取店、行政・団体等のバザーやネットオークションなどの利用を考える。
<性別、年齢、体型に関係なく着まわせる衣料品の事例>
 ㈱良品企画 “MUJI Labo”

ヒント14 : お店などでの古着の回収サービスを利用する
服を買うときに回収サービスを提供しているメーカーを選ぶことも一つの選択肢となる。
事業者や事業者団体で店頭や出張引き取りで不用の服を回収し、リサイクル・リユースをしている場合がある。
<店舗での回収の事例>
 ㈱アダストリア “アダストリア”、
 ㈱ユナイテッドアローズ “グリーンレーベルリラクシング”、
 ㈱ユニクロ “ユニクロ”、
 ㈱良品企画 “無印良品”

ヒント15 : 寄付する
寄付を受け付けている団体や施設を探して寄付してみることを考える。
寄付した服が途上国支援は困窮者支援などに活用されている。
<寄付受付団体の事例>
 NPO法人グッドライフ “セカンドライフ”、
 NPO法人日本救援衣料センター “救援衣料”、
 一般社団法人いいことファーム “いいことシップ”、
 特定非営利活動法人ジャパンハート “ジャパンハート”

ヒント16 : リメイクを楽しむ
服として着られなくなったものを小物や違う服などに変わらせて楽しむことができる。

ヒント 17 : どうしても使い道がない場合には資源回収に出す
自治体の資源回収された服は、反毛材料やウエストとして利用されたりする場合がある。
自治体のルールを確認して資源ごみとして処分できる。
<リサイクル等のための回収サービス事例>
 ㈱ユニクロ “RE.UNIQLO”7、
 一般社団法人Green Down Project “羽毛製品のリサイクル”

その他のヒント
ヒント18 : 自宅のクローゼットやワードローブを確認して不用な服は定期的に処分・有効活用する
眠っている不用な服をうまく販売できれば自宅の収納スペースのスリム化に繋がる。

今回はファションと環境へのアクションについて散見し、私たち生活者と事業者や事業団体が一緒に取り組める対策も多くあることを知り、既に実践されているものもあります。

ファッションと環境の未来をよりよいものに変えていきましょう‼                         by 海士人