最近気になるテレビコマーシャルを目にしました。食品用ラップのコマーシャルです。食品用ラップはお皿に残った食べ物にかぶせて冷蔵庫に入れたり、食品をくるんで冷凍する時などに使います。しかし一度使うとほとんどが再使用されることなく使い捨てされるプラスチックフィルムです。使用済みのラップはたいがい燃えるゴミとして焼却処分され、二酸化炭素やラップの素材によっては塩化素ガスなどの有毒ガスも発生しています。
災害時の備蓄品として、またコロナの感染流行でラップの販売量が増えているようです。しかし使い捨てプラスチックを減らそうという社会的な動きも拡がっています。レジ袋の有料化によってマイバッグ持参が定着しました。次は食品用ラップの使用削減ではないかと思い調べてみました。
Ⅰ. 食品用ラップの種類と特徴
食品用ラップは1960年から市場に出回りはじめて60年余が経っています。初期のラップは素材が塩化ビニリデンでしたが、その後塩化ビニルやポリエチレン、ポリメチルペンテンがラップとしての特徴を生かして登場しています。
ラップの種類 |
塩素の有無 |
耐熱温度 |
添加物 |
密着性 |
ガス透過性 |
カット性 |
ポリ塩化ビニリデン |
有 |
140 ℃ |
有 |
高い |
通しにくい |
優れている |
ポリ塩化ビニル |
有 |
90 ℃ |
有 |
高い |
やや劣る |
優れている |
ポリエチレン |
無 |
110 ℃ |
無 |
低い |
劣る |
やや劣る |
ポリメチルペンテン |
無 |
180 ℃ |
有 |
高い |
通しにくい |
優れている |
ポリ塩化ビニリデンのラップは通気性(ガス透過性)が無いので、家庭の冷蔵庫で匂いの有る食品と一緒にしても匂い移りがしません。また切り裂き性が良いので使いやすいという特徴があります。生鮮食品の包装材に使われている業務用ラップの材質は主にポリ塩化ビニルです。使いやすさと低価格が理由です。しかし塩素を含有し低温で燃やすと猛毒のダイオキシンを発生するので、焼却場では800℃以上で焼却されています。また塩素含有ラップには使いやすくするために添加物(脂肪酸誘導体やエポキシ化植物油)が使われていますので、レンジ加熱時に添加物が溶出する懸念も指摘されています。添加物の量は安全性を考慮した業界の規制で低く抑えられていますが。
家庭で使用されるラップの素材や使用上の注意事項は、箱の裏に表示されています。購入される時にはご覧になり注意事項を守って使用されていますか?
Ⅱ.食品用ラップの使用量とシェア
食品用ラップの使用量がどのくらいあるのかネットで調べてみました。公に集計されたものは見つけられませんでしたが、2020年の日刊工業新聞記事によると国内市場は約500億円です。量は8万5千トンと推定できるデータ(町田市消費生活センター)も有りました。有料化前にはレジ袋は年間約20万トン使用されていて、有料化後には半量以下には減少したと推定されています。したがって食品用ラップはレジ袋と同程度使用されていると推定できます。使い捨てプラスチックは年間900万トン程度排出されていますので、そのうち食品用ラップは1%程度です。
食品用ラップの素材別シェアは、カット性が良くガス透過性の低い塩化ビニリデン製が83%と圧倒的で(日刊工業新聞)、残りは業務用が主体のポリエチレンやポリ塩化ビニル製です。性能と価格が理由です。
Ⅲ.食品用ラップの使用を減らしましょう
食品用ラップの使用を減らす方向で、町田市(東京都)消費生活センターが2021年10月に広報していますので紹介します。
運営協議会では、2019年に引き続き今年も運営委員20人が、自分の家庭で使っている食品用ラップの使用量を調べました。
調査年 一人あたりの年間使用量 箱数(22cm×20m巻)
2019年 678g 11.3箱
2021年 349g 5.3箱
ラップの使用量=ごみの量ですので、2019年の一人あたり使用量を町田市民43万人に換算すると、単純計算で年間約300トンにもなります。2019年と2021年の調査結果を比較するとラップの使用量はほぼ半減しています。これは運営委員それぞれが毎日の生活の中で、ラップをできるだけ使わないようにと意識してきたからです。
ラップを使わない方法は?
*冷蔵庫に保存する場合
・長期間保存したり臭いの出る食品は、ふた付き容器や空ビンに移して保存する。
・短期間の場合はお皿などでふたをする。
・残り野菜などは、繰り返し洗って使用できるジッパー付きの袋か、新聞紙にくるむ。
*電子レンジで加熱する場合
・平らな皿をかぶせる。
・繰り返し使用のできるシリコーン製のふたをかぶせる。
*その他
・洗って繰り返し使える蜜ろうラップ※にくるむ。(※綿布に蜜ろうをコーティングしたもの。ただ
し電子レンジには使えません)
・パンやお菓子の入っていた綺麗な袋を再活用。
・プラスチックではないセロファン紙でくるむ。
・ラップはすぐ目につくところにはおかない。
・ラップの使い始めの時、箱に日付を書き込んでおくと何日で使いきったかわかり、節約する楽しみが増えます。 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 家庭における食品用ラップの削減は、ささやかでは ありますが誰にでも取り組める「使い捨てプラスチックの削減」です。今日から始めてみましょう。
Ⅳ.おわりに
私の家では食品用ラップは添加物のないポリエチレン製を使うようにしてきました。しかし最近は食品をふたつき容器に入れたり、シリコーン製のふたをお皿にかぶせて冷蔵庫に入れるようにして、極力食品用ラップを使わないようにしています。ご飯や小分けした食品を冷凍する時も、繰り返し使えるプラスチック容器やジッパーつきのポリ袋に入れています。ささやかですが使い捨てプラスチック削減にむけ、できる事をしていこうと思っています。
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