日本ではごみを捨てる際に、捨てる側が各自治体で異なる分別ルールに従って、分別廃棄が義務付けられています。これを手間がかかると思われる方もおられるでしょうが、リサイクル(廃ゴミを再資源化し利用する)のために必要な作業になっています。
今回は、日本の廃ゴミリサイクル事情やその背景と私達が考えなければならないことについて、紹介します。
▋日本のリサイクル率は世界トップクラスと言われているが・・・!?
日本のリサイクル率については興味深い下図のグラフがあります。
・ OECD加盟国35ヶ国の内日本のリサイクル率は19%で下から5番目に位置する数値
・ 日本は手間をかけ分別しているのに、リサイクル率は低く、焼却がほとんどという事実
・ リサイクル率 (定義)=リサイクルされたモノの量÷元々あった廃棄物などの総量
1)焼却からリサイクルへ
グラフの中で77%と示さる通り、日本の焼却率はかなり高く、世界単位で見ても焼却に頼っている国になります。
この背景としては、日本には土地がない、即ちごみの埋め立てが難しいという点があります。
ごみを埋め立てる場合、焼却することで体積を減らし、少ない面積でたくさんのごみを埋め立てるようにしてきました。
その結果として焼却技術の向上、焼却施設の充実が進み、廃棄物処理=焼却といった流れができることになりました。
紙やびんなどの資源ごみは、分別されてリサイクルされていましたが、1991年埋め立てを減らすために、使えるものは分別してリサイクルしようとすることが明確化されました。
2000年には、廃棄物の適正処理よりも、リサイクルを始めとする3R(後述)を優先させる環境を考えた社会を形成する廃棄物処理方法が示されました。
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サーマルリサイクルはリサイクルと言えるのか・・・?
先ほどの「OECD加盟主要国の廃棄物処理とリサイクル率」の図で示されている日本の77%の焼却のうち、71%を占める「焼却とエネルギー回収」をサーマルリサイクルと言います。
サーマルリサイクルは熱や蒸気などとして回収することで、日本では、発電や施設の暖房、周辺施設への温水供給などに使われています。サーマル“リサイクル”と言われているので、これもリサイクルとして考える識者もおり、これを反映すれば、90%と圧倒的なリサイクル率となり、日本がリサイクル率世界トップクラスと言われる所以です。
欧州などでは、リサイクルとは何度も使える物のことを指し、サーマルリサイクルはあくまで熱を回収しているだけという判断により「リカバリー」と言われ、リサイクルとは差別化されています。
サーマルリサイクルは、焼却時の熱量をエネルギーとして利用するわけなので、ただ焼却するよりは有意義なことですが、それを理由に焼却を増やしてよいのでしょうか?
自治体によっては財政事情などにより、手間やお金がかかるリサイクル施設などを減らして、分別せずに燃やしてしまえる大きな焼却施設を作るというところがあります。燃やせるすべてのものを焼却してしまうということは、まだ使える、リサイクルできる資源まで分別されずに燃やされてしまっているということです。
エネルギー回収をするからという理由が、焼却する免罪符として使われかねません。
廃棄物の処理に関しては3R(リデュース、リユース、リサイクル)があり、次いで熱回収、最後に適正処理と考えていくべきという原則論があります。
燃やせるものはすべて燃やしてしまうという焼却の動きは、この原則論に反することです。
リサイクルできるものまで燃やし、それをエネルギー回収としてしまうのは大きな疑問点でもあります。
もしサーマルリサイクルがリサイクル率としてカウントされた場合には、なんでも焼却でOKといった流れが大きくなってしまう危険性も含んでいるのではないでしょうか?
▋考えなければならないゴミ問題「減らせるか 使い捨てゴミ」
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なぜゴミが減らないか?
日本は大量生産・大量消費・大量廃棄ですので、このままだとゴミは減りません。
また、リサイクルの過程で大量のエネルギーを消費し、再生品をつくるよりも、再使用やリサイクルをすべきごみを減らすことが最善です。 -
3Rじゃ足りない? リサイクルだけじゃダメ
ヨーロッパのゴミ処理は、4Rによってゴミを大幅削減することに成功しています。
4Rとは下図の「(リフューズ)+3R(リデュース・リユース・リサイクル)」のゴミ処理原則です。
日本にはリフューズ「断る・やめる」がなく、また作り直すは「再利用」ではなく同じものを使い続ける「再使用」の努力と「断る・減らす」意識づけをする必要があります。
リサイクルは必要だけど・・・ 言ってみればリサイクルは「繋ぎ」の作業なのですよネ・・・。
因みに、上図は静岡市環境局のキャンペーン「静岡版もったいない運動」のポスターです。
日本で4Rを実施・推進している自治体は次の通りです。
宮崎県、鳥取県、那覇市、萱野湾市、大分市、霧島市、岡山市、堺市、富田林市、寝屋川市、枚方市、交野市、常滑市、静岡市、鹿屋市、太田市、川越市、和光市、相模原市、津幡町、武蔵村山市、石狩市、等々
また自治体のみならず多くの企業が4Rを積極的に展開・実施している事例がみられます。
多くの自治体や企業が4Rの実施・推進でリサイクルのみに頼らない「リフューズ・リデュース・リユース」で使い捨てゴミ削減が実現し、且つ、企業の生産者責任、市民の使用者責任の気運がつくり出されればハッピーです。
by 海士人