昨年、京都市ごみ減量推進会議が主催のセミナー「海ごみ問題から考える私たちの暮らしとプラスチック(当ブログで既報)」では、地球環境問題として注目されているプラスチックごみの海洋汚染と私達の暮らしとのつながりがテーマでした。

 今年も同団体主催で「今こそ脱プラ!」のセミナーが開始され、参加しました。

今回は、深刻な海ごみ問題、脱使い捨てプラに向かう世界の動きと中国の廃プラ禁輸の現況を背景に“私達の消費のあり方を考える!”をテーマにしたシリーズセミナーの“解決策を考えるーその1”の概要を報告します。

                                                                                                                

何が起きているのか ~中国で、日本国内で、世界で~

講師:京都市ごみ減量推進会議 堀 孝弘 氏

 ■近年、海洋ごみによる海の汚染に世界が注目
  ・ 世界の海に、5兆個のプラスチックごみが漂流している

  ・ 2050年には、世界の海の魚よりプラスチックの方が重量で多くなる
  ・ プラスチックごみが海洋生物にダメージを与えつつある
  ・ 160万㎢(日本国土の4倍)の「ごみの島」が太平洋に浮かんでいる

■2017年7月:中国政府は同年末を持って海外からの廃プラ輸入禁止を発表する

■まだまだ多い放置プラごみ
 ・ 保津川水系、荒川河口で最も多いごみは、8年連続でペットボトル
 ・ 海岸への漂着ごみも、韓国、中国からだけでなく国内流出のペットボトルも多い

■日本の人口1人あたりのプラ製容器包装廃棄量
 ・ 日本の人口1人あたりのプラスチック容器包装廃棄量は、米国に次いで多い
 


中国の廃プラ類資源ごみ禁止政策から読み解く

日本の廃プラ類資源ごみの在り方について

講師:龍谷大学政策学部 金 紅実 准教授

■中国輸入統計からみる廃プラ類資源ごみの国境移動の実態
 ・ 1978年以降の経済解放政策(市場経済導入)により、中国が世界の生産工場として世界中

  から廃プラを輸入
 ・ 再資源化できない廃プラが川から海へ流出
   ドイツの研究者から「世界の4割の廃プラは中国の4大江から海へ流出」の報告

■2017年末から生活由来廃プラ類資源ごみ全面禁止措置に至る政策変遷
 ・ 2000年以降の経済発展でプラ包装・容器が蔓延した
 ・ 2001年輸入禁止品目の目録公表、廃プラを輸入制限の対象にした
 ・経済成長と輸入制限での環境保全とのジレンマに陥った
 ・ 2017年に生活由来ごみの全面禁輸、工業由来ごみを制限禁輸した
 ・ 量的発展から質的発展への政策変更で輸入制限品目を細目に分け目録を公表

 ・2018年からは輸入禁止品目が増え続ける傾向

 ・2019年には国内資源で代替可能品目(古紙類を除くペットボトル類等)は全面輸入禁止へ

  向け政策を進める

京都市ごみ減がすすめる

「リーフ茶の普及でペットボトルを減らそうキャンペーン」

講師:京都市ごみ減量推進会議 堀 孝弘 氏

■ペットボトルの用途と消費の推移

 ・近年、20年間でペットボトルの消費は4倍

  消費増の要因は清涼飲料水の飲料用容器の中でペットボトルが独り勝ち

■ペットボトル飲料の中で、近年緑茶飲料とミネラルウォーターの消費量増大
 ・ 緑茶飲料販売では96%がペットボトル販売

 ・ ペットボトル茶ばかりが増え、茶葉の消費・生産が近年12年で3割減少

■リサイクルが盛んになったが、まだまだ多い放置ごみと海外からの廃プラ禁輸

■どのようにして、ごみ排出の少ない生活様式を広めるか

・環境問題に関する世論調査では、ごみ問題に対する意識・関心は低下している

  • リサイクルは大量生産、大量消費型社会がそのままでも推進することができるが
    「減じる」「再使用」の2R推進は、生産者や流通販売者の理解・協力が必要で、消費者の心掛けだけでは進まない

  • 中国の廃プラスチック、廃ペットボトルの輸入禁止に伴い、日本の環境対策の
    問題が浮き彫りになり、「2Rは難しい」では済まなくなった

  • どのようにして2Rを広め、ごみ排出の少ない生活様式が構築できなけば、ごみの後始末に追われる社会であり続けるこの社会の仕組みを変える「ごみ減」の活動は……

  ・2R茶会の開催(ごみ問題に無関心者そうへの働きかけ、意識への反映)

  ・リーフ茶大学講義の実施(講義後のアンケートでリデュース意識の成果持続) 

  ・大量生産、大量消費の前にあるものは消費者ニーズではなく需要創造かも…

 

これからは「必要」を出発点に!!

世界の脱・使い捨てプラスチックの動向と水Do!キャンペーン

講師:NPO法人環境市民理事・研究員 水Do!ネットワーク事務局長 瀬口 亮子 氏

■ペットボトルの使い捨て容器入り飲料の利用から水道水飲用の推進キャンペーン
 ・ペットボトル等の使い捨て飲料容器入りの水やお茶の消費が増えている。
 ・ペットボトル飲料水の製造・輸送・冷蔵・販売・リサイクルの使用エネルギーは
  水道水の数百倍⇒水道水の上手な飲用利用は、環境負荷を減らせる
 ・地域の水資源に関心をもつことは、地域の水を保全する活動の第一歩

■脱・使い捨てプラスチックの動向紹介
 ・当ブログで既報の米国、EU、アジア諸国の規制等事例紹介
  使い捨て品の使用規制(韓国)、レジ袋削減政策(米国、EU諸国、英国、中国他)
  使い捨て容器包装他の削減新ルールの提案(フランス他EU諸国)

■ペットボトル削減と水道水飲料推進の先進事例紹介
 ・一部、当ブログで既報の米国の自治体・大学・国立公園での規制
 ・英国、フランスの水飲みインフラ整備を行政主導
 ・日本でも自治体やNGOの活動の広がり
  ① 長野県飯田市:会議で湯呑でお茶提供、オリジナル・リユースびんPR
  ② 神戸市・熊本市:水道局が魅力的な水飲み場を設置
  ③ 京都市:大学と連携して水道水PR
  ④ 熊本県水俣市:水筒持参者に地元産のお茶で「茶のみ場」サービス提供
  ⑤ 香川県高松市:市内店舗での無料給水マップ開始
 ・奈良県生駒市は日本の水Do!トップランナー
  ① 庁舎や市施設の飲料自販機の廃止 ② 魅力的な水飲み場と給水機の設置
  ③ 会議で使い捨て容器使用抑制しリユースびん入り茶の積極的利用
  ④ 店舗等への給水サービス提供の働きかけと給水マップ作成
  ⑤ 地域イベントへの給水機貸出

■NPO法人環境市民・水Do!の「脱使い捨て社会」構築への主張
 ・プラスチックに限らずライフサイクルでのエネルギー消費を考えて、できるだけ
  「使い捨て」を回避することが大切
 ・意識の高い人や企業だけでなく、誰もが行動変化を起こすための「社会のしくみを

  つくることが大切
 ・水に関しては、環境負荷の低減に加え、水資源の公共性の観点も大切
 ・東京オリンピックを契機に2020年には水飲みインフラ整備が当然の社会に・・・

 

【今回の講話への感想 by海士人】

第二次大戦後、多くの産業分野で使用できる便利・安価なプラスチック製品が普及し、

経済成長を遂げる牽引力となりました。現在このプラスチックの大量生産・大量消費・大量廃棄からの脱却が世界的急務とされています。先月、環境省は「使い捨てプラスチック排出量を2030年までに25%削減」の数値目標を立て、年内に産学官民連携組織を設立すると発表しました。この気運が2Rの大きな推進力となることを期待します。