clear things and even more

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ここはボーダーラインの世界

新コンテンツ clear things and even more へようこそ。

ここは、吉田が伊東ちゃん(ギター)にも内緒で一人こそこそ育ててきた、現在そこそこ更新中のボーダーラインアート(自称)のページです。内容が音楽にあまり直接触れていないとお感じになるかもしれませんが、それは気のせいです




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  almost

  「いろいろ考えすぎる」とよく言われるけど、

  詰まるところ貪欲なのよ


                 中村英子さんの言葉



わたしは狼狽していた。自分の弱すぎる力を憂い、近い近い先行きの不安を心配して、突破口を、というよりむしろ掴むべき「藁」を、汗を垂らして見極めようとしていた。

あんまり急激に困ったので、気がついたら胸の下のあたりから腰までの肉が消えて骨が見えるようになっていた。食べかけの魚のような身体で、わたしは空を仰ぎ助けを求めた。たかだか人ひとりの願いなんて、そう簡単には届くまいと、そうとう大きな声で何度も何度も叫ばなければいけないと思っていたら、案外訴えは軽く天まで届いてすぐに答えがあった。


「くたばるときは どのみちひとりだよ」

空から降ってきた声は、空から降る声らしく、とても客観的で冷静な意見だった。「やっぱり上空からの答えは落ち着いてんなあ!」そう叫んで、乱れた自分の考えが 真ん中にまとまるのを待った。「でも、そんなことわかってるんだ」わたしは天にむかってそう言ってやった。本心からそう思っていた。なんだか余計に途方に暮れてきた。


「わかってるのか?わかってるならここで何をしてるんだ?こんなところにいないで今すぐ行け!行って新しい世界を見ろ。お前にあまってる時間などない――」


わたしの顔のすぐ前に、白く光った人型の熱い物体がいて、わたしの真ん中に通る一番ふとい骨を両手で握り締め、そう叫んでいた。鼻と鼻がぶつかるくらいの近いところで、咽が裂けるような声で。


しばらく、といってもほんの暫く、両手でわたしの骨を包んだまま、肩で幾つか呼吸をして、人型の熱い光は消えていった。それが吐いた息の温度がリアルに鼻の上に残った。わたしは靴を履いて、もと来た道を戻っていった。道すがら、カラカラという音がついてくるので、はじめは何かと思ったが、白い肋骨の間には、新しいうたが挟まっているのがわかった。



  かもめ団
  

    今日も井の頭公園で勇気りんりんだった。


  新しい出会いがあって、だんだん大きくなってきた


          ・・りんりん音が。

clickして、

さらに画像の上に時間差で出る拡張矢印をclickすると・・・
       
       
       思いやり

       




珍しいことに、咽が渇く。声も掠れるほどに、わたしの咽は渇ききっている。昨晩あまりに寒いところにいすぎたせいかと思いながら、流しの横においてあった青いボトルに詰まった水を手に取り、目の高さまで持っていく。澄み切って、静かな水。わたしはピンク色のプラスチックの蓋を捻って開けると、ボトルに口をつけて一気に飲みだす。


冷えすぎも温すぎもしない水はすごい勢いで身体の中に落ちていく。あまり急いで飲んだので、耳の後ろがずきずきと痛んだが、それはそれで気持ちが良かった。


間もなく両耳から飲んだ速さと同じ勢いで水が流れ出始める。水は首筋を伝い、肩を通って脇腹をかすめ落ちていく。流れる水の音と、身体が両側から濡れていく感覚を味わいながら、なおも水を飲み続ける。最初の咽の渇きはもうないが、水が身体を走る感覚に心を奪われて、水を飲むのをやめられないのだ。


その内にボトルの水がすべてなくなる。ほとんど天井を見ながら、最後の一滴まで飲み下す。何もなくなった硬い容器を唇につけたまま、わたしは耳を伝う水の音を聞いて、しばらく上を向いていた。


ふいに玄関のベルが鳴る。非日常的な、甲高い音に驚いて、容器を右手に持ったままドアを見る。再びベルの音。わたしは身体の両側をびっしょり濡らし、大きな水溜りの中に立ち尽くす。両耳からまだぽたぽたと水が垂れる。首だけ玄関に向けたまま、この状況をどう説明するべきかぼんやりと考える。


     pia
   

     井の頭公園で熱くワッショイしていたら報道された!

 

      
      kamome_pia  ワッショイ!

両まぶたが腫れ始めて3日目、程度の差こそあれ、いまだに腫れは満ち引きを繰り返している。深夜0時30分を過ぎた頃、誰かがわたしの部屋のドアを叩く。


「よー」

「こんばんはまたずいぶん突然だね」

「どうしたの?右の目が腫れてるじゃないか。いつものまぶたのラインが消えてるよ」

「そう?そんなにまだ腫れているのか..」


そんなことを言いながら、明るい部屋の中に移動する。指摘されると改めて目のことが気になる。すでに痛くもかゆくもないが、何となく、右目が熱くなってきたような気がする。思わず指で擦る。


「触ったらだめだよ」

「おとといから、それ以上か、治らないの」

「ちょっとかしてごらん」


かす?どういう意味かと思っていると、右目に乾いた空気がわずかに触れる。やさしく撫でられるような感触。その瞬間、目のすぐ上が冷え始める。よくわからないまま両目を閉じていると、急に両目、特に右目が痛み始めた。血が血管を進む音に合わせてずきずきと痛む。「ちょっと痛いんだけど..」そう言ってみたが返事はない。


「さあ、もう大丈夫――」

声を合図に目を開けると、痛みは消え、目の上に消えなかった違和感もきれいになくなっていた。すっきりしたであろうその目を確認するため、鏡を覗き込む。まぶたは元通りに重なり、元の形に戻っている。しかし両目、特に右目は瞳が真っ白になり、周りの白い部分とほとんど同化して、まるで目の中が消えてしまったみたいになっていた。



半年ぶりに君から便りが届く。しばらく立たなかった波が揺らめいて、半日開けられないでいる。それでも、恐ろしさと、いつまでも絶えない期待とを抱いて遂に開封する。


茶色い封筒から、もしかしたらあの甘くてくらくらする匂いが少しでもするかも知れないと隙間から嗅いでみるが、鼻を突いたのは、粉っぽくてただ新しいだけの香り。中に入っていた、たった一枚の薄い紙を用心深く広げる。小さな字のかたまりがすごい勢いで目に押し入ってくる。


「 どうしていますか 

  きみは大丈夫ですか 

  今さらだけど、今だから言います 

  きみの殻がとても恋しい 

  切符を使って買いたいから 

  あとでお金を送ります  」


最後まで読んで、1時間そこに座った後で、泣く泣く自分の殻を脱いで、キレイにたたんで花を添え封筒の裏にあった住所に送った。