4月29日から始まったこの映画、5月1日までの3日間で、チケット売り上げが3億元突破した。
3億元ですよ、たった3日で。
おそろしい出足の速さだ。その上、評判もいい。


宣伝勝ち
一般的に、2作目が1作目を上回るというのは珍しい。だから、一体どんな話しなんだと思って見に行ったら、前作の続きでもなんでもなくて、ただ主役の男女が同じというだけだった。笑。内容は、まったく別の話し。笑。
題名にある『北京』=ペキン と『西雅图』=シアトル も、まったく関係がない。今回の舞台は、マカオとラスベガスである。

だから、例えば『マカオ遇上ラスベガス』とか『不二情书』とか、違う題名にしてもよかったのに、わざわざ大ヒットした1作目の ”続編” といわんばかりに公開したのは、本当に賢いことだった。
そこに惹き付けられて見に行った人が多かったわけだから、宣伝勝ちである。

そして、「あれ?全然違う話しじゃない?」と気づいた時には、物語に取り込まれてしまっている。
おもしろいのである。


あらすじ
簡単に・・・完全ネタバレなので注意。



大牛(ダニエル)(吴秀波、上のポスター中段右)は、14歳で単身アメリカに渡り20年。アメリカの大学を卒業後、ロサンゼルスで不動産仲介の仕事をしている。アメリカに不動産不況がきても(リーマンショックが原因)大丈夫、金持ちの中国人を呼び込み、売りまくっている。
ダニエルは、仕事は順調だが、恋は不調。恋人は、別の男性と結婚してしまった。

焦姣(汤唯、中段の真ん中)は、子供時代から借金に苦しんでいる。今はマカオ(澳门)のカジノで、何と言う職業なんだろうか、賭けにきている人の横でアドバイス?や煽り?などしながら、チップで生活している。

物語は、この2人が、ひょんなことから文通を始めてしまうのである。笑。
きっかけは、一冊の本『查令十字街84号』だ。

ここでちょっと解説。『查令十字街84号』は、『84 Charing Cross Road』の中国版。作者は、Helene Hanff。ロンドンの本屋の店主とニューヨークの女流作家が、20年に渡って文通するという話し。(日本語訳は、『チャリング・クロス街84番地』江藤淳訳。)
1987年には、映画化された。主演は、アンソニー・ホプキンスとアン・バンクロフト。(2人の名前を見ただけで、興味がわきますね。笑)


さて、本筋に戻って・・・
ダニエルも焦姣も、『查令十字街84号』が手元にきてから不運続きだ。2人とも、本を題名の住所、ロンドンのチャリング街へ手紙をつけて送ってしまう。笑。不運よ去れって気持ちですね。笑。
しかし、なぜかまた本が戻ってきた。実は、ダニエルのところに焦姣の、焦姣の所にはダニエルの本が送られてきたのだ。中には手紙が入っている。もちろん、お互いに、ツキのなさを本のせいにする罵詈雑言が書きなぐってあった。

もともと誰にあてて書いたわけではないのだけれど、お互いに自分に送られてきた手紙だと思い、なんなのよ!、なんなんだ! と返事を書く。笑。それが文通の始まり。

ダニエルと焦姣は、それぞれ問題を抱えていた。
焦姣は、子供時代の父親の借金に始まり金運に見放されている。ダニエルは、愛情不信である。

焦姣は、お金がない人にありがちな、ギャンブルで一発当てて借金返済という欲望で、やたら強い北京大学卒の学霸(陆毅、上段真ん中)という客に、100万ドル(香港ドル?)をたくすのだが、学霸は全額擦ってしまう。焦姣には、100万ドルの借金が残ってしまった。
困った焦姣は、彼女に気がある上顧客(常に大金を賭けて遊ぶ金持ち)邓さん(王志文、上段右)と一緒にラスベガスへ出かける。資金援助を当てにして。

一方ダニエルは、二組の中国人から仕事を依頼されていた。
ひとつは、家を売りたい中華系老夫婦、86歳の林平生(秦沛)とその妻・唐秀懿(吴彦姝)(下段左)だ。結婚して70年、仲睦まじい夫婦だ。もうひとつは、中国からやってきた母(王茜)と息子(刘志宏)だ。優秀な息子をアメリカで進学させようと、移民しに来たのだ。
ダニエルは、客の前ではいい顔をしているが、本当は自分の儲けのことしか考えていない。
もともと、14歳でアメリカに来た後、香港の両親は離婚して、それぞれ再婚。自分が捨てられたと思ったダニエルは、ずっと孤独で、仕事とお金にがんばってきたのだ。

2人の文通は、しだいに深い内容になっていく。
老夫婦と一緒にラスベガスに来たダニエルは、何度も焦姣とニアミスするのだが、お互いの顔も知らないので、2人は気づかずすれ違っていく。

手紙のやり取りをする中で、相手をなくてはならない存在だと思い始めた頃、ロンドンに何度手紙出しても、返事が来なくなってしまった。その時になって、相手を好きになっていることに気づくのだが、返事がないのだからどうしようもない。もんもんとする2人。

2人はロンドンのチャリング街を尋ねていく。すると、そこには本屋があった。
そこの店主が最近亡くなったんだという。店主は、本を読んで手紙を送ってきた人たちを結びつけていたのだ。勝手に手紙を、転送していたのだ。笑。
だから、焦姣の手紙がダニエルところに、ダニエルの手紙は焦姣に送られていたのだけれど、店主がいなくなったので、手紙は店にたまったままになっていたのだ。

ここでも、焦姣とダニエルは何度もニアミス。なかなか出会わないのだけれど、最後に2人は・・・・・・もちろんハッピーエンドです。笑。


奇妙な物語
この映画のおもしろいところは、ダニエルと焦姣は、相手の名前も住所も知らないまま文通するところだ。なぜ手紙が届いているのかもわからない。
しかし、罵り合いの時が過ぎると、自然とお互いにあだ名をつけて、相手の姿を想像するようになる。そして、心の中で作った相手の虚像に話しかけるようになるのだ。

焦姣は、お金のために邓先生に身をまかせる借金人生の葛藤を。ダニエルは、儲け至上主義で夫婦や母子を裏切っていることなど、身近な人には明かせない心深くの声。それに対して、お互いに真摯に答えていく。直接ではなくても、相手の言葉からいろんなことを汲み取っていく。そして、2人の傷つきすさんだ心が開かれ、癒されていくのだ。

実際には、相手に癒されるというより、自分で作り上げた架空の人物を通して自分を掘り下げていくという方が正解なんじゃないかと思った。だって、心の中で勝手に話しかけて、自分で答えていくようになっていくんだもの。笑。
しかし、そこから湧き出てくる、良心や誇り、人を信じること、前進していく力。長くすさんだ心の中に、深く埋没していた何か美しいものが、掘り出されていくのだ。

自分の ”美しさ” に気づかせてくれた人。そんな人を好きにならずにはいられない。文通だけなのに、お互い好きになることにも納得するのである。


これは、奇妙な物語ではある。知らない所で手紙が転送されていて、文通が始まるなんて。
ちょっと昔の韓流映画に似てる気はしたけど、それは置いておいて、笑。
あまりにも現実的じゃないから面白くなかったという友人もいる。確かに、こんなことあるのか? と思う。

でも、やっぱり、この映画には人間に対する信頼感がある。誰でも持ってる心の美しい面を確認させてくれる。だから、見終わった後は気持ちがいい。いい映画だったよ、と言ってしまう。


ちなみに、今年は、劇中の小説『查令十字街84号』の作者の生誕100年だそう。だから、記念にこの映画を撮ったのだそうです。小説も、面白そう。読みたいと思っていたら、さっそく再販されてる。笑。
また、実際にロンドンに行くと、現在もその住所に本屋があるそうで、本当に手紙を入れ替えて転送してるらしい。エンドクレジットにはその様子が映し出される。本当なのか?と驚いたけれど、それより、中国人観光客が殺到するんじゃないかと想像するとおそろしい・・・。


観客からの評価は、7.0点。以外に高くないけど、健闘中。


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