クライム映画というのは、犯罪を扱っているわけだけれど、犯罪というのはもちろん犯してはいけないもので、しかし犯人には情状酌量の余地があるというストーリーになっているのは、まずてっぱんである。(『羊たちの沈黙』や『コレクター』のように、”変態” な犯罪者が主人公で、世の中にはこんな嗜好の人たちがいるんだということを知って心が寒くなるというパターンなども存在するが。)


犯罪を犯しても同情されるよくある理由のひとつは、愛のため、というものだ。
愛しているがために罪を犯してしまったり、替わりに罪をかぶってしまったり。
”愛”の前では、社会的に作られたルールなど二の次になってしまうということを、みんな本能的に分かっているのだ。そして逆に、そんなにも愛が深いのだと、感動したりする。

そして、もうひとつよくあるのが、敵討ちのため、というものだ。
理不尽に身内をやられた恨み、憎しみ、悲しみ。それが動機。だったらしょうがないと、多くの人は思うのだ。
この映画も、そんな話し・・・。
ただ、結末はちょっとひねってある。

のだけれど、最後の謎解きというのか、1番いいところで電話がかかってきた。笑。宅急便から。
中国では快递(宅急便)が届くとき、電話がかかってくる。日本のような不在連絡票というものはなくて、「今家にいるか?」と電話があるのである。
なぜ今なんだ~、と思いながら、もちろん出ました。笑。
日本ではありえないが、中国では上映中に電話に出て大声でしゃべる人が、普通に多数いる。(←南通だけかしら?)マナーは悪いんだけど、日本のように誰もにらんだりしない。笑。
いや~、そのせいで、数分間画面に集中できなかったー。笑。

結末は、一緒に観ていた主人に、終わってからちゃんと確認しました。なので、このあらすじも大丈夫と思うけど。笑。

そんなアクシデントありましたが、おもしろい映画でした。


あらすじ

東北の村で、殺人事件が起こった。
分厚い氷に覆われた湖の、その氷の下に白骨死体が発見されたのだ。

この事件の担当は、妻子と離れ広東省からやってきている孤独な刑事・周鹏(梁家辉 )と助手(女性)の吴雪(邓家佳)だ。調査を始めると、そこに別の地区から汪豪(佟大为)という若い刑事がやってきた。周鹏の調査している犯人と、自分が追っている案件の犯人は同一人物ではないかと思うから、一緒に追跡しようというのだ。

熱血の若い汪豪と孤独な中年の周鹏、コンビの出来上がりだ。笑。

殺されたのは、2人。氷の下から発見された人物ともう1人。その他に、行方不明が1人いる。
協力的してくれるのは、村長をはじめ、村の孤児の李永胜(魏晨)と兄貴分の翁杰(曹卫宇 )ら村の人々。

調査していくうちに分かってきたのが、10年前にこの村で稼働していた化学工場のことだった。
その工場は、コスト削減のために処理しない排水をたれ流し、村では生まれた多くの子供が障害児になってしまったのだ。
その後工場は閉鎖されたが、それを経営していた人物が4人いて、殺された2人と行方不明の1人は、そのうちの3人だったのだ。

ということは、動機はその時の怨恨だろうと推測はできるが、恨みを持っている人間は多くて、犯人を絞りきれない。また、4人の経営者のうち残りの1人の命も危ないが、どこにいるのか分からない。

とりあえず行方不明者を捜すうち、2人の刑事も助手も襲われたり、逆に刑事側が追いつめられていく。そして終には、遊びにきていた周鹏の娘(周冬雨)が誘拐されてしまう。娘を助けるために追跡をあきらめるのか、ギリギリの選択を迫られる中、犯人との直接対決が待っていた・・・。


がんばってる佟大为
ここからは、ほぼネタバレです。ご注意ください。

佟大为 が、すごいアクションしてました・・・。いや、びっくり。
佟大为 といえば、「理想の父親」一位に選ばれたり、ほのぼのな路線でやっていると認識していた。刑事だってアクションしないパターンもあるのに、今回は跳んだり蹴ったりすごいです。
ほのぼのな印象をぬぐい去る、熱血刑事だった。

それによって、映画のメリハリもついたと思うのだが、この映画で1番話題だったのは、マイナス30度の中での撮影ということだった。その寒さの中、ラストは湖に落ちる~~~!! 本当に寒かったと、役者の方々が言っていた。
特に、曹卫宇は合計13時間も水に浸かっての撮影で、氷の下では目を閉じてはいけなかったので、目にできもの(?)ができて半月も療養したそうだ。


・・・そう、経営に携わっていた最後の1人、どこにいるのか分からなかった人物は、曹卫宇が演じる翁杰なのです。最後は、氷の湖で死ぬ。

彼は、実は、孤児の李永胜の家族を殺した人物だった。
李永胜の父親に、汚水処理をしていないことに気づかれたので、家に放火したのだ。その時、1人だけ助かったのが子供の李永胜だった。

刑事たちが、翁杰が最後の1人と分からなかったのは、彼が顔を整形していたからだ。
翁杰は良心の呵責?から、孤児になった李永胜に、お金の援助をして学校を卒業させた。そして名前も変えて村に戻ってきて、なにくれとなく李永胜を見守っていたのだ。

それを知った李永胜は、激しく葛藤する。親を殺した仇でありながら恩人でもある。彼を許すことができるのか・・・。


人間の行動というのは、自分でもコントロールできない理不尽さがある。
孤児になった李永胜を足長おじさんとなって援助するくらいなら、そもそも放火しようなんて思わなければよかったのに。でも、その時には、自分の利益を守るために必死だっただろう。そして、後でおそろしくなって顔も名前も変えて逃亡。そこで終わっておけばよかったのに、さらに、でも気になって村に戻って来てしまう。

この映画には、こういう人間の心理が、ラストの謎解きの鍵として巧みに使われている。(←ネタバレ・・・??)
クライムサスペンスなので、深く掘り下げるというわけではない。
けれど、単純な敵討ち話しと思っていると、最後にこのひねりが現れ、ストーリーに意外さと奥行きをもたらして印象を深くするのだ。

そして、この映画のすばらしいところは、そのテーマと雪と氷の東北の景色が、ぴったりとはまっていることだ。寒さの中撮影した苦労は、報われてると思う。

なにげにおすすめの映画。日本でもウケそう。



*観客からの評価点、6。2点。

*写真は、百度からお借りしています。
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