春節の映画は、一般には旧暦の1月1日(今年は、2月8日)から公開になるが、この映画は他に先駆けて公開が始まっている。

春節映画の特徴は、家族で楽しめること。
今中国では、映画は最も人気のある娯楽の1つだ。だから、春節の休みに家族揃って「映画を見て、帰りにおいしいものでも食べよう」というのはよくある過ごし方だし、春節後も、「どの映画を見た、おもしろかった・・・」などと話すのも楽しいことである。

この『过年好(過年好)』は、大晦日に、田舎の父親の元に帰ってくる娘や息子の物語だ。
主演は、東北出身の有名コメディアン赵本山氏。だから、基本、コメディ。おもしろくて、たくさん笑った。ちょっと日本人の私には分からない笑いもあったけれど、それを引いても、かなりおもしろかった。

でも、この映画のいいところは、バカみたいにウケたら終わりじゃない所だ。
内容はけっこう深刻なのだ。年に一度の家族団らんのはずが、親、子供、孫・・・、実はみんな問題を抱え、家庭はもう崩壊していた・・・というお話し。
映画だから大げさに描いているのだろうけれど、現在の中国の家庭が抱える問題が見えてくる。
でも、そこを笑いに包んで、最後はさわやかに終わるのも、この映画のいい所だ。
計算されているんだろうけれど、親子3代で楽しめる映画になっている。


あらすじ
うーん、あらすじなんてなかった・・・ような・・・。
だから、簡単に・・・、

北京で働いている李羊朵(闫妮)のもとに、故郷の警官から電話がかかってくる。父親が駅で娘(羊朵)の帰りを待っていて帰らない、だから、早く田舎に来て父親を連れ帰ってくれ。
父親の老李(赵本山)は、アルツハイマーのまだらボケ状態なのであった。ある時は正常なのだが、ある時はボケている。

正月を迎えるにあたって娘が帰って来てくれてうれしい老李だが、実際には、そんな団らんはない・・・。
もともと、娘の羊朵は、北京で新年パーティーに出るつもりだったし、
孫娘の朱莉はアメリカ留学から帰って来たが、BIGBANGの北京コンサートに行くつもりで、家族の団らんなんて望んでいない。むりやり老李の家に連れてこられたが、不機嫌で会話もせず、BIGBANGのコンサート中継(違法!笑。観客が勝手に盗撮して、ライブでネット配信してくれる。わたしもBIGBANGじゃないけれど、なんども見させていただきました。笑。もちろん、無料!)をネットで見ようとスマホを離さない。

このあたりで、もう家族団らんとは形だけなんだなと分かるのだが・・・、
それでも、老李はまだ何も深く考えず、ごちそうを作り始める。
すると、さらにみんなが隠していたものが出てきてしまう・・・。
羊朵は、実はとっくに離婚していたのだ。しかし、老李には幸せな結婚生活が続いていると嘘をついていた、それがばれてしまう。そして、親子喧嘩だ。怒る老李に反論する羊朵。言いたい放題になってしまうのは、親子ならではである。

さらに、朱莉は、アメリカ系華僑のAaron(炎亚纶 、台湾の人気グループ飞轮海(飛輪海)のメンバー、ソロでも歌うまくてけっこう好き。笑)を食事に呼ぶが、そこで妊娠していることがばれる。父親はAaronではないというので、訳が分からない。もちろん、今度は母娘の親子喧嘩である。羊朵が老李に言い返したように、朱莉も羊朵に激しく反論。
喧嘩は収まらず、みんなは部屋を出て行き、老李だけが食卓に残されてしまう。

楽しいはずの年越しの食事が、すっかり悲惨なものになってしまった。
老李は、またボケの時間がきたのか、みんながいなくなった席に、紅包(お年玉)を配り始める。←泣。
そして、1人で雪の中(舞台は遼寧省だと思う。車のナンバーから)に出て行ってしまった。
冷静になった羊朵たちが、戻って来ると老李はいない。みんなで、慌てて老李を捜し始める。そして、きっとまた駅に行ったのではないかと駅に向うのだ・・・。


家族の形
伝統的な中国の正月では、一家全員が揃うということがとても重要だ。今でも、そういう習慣で、絶対に田舎に帰るという人も多い。

しかし、この映画を見ていると、だんだんそれも崩れて来ているんだなと分かる。田舎に帰らない子供や孫も増えてきているんだろう。旧正月に、日本に爆買いに来ている人たちだってたくさんいるわけで、彼らの両親たちは、田舎で自分たちだけの正月を迎えていることだろう。

この映画は、そういう田舎にいる両親を思いださせてくれる。
都会の生活が楽しかったり、仕事が忙しかったり、みんな自分のことで手一杯だ。それは決して、責められることではない。みんな自分の人生を、懸命に生きているのだ。
でも、ふと立ち止まって思いだして。田舎にいる父さんや母さんのことを・・。、この映画を見終わった時、そう言われている気がしてならなかった。

きっと、映画の後に田舎に電話する人がいると思う。ほんとに。
それを思った時、どうしてこの映画が、他の映画より早く春節前から公開されているのが理解できた気がした。きっと、この映画のメッセージなのだ。もし今年田舎に帰らない人がいるなら、早めに両親に連絡してあげてという。心が温かくなるね。

そして、映画のラストは、おまけ付き。
ダンスには、たくさんの赵本山ファミリーのコメディアンの方々が登場。
そして、エンドクレジットでは、いろんなスターたち、例えば、黄勃や黄晓明、杨幂などなど・・・数十人が、数秒ずつだけれど、新年の挨拶をしてくれる。
お楽しみです。←言っちゃってるし・・・。すみません・・・・。


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