邦題;『ロクさん』




現在、中国では、多くの観客が感動中の映画。

この映画には、派手なアクションシーン、例えば、大量の火薬でビルや街が吹っ飛んだり、カーチェイスやゴージャスなCGなどはない。

主人公は、見た目冴えないおっさん。笑。しぶい。
時代の流れに取り残されてしまい、息子にも嫌われ、それでも、自分の仁義を貫く。
そんな姿に、みんなぐっときている。


すごいのは、主演の冯小刚氏だ。
冯小刚氏は、有名な映画監督。
2004年の『天下无贼』や、2009年の『非诚勿扰』(現在放送中のテレビ番組とは違う。)などは、大ヒットした。監督としていくつもの賞を受賞している。
それが、今回は役者ですよ。
何も知らずに見たら、この人は元から役者なんだなと思ってしまうんじゃないだろうか。その、存在感。どんな風にオファーが来たのか知らないが、(←調べろって!笑。)このキャスティングが映画を成功させている要素のひとつであることは、間違いない。

また、この映画は、「北京語」満載。笑。
『北京語」というのは、北京あたりの方言のことである。
よく中国語の標準語のことを「北京語」という人がいるが、それは間違っている。中国の公営放送のアナウンサーがしゃべったり、学校で習う中国語は「普通語」と呼ばれている。

この映画、北京に住んだことのない外国人の私は、見始めてすぐに「うっ、北京語じゃん!」となってしまった。北方の中国語は「er音」というノドにこもったような巻き舌の音が特徴だが、それに加えて所々単語が違う。筋が分からなくなってしまうようなことはないが、始まった時はびびったわ。
そんなところも、中国人にとってはおもしろい見どころだったようだ。新聞や雑誌で、北京語特集が
組まれてました。


あらすじ
六爷(冯小刚)は、かつて刑務所に入っていたことがある。出所してからは、北京の胡同(北京特有の古い街)で、小さな商店を開いて暮らしている。

六爷は、街でトラブルがあると、ドスの利いた声で警察とも交渉をして、問題を解決してしまうような任侠気質だ。しかし、時代の流れについていけてない。息子・晓波(李易峰)からは、頑固で古くさい考えのおやじと嫌われている。それに、晓波は、父親が入所して、母親と自分が苦労したことを恨んでいるのだ。

晓波は、家を出て行ってしまった。
一ヶ月が経ち、心配になって居所を調べると、トラブルに巻き込まれて、小飞(吴亦凡・元EXO-Mのリーダー)という人物に拘束されていることが分かった。

小飞は、四川省出身で、北京に来て遊んでいる金持ちの2代目だ。
髪は銀髪に染め、服はブランドものでビシビシに決め、フェラーリに乗っている。同じくフェラーリに乗る仲間を引き連れて、新興勢力のヤンキーという風情だ。親が金持ちで有力者とコネがあるのをいいことに、やりたい放題にしている。

十万元と引き換えに息子の小飞を返してくれると話しをつけ、六爷は、恋人の话匣子(许晴)に金を借りたりして、十万元を工面する。しかし、心労からか、六爷は倒れてしまう。心臓?血管?の病気だった。明日にでも手術をしないと死ぬと言われるが、六爷はそれを無視、息子のために、小飞の待つ自動車修理工場へ向うのだ。

昔からの仲間・闷三儿 (张涵予)と工場へ行くと、そこでまた小飞や彼の仲間たちとトラブルになり、(正義感強くて、血の気が多いから、笑)今度は六爷から、「北京には北京のやり方があるんだよ」と、頤和園(だったと思う・・・)の裏に朝8時、そこで決着をつけようと約束をして分かれる。

六爷は再び倒れて入院。帰ってくると、店が荒らされ、可愛がっていた九官鳥が死んでいた。そして、息子の晓波とは、徐々に会話を初めて分かり合えてきたところだったが、悪漢に襲われて、晓波は頭蓋骨骨折、意識が戻らなくなってしまう。

怒った六爷は、これは小飞に違いないと予想し事情を聞く。すると、晓波に渡した紙袋の中に大切な書類が紛れ込んでおり、自分の父や叔父たちが、それを捜しているという。渡さなければ何度でもひどい目に遭うというので、六爷は必死に捜すと、確かに書類があった。
それは、小飞一家がスイスの銀行に隠した財産に関する書類だった。
それを返すということでその件は一段落し、いよいよ決闘の日がやってきた。

六爷は、覚悟を決めて、一人でそこに向うのだ。
そこには、小飞と彼の叔父や仲間が大勢で六爷を待っていた。一方、闷三儿は、六爷のピンチだからと昔の仲間をかき集めて応援に駆けつけてきた。両方の勢力が見合う中、六爷は時代遅れの仁義を貫けるのだろうか・・・・・・。


表テーマと裏テーマ
この映画には、2つのテーマがある。

ひとつは、親子の愛情、父親の無償の愛だ。
時代に着いていけない不器用な父親と、そんな父親のことを理解できなくてやさぐれていた息子が、仲直りするという物語。

それだけでも立派に映画として成り立つのだけれど、この映画が今ウケているのは、もうひとつのテーマがあるからだと思う。
それは、一種の勧善懲悪ストーリーだ。

六爷親子は老百姓(=庶民、民衆)。
対して、小飞とその家族や仲間は、富有層。金の力でやりたい放題、老百姓のことを虫けらのように思っている。

富有層の人が、全てそうではないと思う。苦労して今の財産や地位を得て、人を尊重して謙虚に生きている人もいるだろう。
でも、中にはバブルにうまく乗って大金を手にし、そういう人たちはだいたい”癒着”しているので、犯罪を犯しても罪に問われることもなく、やりたい放題しているという。
民衆は、後者のような富裕層に対しては、決していい感情を抱いていない。

それを、この映画は、スッキリさせてくれる。

ラストのネタバレになっちゃいますが、・・・
六爷は、小飞一家のスイスの口座の書類を、返すと言いながら当局へ送ってしまうのだ。それで、彼らは逮捕される。(そのお金の出所かなんかに問題があったんでしょう)。そして、自分の息子を拘束してしいた小飞も、二年前に交通事故で人を殺していたという悪事も暴かれるのだ

親子愛が「表テーマ」なら、勧善懲悪が「裏テーマ」。
この2つがうまく絡み合って、感動も二倍。今1番の話題作となっている。


◆観客からの評価点 8.0点。




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