(邦題;『山河ノスタルジア』あらすじ、ネタバレあり)

『山河故人』は、公開から3日で1700万人という大入り満員だった。
その後、時間が経つとともに、「すごいよかった~」という感想の一方で、「難しい」「分かりにくい」という声も多く聞くようになった。

それで観てみると、・・・
いやいや、全然難しくないし、分かりにくくもなかった。笑。
むしろ、ほんとうにいい映画、今年の見るべき1本、です。
さすが、贾樟柯(ジャ・ジャンクー)監督ですわ。

答えがない
たぶん、たぶん、だけれど、「難しい」「分かりにくい」と言った人たちは、答えが出ないといやなのではないだろうか。

勧善懲悪がはっきりしていて、悪をやっつけるヒーロー。こっぴどくやられる悪役。また、虐げられてもがんばって、最後は逆転のハッピーエンド。因果関係がはっきりしていて、見終わってすっきりする映画。それが映画だと思っている人もいるかもしれない。で、そんなものを期待していると、裏切られる。『山河故人』に、答えはない。笑。

誰の人生も、正しい答えなんかない。
今目の前にあることを、精一杯考えて行動していく。成功することもあるし、失敗することもある。また、成功だと思ったことが後で失敗になったり、失敗したからこそ成功を掴むことができたり。
そして、そこには、なにかしら人生の真実がある。

ラスト、私は涙がこぼれて仕方ありませんでした・・・。



あらすじ
3つの時代の話しが、順に語られる・・・。

まず、1999年、
山西省の汾阳に住む沈涛(赵涛、ちなみに贾樟柯監督の奥さん ^^)は、2人の男性から求愛されていた。一人は、鉱山主の张晋生(张译)。もう一人は、その鉱山で働く鉱夫の梁子(梁景东)。3人は、中学の同級生だ。

张晋生は、当時、個人で車を持つ人が珍しかった時代にフォルクスワーゲンの真っ赤なサンタナ(車種名、少し前まで上海のタクシーのほとんどがこれだった。)を買うくらい裕福で、自信満々。目障りな梁子を、炭坑から首にしてしまう。しかし、梁子は懲りずに沈涛のところへ会いに行く。
なんで排除できないんだと頭にくる张晋生。男性2人の間はどんどん険悪になっていき、大ケンカにまでなってしまう。
沈涛は悩んだ末、张晋生と結婚することに決めた。梁子は失恋、街を出て行ってしまう。
一方、沈涛と张晋生は子宝にも恵まれ、幸せな時間を過ごす・・・。


2014年、
梁子は汾阳に帰ってきた。
彼は邯鄲の炭坑で鉱夫として働いていたのだが肺を悪くしてしまい、治療のために、妻と子供の3人で戻ってきたのだ。しかし、治療費が工面できない。
梁子の妻は沈涛に会いに行き、夫を助けてほしいと必死に頼む。というのは、鉱夫として貧しい生活をしていた梁子とは違い、沈涛は张晋生と離婚した後、ガソリンスタンドの女社長として裕福な日々を送っていたのだ。
事情を聞いた沈涛は、すぐに梁子の見舞いに行き、涙の再会。大金(みたところ3~4万元)を彼に渡すのだった。

そして、沈涛にも不幸が訪れる。最愛の父親が亡くなってしまうのだ。
沈涛は、葬式に出席させるために、上海から息子の张到乐(愛称はDollar)(董子健)を呼びよせた。
息子は離婚した张晋生が引き取っていた。张晋生は、不動産取引でさらに億万長者になっており、息子に最高の教育を受けさせるというので、息子の将来を考えて张晋生に渡したのだ。
息子は、7歳。上海でインターナショナルスクールに通い、英語まじりの中国語を話すようになっていた。最初はぎこちない2人だったが、しだいに打ち解けたころ、再び別れがくる。息子を上海へと帰さなければならないのだ・・・。


さらに時間は流れて、2025年。
(東京オリンピックも終わっております。笑。)
舞台は、オーストラリアへ。話しの中心は、张到乐(沈涛と张晋生の子供)へと移る。

上海のインターナショナルスクールからオーストラリアへ留学した张到乐は、高校生。
父親の张晋生は、汚職か賄賂で捕まりそうになりオーストラリアへ逃げて来た。(たぶん、中国へ帰れない)。財産はあるので、2人で海辺の素敵な家に住んでいる。

到乐はオーストラリが長く英語の生活、中国語を話せなくなっている。だから、中国語しかしゃべれない父親とは、会話ができない。笑。父親の晋生は、言葉が通じなくてイライラするので怒鳴り散らすだけだ。
到乐は、母親(沈涛)のことも、記憶が薄れてしまっている。父親とも母親ともいい関係がなく、それがトラウマで、いつも「僕は試験管ベイビー、親がいない」と言っていうのだ。


到乐は、いい大学を卒業していい仕事に就いて欲しいと思っている父親が、うっとうしくてしょうがない。自分のやりたいことをしたいと思っている。
ある日、中国語学校の先生(一応、中国語を習っている←中国人なのに。笑)に通訳をしてもらい、そのことを伝えると、当然、父親は激怒。到乐は、家を飛び出してしまう。

そして、到乐は、徐々に母親のことを思い出す。微かに残る、7歳の時の記憶・・・。
到乐は、母親を訪ねて山西省の汾阳に行こうと思い始めるのだが・・・・・・。


中国の現代史
中国の歴史を知らないと面白くないという評論もあったので、ちょっと構えて観に行ったが、”歴史物”ではなく、”現代”の話だった。笑。

この映画は、現代の中国に詳しいとよりおもしろく、知識がなかったらないなりに、現代中国の一面を新しく知ることができる。
現代の中国の問題が、いくつか埋め込まれている。その背景が分からないと、深く理解できないかもしれないが、それはそれで、親子の話しとしても十分おもしろいと思う。


◆観客からの評価点、7.6点。



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