私の母が19歳のとき

祖父は20歳の住み込みのお手伝いと

駆け落ちした

祖父の年齢

推定45歳

 

 

 

そして・・・

祖父は95歳でなくなった

母が69歳のときだった

 

母はその50年間ずっと

決めていたことがあったように思う

 

 

 

祖父が亡くなって

かつての自分の家のお手伝いの女

のちに自分の父親のパートナーとなった

不倫女から

電話で自分の父親の死去を

伝えられたとき

 

 

 

母は決めていたことを実行に移した

それは・・・

 

 

 

女に奪われた自分の父親を

自分の母親の配偶者を

そして自分の弟妹たちの父親を

連れ戻すことだった

 

 

 

母は命をかけて

祖父の遺骨を取り返した

 

その辺の詳しいやりとりは

母から何も聞いていない

しかし母は私に言った

 

「おじいちゃんを

おばあちゃんが入っている

お墓に入れた」と

 

「おじいちゃんを連れ戻した」と・・・

 

 

 

 

その時の顔は

今でも鮮明に覚えている

 

執念に取り憑かれた顔

そして「やり切った」顔

疲れ切って安堵した顔

 

 

 

もしかして生前の母の顔で

一番記憶に残っている顔かもしれない

 

 

母は72年の人生で

50年間を自分の父親に対して

連れ戻したいという思いを持ったまま

生きていたのだと

今書きながら改めて気がつく

 

 

不倫は罪深い行為

当事者でなければ

到底わからない

人を無惨に残酷に傷つける

 

 

 

 

母は自分の人生のミッションをコンプリートし

祖父を祖母が眠るお墓に入れた翌年に

がんを発症した

 

 

そしてわずかその1年半後に

その最愛の自分の父親のもとに

旅立った・・・

 

 

私には

母の死が

あの祖父の死と

なんの関係もなかったと

どうしても思えないのである

 

 

 

 

 

 

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