年に一度、前職の上司・先輩・同僚と集まり、近況報告をする会がある。
退職してから10年経ったけど、今も変わらず気軽に話せる心根の良い人たち。
他の人に話したらちょっと変な顔されるかも…という話題でも、正直に話しが出来て、正直なコメントをもらえるのが、私にとって居心地が良い理由かもしれない。

先週も
お決まりの4人で集まり、美味しいご飯を食べながらそれぞれの近況報告をした。
仕事のこと、家のこと、これからのこと。
一通り話し終え、おしゃれなバーに移動したとき、元上司がタバコをふかしながら感慨深げに言った。

「7年も追いかけた女性がいたんだけど、結局振り向いてもらえないことが分かってやっと卒業したよ」
以前から話を聞いていたので、やっとですか!という言葉が3人から飛び出した。
その女性は夜のお店の方で既婚、旦那さんが生きているうちは付き合えないと言われたそうだ。
驚いたことに元上司は女性のために毎月20万ほどを7年間費やしたという。
ちなみに元上司は既婚、レス歴25年。
他にも女性が複数いて、体の関係を持っている。
奥さんは、自分からレス宣言をしたからか、数日帰らなくても何も言わず、夫婦仲も家族関係も良好だという。
ただ、奥さんにはこの25年一切触れることを許されず、もはや女として見ることはないと。
コニャックが入ったグラスを揺らしながら、元上司が言う。
「体が離れるとね、心も離れるんだよ」

なんてタイムリーなお話。
このまま、心も離れていくのかな。
そんなことを思いながら、名前もわからないお洒落なカクテルを一口飲んだ。

久しぶりの再会で話は止まらず、時間を見ていなかったことに気付き慌ててカバンからスマホを取り出すと、図ったように夫から電話が来た。

そそくさと店の外に行き電話に出ると、
心配そうな声の夫が
「大丈夫?いっぱい飲んだ?スマホ、鍵、財布、カバン、忘れないでくださいね〜」
と、母親のような注意をする。
「わかったよ〜これから帰るね〜」
そう言って電話を切り、席に戻った。

どうやら元上司は他に行くところがあるようで、そろそろ行こうか、とお開きになった。

駅の改札口で、
「また来年ね!良いお年を〜!」
と言って、それぞれ日常に帰っていった。

ほろ酔い気分で帰る途中、全身のタバコ臭さを感じた。
お店ではそれほど感じなかったのに、灰皿の水を被ったような酷い匂いが自分の髪、鞄やコートから臭ってきた。
元喫煙者とはいえ、しばらく紙タバコから離れるとこれ程臭うものなのか。
帰宅後、夫に近付かないように伝え、直ぐに全てを脱ぎ捨てお風呂に入った。

湯船に浸かり、いちにちをふりかえる。
楽しかった。
スマホを一度も見ることなく話をした。
久々だ。

そして、元上司の言葉が頭の中でグルグルと回っていた。

体が離れるとね、心も離れるんだよ

しかし、私は今耐えなければならない。
夫がどう行動に出るか。
それによって私達の将来も決まるかもしれない。
耐えて、待つ。

…いつまで?無気力