浜辺には木と石が積み上げられていた。光一郎が運んできてくれたものだった。2人は木と木をお互いが支え合うよう組み合わせ屋根のようにすると、中に人が1人やっと座り寝られる位の小さなスペースが出来た。木と木が噛んだ部分を木を横に渡し麻ひものロープで編み、地面は大きな丸い石で木が倒れないようにぐるりと囲んだ。2人は黙って黙々と家をつくり終わるともう太陽が天高く昇っていた。

 「お兄様、お昼にしませんか?」

幸一郎が横目で光一郎を見ると、光一郎はすたすたと洞窟に入った。しばらくすると何かを手に持っている。

魚をとるモリだ。

光一郎はモリを手に持つとざぶざぶと海に入り、深くなった所で頭から潜ると、すぐに、また戻ってきた。

モリの先に銀色に光るものが刺さりピチピチと動いている。

魚を抜き取ると、光一郎はモリを投げてよこした。

『自分で獲れ』ということらしい。

 

幸一郎はモリを片手に持ち、海の中に入って行ったがしばらくそのまま海の中にぼうっと突っ立っている。

その間に光一郎は魚を串に刺して焼いている。手慣れたものだ。

 

そのうちに幸一郎のまわりにはたくさんの魚が寄って来て黒い渦を巻いていた。

素手でも掴める位大漁の魚たちが取ってくれといわんばかりだ。

幸一郎は黙ってモリを海に沈めると一匹の魚が自らの身を刃に貫いた。

ピチピチ跳ねる魚が刺さったモリを片手に光一郎のもとに戻ると、

「わしはもう食事はおわりじゃ。」

ついと立って洞窟に去っていった。