
『天空の蜂』東野圭吾
新型の大型ヘリが盗まれ、原発の上でホバリング、犯人の要求は日本の全ての原発を止めること。。。今の私たちには複雑な気持ちになるミステリー小説ですが、最後の犯人の言葉が今の福島に続いているような、なんとも怖い、複雑な、やるせない気持ちにもなりました。東野圭吾の小説によくあるように、犯人は前半のうちに読者にわかって進んでいくので、犯人は誰かというハラハラ感はありませんが、犯人というより、自分がどちらの立場に気持ちを寄せるか、単純にはいかない話でした。是非最後の台詞を読んでみてください。

『ビブリア古書堂の事件手帖』三上 延
ちょっと表紙の絵に抵抗があったけど(最近はこれが流行り?)読みやすくて面白いです。読書したくなると思います。ある小さな古本屋を舞台に、人と接するのが苦手な、若い女店長と、本を査定してもらいにきたのがきっかけでバイトをすることになった男の間で、本と人をめぐる謎と事件を、女店長がするどい洞察力を活かして解いていきます。最後は店長自身の身に起こる謎と事件が解き明かされます。

『海峡を渡るバイオリン』陳昌鉉
在日韓国人のバイオリン職人の人生をおったノンフィクション小説です。一人の人間の音楽との出会いが人生に与えた大きな影響、苦労の多かったバイオリン職人の人生だけでなく、朝鮮戦争のころの北と南の情勢などがわかり、歴史の勉強にも少しなります。前半は母親の気持ちがせつないです。その後バイオリン職人として成功して苦労が報われるのは少し「ゲゲゲの女房」に少し似ているかな。

『銀河鉄道の夜』宮沢賢治
改めて語るまでもない、日本文学の名作のひとつですが、改めて読んでみると新鮮です。想像力を豊かにする言葉の数々はやはり珠玉。授業で読むとそこまで伝わるかわからないけど、子どもには読んで欲しいものです。999よりもこちらを知って欲しい。

『儚い羊たちの祝宴』米澤穂信
時代ははっきりしないけれど、「お屋敷」「お嬢様/旦那様」など、なんとなく昭和や大正を感じさせる雰囲気の中、暗い世界が広がり事件が5つ起こります。それぞれ別々の話ですが、お嬢様たちが通う読書サークルでつながっているという設定です。人の感情の怖さをデフォルメしてミステリーの要素もちょっとありながらの不思議な話です。個人的には最初の「身内に不幸がありまして」が好きです。全体的にはやはり暗い感じ。

『ピアノを弾くということ』花岡千春
ピアノは弾けないし、ピアノを始めるというわけでないのですが、ピアニストを目指す上で色々な要素を取り上げてこうあるべき、というのを指南してくれているのは、楽器は違うけれどサックスをやっている身として参考になりました。

『空白の天気図』柳田邦男
原爆で破滅の街となった広島を、約1ヶ月後の9月17日、大型台風が襲ったのをご存知でしたか?枕崎台風―死者2,473人を出した昭和の3大台風のひとつですが、上陸した鹿児島県枕崎より広島の死者数、被害が甚大でした。2473人のうち、広島で2,000人を超える死者。8月6日に落とされた原爆と続く台風は、2011年3月11日の東日本大震災と福島原発事故にどうしても重ねてしまいます。自然災害と放射能という人々を苦しめる2つがほぼ同時に重なって襲う。原爆直後からも欠測なく続けた広島気象台の職員たちの目線から、戦争の悲劇、原爆が与えた人々への苦しみ、悲しみ、おぞましい光景が映し出されます。台風が接近している場面から原爆の日への回想がちょっとストーリー展開をじれったいものにしますが、ドキュメンタリーノンフィクション小説としては後世に残すべきものです。

『音楽家の名言』檜山 及武
バッパ、ベートーベン、ブラームス、ショパン、リストからフジコヘミング、小沢征爾、佐渡裕までいろいろな音楽家たちの名言を集めています。テーマごとに別れていて、「テクニックを磨きたいあなたへ」、「練習に行き詰まっているあなたへ」など言葉の数々が小さな悩みも消してくれます。練習があまりうまく行かないときなどにたまに手に取って開いてみると心がちょっと軽くなれます。







