「漫画みたいなこと」がまた起こった | 英会話サークル|埼玉・東京|Lalaa ENGLISH & MUSIC COMPANY

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長いですが、「なんで同じところをぐるぐる回ってるのを見るのが面白いの?」と僕に聞くひとは読んでください。


GOOD LOSER,MASSA


~2008年11月2日 ブラジル・サンパウロ~

2008年F1最終戦ブラジルグランプリは、7ポイント差でイギリス人のルイス・ハミルトンとブラジル人のフェリッペ・マッサの決戦。 F1の現在のポイントシステムは1位 10点、2位 8点、3位 6点、4位 5点、5位 4点、6位 3点、7位 2点、 8位 1点。 つまり、マッサは、優勝してハミルトンが6位以下にならないとチャンピオンにはなれません。2人が所属しているフェラーリとマクラーレンは他チームより力が突出していて、ハミルトンの6位以下は普通は考えられません。


フォーメーションラップ直前、ホセ・カルロス・パーチェサーキットを突然の激しい雨が濡らし、スタートが10分遅れる。レーススタート! いきなりクラッシュがありセイフティカー出動。再開後は終始マッサがトップ快走。ハミルトンは4位~5位を慎重に走る。このままの順位でレースが終わるかという雰囲気の中、約70周のレースの残り7周、再び雨! 各車ウェットタイヤに履き替えるためピットイン。「レースはゴールするまでわからない」の格言通りの展開に・・・・


~1年前の同じくブラジルグランプリ~

最終戦を向かえる前は今年と同じく1位ハミルトンと3位キミ・ライコネンの差は7ポイント。レースではハミルトンがコースアウトや車のトラブルで途中失速があり、ライコネンが大逆転のシリーズチャンピオンになる。その差1ポイント差。 まるで漫画のような結果になりました。


~再び2008年ブラジルグランプリ~

残り7周で雨が降ると、各車タイヤ交換。マッサもハミルトンもタイヤ交換。しかし、チャンピオンがかかってるこの2人は多くのドライバーより1周遅くタイヤ交換。コースコンディションが1周の間に激変し、1周早くレインタイヤに履き替えていた車がその1周分を早く走れた差が出ました。そして、トヨタチームはタイヤ交換しない賭けに出る。

そしてハミルトンがセバスチャン・ベッテルに抜かれる!残り2周、1位マッサ、2位フェルナンド・アロンソ、3位キミ・ライコネン、4位タイヤ交換をしていないトヨタのティモ・グロッグ、5位ベッテル、6位ハミルトン!! 


~14年前のオーストラリア~

1994年F1最終戦はオーストラリアグランプリ。アデレード市街地サーキット。最終戦を向かえる前の選手権ポイントは、1位ミハエル・シューマッハ、2位デイモン・ヒル。ポイント差は1ポイント。レースは終始緊迫して進む。その年、チームメートの天才アイルトン・セナが事故で亡くなり、地味なセカンドドランバーだったヒルがエースに。最終戦は若く才能溢れる24歳のシューマッハーを相手に、34歳のヒルが必死で追う展開。レース終盤、シューマッハーが突然コースアウト、ヒルが詰める、、、抜ける!と思った瞬間シューマッハーがコースへヨロヨロと復帰。ヒルの車に当たる!シューマッハーはその場でリタイヤ、ヒルはサスペンションを傷めてピットイン。ピットで修復を試みるも、治せない。。。無念のリタイヤ。車の中でしばらく動けず、降りた後もずっとピットで呆然としていたヒル。チャンピンにはなれなかったが、グッドルーザーでした。


~再び2008年ブラジルグランプリ~

フェラーリチームではシューマッハー引退のあとを継いだライコネンがエース、マッサはセカンドドライバーとして見られています。しかし、今年はライコネン不調。マッサは順調にポイントを伸ばし、ハミルトンと最後までチャンピオン争いをするほど成長しました。でも、まるで14年前のシューマッハーのように才能を輝かせて走る23歳のハミルトンに比べ、下位チームでデビューし、1年テストドライバーも経験した努力の人マッサは、同じく14年前、亡きエースドライバー、セナの代わりにシューマッハーと対決していたデイモン・ヒルに姿が重なります。F1雑誌の4コマ漫画では「セカンド顔」(※セカンドドライバーっぽい顔という意味)のキャラとして描かれています。


そのマッサが、残り2周で、ついにワールドチャンピオンの権利を手にゴールを目指す。開幕戦で勝利して、シーズン途中からはずっとランキングトップも守ってきたハミルトンにとっては、最終戦の残り2周でタイトルを手放してしまう悪夢の展開。しかも2年連続で。必死に前を行くセバスチャン・ベッテルを追う。両チームのピットクルーや応援に来ていた家族たちが祈る。


マッサ1位でゴール!あとはハミルトンの順位次第。このまま6位ならマッサがチャンピオン、1台でも抜けばハミルトンがチャンピオン。ハミルトン、ベッテルを抜けないまま最終コーナーへ。最終コーナー、ドライタイヤで走り続けていたトヨタのグロッグが雨に耐え切れずに失速!ベッテルとハミルトンがグロッグを抜く!ベッテル4位、ハミルトン5位!そしてゴール!


ハミルトン2008年総合ポイント98点、マッサ97点。1ポイント差でハミルトンが年間チャンピオンとなりました。

それにしても、すごい展開でした。こんな形でのチャンピオン決定になるとは。マッサは、ゴールしてからハミルトンがゴールするまでの15秒ほど、ワールドチャンピオンに最も近づいた瞬間でしたが、1年間戦って、最終戦の最終周、最終コーナー(しかもマッサがゴールした後の)がチャンピオン決定の場になりました。


マッサの家族は、マッサがゴールするとチャンピオン決定を信じて抱き合い、ジャンプして大喜び。それをチームスタッフが「違うんだ・・・」と伝え凍りつく。。。 マッサは結果を無線で知らされ、涙を流してウイニングランを走りながらパルクフェルメ(レース後に車を停めるところ)に向かいます。


車を停めてバイザーを上げると涙をぬぐっていましたが、表彰式では堂々と前へ進み、応援してくれた地元の観客を指でさしてから左胸をこぶしでたたくジェスチャーで感謝を表していました。そのときの姿、表情はとてもかっこよく、もう決して「セカンド顔」ではなかったです。この想いを胸に来年チャンピオンになって欲しいと思います。

デイモン・ヒルも2年後の1996年にチャンピオンになれました。「雨のレースで勝てない」とも言われていましたが、今回で雨でも勝てることを証明しました。そして今シーズン最多優勝もマッサです。


ハミルトンはF1史上最年少チャンピオン。23歳と300日。確かに安定感はすごい。でも課題は多いです。恵まれた環境があるのにプレッシャーに弱く、あやうく2年連続で最終戦でタイトルを逃すところだったし、タイトル決定戦で守って守って最低条件の成績での決定です。タイヤに厳しいドライビングだし、オーバーテイクも強引で他のドライバーから危険と言われています。「最年少記録」とはいつでもいつか破られるものです。チャンピオンの評価は何歳の時に獲ったかなんて関係ありません。ブラジルで前を走っていたセバスチャン・ベッテルは、ハミルトンの最年少優勝記録を抜いたさらなる逸材です。近い将来、今回のレースのようにベッテルが必ずハミルトンの前にたちはだかります。


グッドルーザー、マッサ。シンガポールグランプリでのメカニックの信号操作ミスによるピットストップ事故がなければマッサがチャンピオンだったはず。ブラジルグランプリで勝利し、大観衆に称えられていたのは、5位で表彰台にも上っていないハミルトンではなく、間違いなくマッサでした。