毎日使うものが壊れかけていたり、使い難かったりすると、仕事のパフォーマンスが減るばかりか、モチベーションまで下がってしまう。

 

 

こびり付くフライパンで料理をすると、美しく仕上がらなかったり、洗う手間が増えたりするのと同じだ。そもそもダメなフライパンで料理をしようという気にすらならない。

 

 

 

 

 

 

私はコレクターではないので文房具系ユーチューバー、しーさーさんのように数万本もペンをコレクションしているわけではないのだが、毎日使う文房具にはできるだけいいものを使うよう心がけている。

良い文房具を使うと、美しい字が書けたり、手が疲れにくくなったり、モノを書くモチベーションにつながる。

 

 

 

 

そこで、私が大好きなロットリングという筆記具メーカー。特に製図用品には長年培われてきた高いクオリティと美しいデザインが定評である。今日はそのシャープペンについて掘り下げてみる。

 

 

 

 

まずはデザイン。

パイロットやぺんてるも使っていて本当に素晴らしいものを作るメーカーだと感じるのだが、しかし客観的にみてデザイン性に関してはドイツ勢が一枚上手だと言わざるを得ない。(個人の意見です)

 

例えるならぺんてるの製図シャープはスカイラインGT-Rで、ロットリングはポルシェ 911のような違い。

 

 

ドイツ勢には明確で、かつ普遍的なデザインのコンセプト(懐古的ともいう)が存在し、その製品の全体像を見ただけで作り手の意図がわかる官能的なデザイン。故に時代に左右されない我の強い見た目が特徴だ。

 

 

逆に日本の製品はトライアンドエラーを繰り返し、お客様の声に耳を傾け、新機能をモリモリ備えた物づくりが特徴的で、ごく稀に登場するヒット商品は時代を超越するロングセラー商品を生み出す。

ぺんてるのスマッシュ、ユニのクルトガ、パイロットのSシリーズがいい例だ。

 

 

私にはどちらの考えも理解できるし、一概に「ドイツの製品は素晴らしい」「日本の製品はダサい」と決めつけないようにしている。それこそ差別だ。ぺんてる グラフ1000フォープロも壊れなければ長く愛用していたに違いない。

 

 

 

 

そんなことをたかが筆記用具て語ってしまう私はアホなのだろうか。

しかし工業製品に触れて何かを感じ取るということはとても大事だと思う。予算に手の届く範囲で工業デザイナーの『仕事』が垣間見える筆記具は、この趣味を長くやって飽きないポイントの一つだ。

 

 

 

 

 

 

ロットリングに話を戻そう。

これらは私が所有するロットリングのシャープペン達だ。

上から 

rotring 500 0.35mm

rotring 600 0.7mm

rotring rapid Pro 0.5mm

 

 

値段は500が1000円、600は3000円、ラピッドプロも3000円だ。

 

 

それぞれ芯径がバラバラなので単純に比較をするわけではない。

 

私は、「このシャープを持ったらこれを書くとき」と気持ちを入れ替えやすくするため、あえて芯径ごとにバラバラのシャープを使っている。

たまに同じシャープペンを芯径違いで持っている人を見かけるが、彼らは小さな硬度表示窓や色で見分けているのだろうか?

 

まぁ、今やデジタル全盛期にこんなまどろっこしい方法を取る方は少ないと思うが。

 

 

 

 

 

 

数字シリーズ

 

300、500、600、800、800+というラインナップ。所有していない300と800(+)の説明は割愛する。

 

 

500と600は口金や滑り止めのパーツが共有されており、値段の違いは主にボディの素材。500はプラスチックで600は真鍮が使われている。

 

そのおかげでシルエットは同じなのに書き味や重心がかなり違う。

 

個人的には甲乙付け難いが、500のほうが業務用な味付けで、600は少しラグジュアリー路線に走っているような気がする。現に600は昨年新色が登場し、コレクター商品になっている。私にはその販売戦略は通用しませんぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

500

 

口金とグリップ、クリップのみが真鍮でボディがプラスチックのため、傷付くのを恐れずにガシガシ使っていける。重心バランスもよく考えられており、書き味の良さだけをみるとこれが一番優れているモデルとも言える。プラスチックボディにより、ガッチリしすぎず、適度な柔らかさと振動吸収性を備える。

しかし、濃くしっかりした字を書きたいときはボディが軽いので少しだけ筆圧を高める必要がある。

 

価格帯の似たステッドラー 925 25(35)シリーズと比較をする方が多いが、目指している方向が違うのでなんとも言い難い。

しかし、作りの精巧さや見た目の良さだけを比べるとステッドラーに軍配が上がる。

 

 

0.35mmの芯径を選択した理由は、図を書くときの文字入れに使うため。電気回路図を描くときに小さい数字を書き入れないといけないため、それに重宝する。

 

 

 

 

 

600

 

総金属ボディによる重厚感は圧巻。なのによく手に馴染むのは鉛筆のような六角形ボディだからだろうか。

エッジが立っていて見ているだけでは痛そうに見えるが、そんなことはない。

黒色の焼き付け塗装も捨てがたいが、500との差別化を図りたかったためシルバーを選択したら、これが素晴らしくよかった。

 

黒色よりも優しく、しっとりとした肌触りが特徴的だ。

 

重量級ボディなため、0.3mmや0.5mmを選んでしまうとポキポキ折れてしまうのではという懸念があり0.7mmを選んだのだが、重いボディと太い芯はいいコンビだと知った。

 

 

主に電気回路図を描くときに使用する。

 

 

 

 

 

rapid Pro

 

数字シリーズよりも全長が長いため、低重心ではなく中央よりなバランス。

主に5mmの方眼紙に日本語を書くときに使用している。

製図用品を生産しているロットリングだが、ラピッドという普通筆記用のシャープペンをアップデートしたモデルであるため、ローレットのグリップなど製図用を思わせるデザインだが、製図用品としては全く使えない。

 

写真をご覧になるとわかるのだが、純製図用品である数字シリーズと比べ、口金が1mmほど短くなっており、硬度表示窓が搭載されていない。

右がラピッドプロ

 

硬度表示窓がなくて困ったことは正直無いのだが、以上の理由により製図シャープでないことは確かだ。

 

これはあまり知られていないことなのだが、ゼブラのデルガードのように筆圧を高めると芯が引っ込む芯折れ防止機能がある。この機能、説明書にすら書かれていないので筆圧が低い人は知らないんじゃないかな。

 

 

ローレットは数字シリーズよりも目が細かく、若干太い。

ボディの六角形は少し丸みを帯びており、ロゴの塗装も浮き出ている。この辺りにお金を使っていることが伺え、少しラグジュアリーな雰囲気を漂わせる。

モンブランのようにギラギラしてはいないが、素材感の良さで所有感を高めてくれることは間違い無い。

シルバーも美しいのだが私は断然黒をお勧めしたい。黒のデザインの統一感と赤のコントラストが素晴らしいためだ。

 

数字シリーズの黒も美しいのだが、黒が一番似合っているのが金色とのコントラストが美しい800、800+の2機種で、それらの値段は8千円を超えるため、手に入れるのはしばらく先になるだろう。

しかしrapid Proが800を肉薄するほどのクオリティのため、もしかすると買わないのかもしれない。

 

 

 

まとめ

 

ロットリングの世界観をお得に体験したい方にはロングセラーの500を、素材感の良さやカッチリ硬い書き心地が好きな方は600、そして一般筆記にはrapid Proをお勧めしたい。

 

シャープペンにハマるのは中学生みたいで子供っぽい趣味だと嫌悪せずに、調理器具に拘るように、少しでも気にしてみて欲しい。筆記用具は「道具」だから、必ずその用途、予算にあったあなたにお気に入りのものが見つかるはずだ。

 

私はこれからもこの3本を壊れるまで愛用していくと思うし、壊れたら同じものを買う所存だ。無論、これよりも素晴らしい筆記具が出て来れば話は変わるが。

 

嗚呼、美しきかな文房具。