百花がグッときた歌を紹介する
「勝手に『万葉集』」シリーズ
恋と夢の
切っても切り離せない関係です。
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百花郁栄はこんな人→★プロフィール
(以下、『万葉集』の本文・口語訳は全て『新編 日本古典文学全集』(小学館)から引用しています)
夢の逢ひは
苦しかりけり
おどろきて
掻(か)き探れども
手にも触れねば
【口語訳】
夢で逢うことは
つらいものだな
目が覚めて
手探りしても
あなたが手にも触れないから
現実にはなかなか逢えないので
せめて夢で逢いたいと
願っていたら、
相手が夢に出てきてくれたんです。
それは嬉しい。
でも、
手を伸ばした瞬間に
手を伸ばした瞬間に
ハッと目が覚めて
手が空を切る虚しさ。
せ、切ない。。。
だからやっぱり
直に逢いたい。
この歌の根底にあるのは
その気持ちですよね。
これも恋の歌ですが、
私はこの歌に、
亡くなった母を夢に見るときの感覚が重なります。
夢の中に母が出てくると
「お母さん!なんだ、生きてたんだね!」
とホッとして喜ぶのに、
目が覚めて
「あー、そんなわけないのか…」
とめちゃくちゃがっかりする感じ。
逢いたい人に逢えない悲しさ、
夢で逢うことのささやかな喜びと
目覚めてからの絶望感。
千年も昔の人も
同じように感じていたのだなあと
感慨深いものがあり、
またそれが歌になって残っているというところに、
『万葉集』の凄みを感じています。