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皆さんはアヤ・ナカムラをご存知でしょうか。
私はつい最近まで知りませんでした。今フランスで一番売れている歌手みたいです。
名前の由来は漫画かドラマのキャラクターとのことで、彼女自身はマリ出身のフランス育ち。血縁に日本人はいないようです。
なぜこんな話をするかというと、最近、患者さんの苗字からその人の出身がわかるようになってきたからです。
例えば、ロドリゲスと言えば、多くの人がラテン系を思い浮かべるかと思いますが、他にも、〜スキーと言えば、東欧な感じがしますよね(女性だと〜スカになったりしますが)。末期直腸癌で腹水が溜まった患者さんは15年間待ち望んでいたというギリシャ旅行から帰宅したばかりで、名前について同期に聞くと、やはりギリシャ系だということでした。
私は日本人が聞けばすぐに日本人だと分かる苗字ですが、アメリカ人には、タナカかスズキでもない限り日本人だとはいうことは伝わりません。昨日から指導医が代わり(アメリカの指導医は、病棟に関しては7日あるいは14日間連続で働いて同じ日数連続で休むというスタイルが普及しているみたいです)、自己紹介を求められたのですが、その時に名前と身分と話す言語を言うように指示されました。
「話せる言語」ではなく「話す言語」という表現だったのも面白いと思いましたが、結果、こんな感じでした:
医学科3年生(アメリカ出身メキシコハーフ)、スペイン語。内科研修3年目(中国南部出身アメリカ育ち)、マンダリン。研修医1年目(私)、日本語。研修1年目(アメリカ出身アメリカ育ち)、スペイン語少々。医学科4年目(アメリカ出身、両親が中国人)、広東語少々。医学科3年生(アメリカ出身グアテマラ育ち)、スペイン語。
しかも上記自己紹介をそれぞれが英語でするわけで笑 バイリンガルは当たり前、トリリンガルも珍しくありません。私は日本では翻訳機器を使うことはほとんどありませんでしたが、今はスペイン語しか話せない患者さんが結構いるので、通訳に頼らないわけにはいきません。回診中に通訳サービスに電話しなければならないので、持ち患が8人しかいなくても回診が終わるまでに1時間ぐらいは軽くかかります。
残念ながら日本語の需要は今のところゼロ。
関連して、最近は初見の患者さんはカルテで人種欄をチェックしてから診に行くようになりました。勝手に白人だと思い込んで行って、黒人だと内心少しびっくりしちゃうんですよ。差別意識とはまた違う気がするんですが、黒人特有のアクセントがある場合があるので、ちょっと心構えが必要というのもあるし、歴史的な事情もあって中には医療スタッフへの不信感が強い黒人もいるので、接し方が難しかったりもするんです。
タスキギー事件って聞いたことがある方もいらっしゃると思うんですが、梅毒にペニシリンが効くとわかってからも、末期梅毒の症状を研究するために、アメリカ政府が一部の黒人にペニシリンを提供しなかった(白人は全員ペニシリンを投与された)という医療倫理上最悪な事件の一つです。
実は二週間ぐらい前に神経梅毒の患者さんを担当したのですが、すっかり白人だと思い込んで会いにいったら、黒人の女性で、内心、面食らったんです。でもその場でタスキギーのことを思い出して、密かに感慨に浸るような心境になったのは、私がアジア人だからであって。黒人患者が未だに歴史を引き摺っているというのは、アメリカ社会における差別の闇の深さを物語っていますよね。
あと人種・言語問題以外で最近気づいたのは、薬物問題。日本ではそもそも大麻自体が違法なので、喫煙といえばタバコだけですが、私が住む州は大麻が合法なので、喫煙内容を掘ると大麻の場合があります。もちろんコカインやら覚醒剤やらの人もいるので、「やり方」まで詳しく聞く必要があるという。。。鼻からなのか静脈からなのか針を刺す前は口で舐めるか等々
指導医に問診が足りないと言われ、知るかそんなことまで、と思いましたが、アメリカでは常識なようです呆
医療的隠語はこっちの方が圧倒的に少ないですね。日本では患者さんがお亡くなりなることもドイツ語由来の隠語で表現したりしますが、こっちはダイレクトです。強いて言えば、スラングは色々。
アメリカは(というか私が務める大学病院は少なくとも)日本と比べて圧倒的に回転が速いです。入院させて、すぐに退院させて、また別の患者さんを入院させる。抗菌薬が内服に切り替えられなくても、静脈ラインを入れて退院させて家で投与を継続させます。なので、日本みたいに「転院待ちの患者さんで肺炎を拗らせているうちに3ヶ月経った」みたいなシナリオが非常に少ないのですが、それに近い「待ち」の患者さんは、インフォーマルな引き継ぎの時は「He's just chilling」と言ったりします。ニュアンスは訳し難いんですが、強いて言うなら、「まったりバケーション中の患者(だから急変はしない、安心しな)」みたいな感じですかね。
ついでに引き継ぎの話に戻すと、医者のプレゼン能力が高いのは単純にプレゼンの機会が多いからだと気づきました。とにかく引き継ぎが多い。引き継ぐために仕事をしているんじゃないかと思うことさえある。日本だと今でも当直含む24時間勤務、36時間勤務みたいなのが平気で横行していると思うのですが、そのメリットは継続して同じ医者が患者さんを診れるということです。翻ってこっちは当直というものがないので、患者さんが日勤帯から夜勤帯に引き継がれる他に、週末は一部のチームが早上がりするため、残るチームが引き継ぎを受け、数時間後に引き継がれた患者さんを夜勤帯に引き継ぐという二段回引き継ぎまで存在します。
その上、日本の場合は、心不全で入院すれば循環器病棟へ、肝硬変で入院すれば消化器内科病棟へという流れが一般的ですが、アメリカでは基本的に一般内科病棟に入院して我々一般内科病棟医が、それぞれの診療科にコンサルトしてケアをコーディネートするというスタイルなので、コンサルト業が業務の大半を占めます。
よって患者についてのプレゼンをしている間に1日が終わるという感覚でしょうか。ただ発見があるとすれば、プレゼンをするたびに患者さんに対する理解は深まるような気がしないでもない。。。少なくとも患者さんのことを常に網羅的に見る余裕があるので、見落としは少ない。
でも急変時はこのコミュニケーションがネックになっているような。急性腹症ともなれば、日本なら、主治医チームの研修医が採血、画像、外科への連絡、オペ室への移動をやるので、動くのは基本的に研修医、コミュニケーションも研修医・指導医・外科医の三者間、場合により放射線科医も一言、という感じですが、こっちは、採血には採血係が必要だし、画像を撮るにも運搬のおじさんを待たないといけないし、画像は放射線科医の所見待ちだし。。。そんなわけなので、痺れを切らして自ら画像を見て所見を述べるとびっくりされます。でも、だって。放射線科のレポートなんて待ってたら日が暮れるじゃん!
まあ、今のところはこんな感じです。
また♡
最後までお付き合いくださってありがとうございました。