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「ならば...拳で諦めさせるのみよおおおおおおお!!!!!」
「!!!!!!!!!!!!!」
ちゃぶ台が、剛速で飛んできた。
「っつううううおおおおおおああああああああああああああ!!こんじょおおおおおおおううううううう!!!!」
が、鉄治郎はそれをぐーぱんちで叩き割った。
ガラガラ、と無惨にもバラけたちゃぶ台。
皮が少し剥けた左手拳を見て、鉄治郎は思う。
「( さすが爺ちゃん...、掴んで投げるまでの動きが早すぎて咄嗟に回避が間に合わなったぜェ...) 」
鉄治郎は、岩を殴ったときでさえ手に傷をおっていなかった。だが、このただのちゃぶ台を殴っただけで皮膚が傷付いている。
恐らくは、いや確信的に鉄悟郎のちゃぶ台返しの威力が原因だ。
超人的な身体能力の鉄治郎が反応できない速度で繰り出されたちゃぶ台は、もはやちゃぶ台ではなくそれはちゃぶ台の形をしただけのただの殺人兵器である。ちゃぶ台ちゃぶ台しつこい。
やるしか、ないのか
鉄治郎の頬に一滴の汗が流れる。
「どうした、鉄治。東京にいきてぇんだろ」
低く、静かな声だ。
鉄治郎は目を上げた。
目の前の男を、見るために。
今から拳を交える敵を見るために。
「いくぜェ、俺はよ...テツゴロ爺ちゃん!!!!」
その言葉が、開始の合図となった
『うおおおおおおおああああああ!!!!』
二人の拳が、真正面からぶつかった。
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...どれぐらいたっただろうか。
鉄治郎は、部屋の畳の上に大の字で寝ていた。
天上には無数の星が輝き、今がまだ夜だと言うことぐらいしかわからない。
「...ち、やっぱり爺ちゃんは強ぇな」
結果を言うと、負けたのであった。
拳がぶつかっただけでやられてしまったようで。
「...」
何の気なしに星を見つめていた。
...なぜあれほどまでに東京に対して拒絶、それ以上に敵対心すら抱いているのか。
しゃべっていた以上の理由があること位は、鉄治郎にもわかっていた。そしてそれが原因となって、壁として立ちふさがっていると言うことも。
その厳しい現実を乗り越えなければ、先には。
そう、東京へはいけないと言うことを。
ーーでも、考えることは得意じゃない。
考えるなら、体を動かしながら考えればいい。
ウガー!と頭を両手でかきむしり、
「ちくしょー、鍛え直しだぜェ!」
そういって、鉄治郎は夜にもかかわらず走りにいってしまった。
家のなかは台風や大地震が直撃したかのような有り様で、物はメチャクチャに壊れていた。
その家の奥に1人、男が寝そべっている。
「...言い過ぎやり過ぎ、だったかのう...」
ちょっとだけそう思っている者。
言うまでもなく鉄悟郎であった。
辛うじて無事だった日本酒の瓶を開け、硝子のコップを手に取り酒をつごうとした。
が、コップは持った途端に壊れて破片になってしまった。
「ち...」
鉄悟郎はそのまま瓶でいくことにした。
高い訳じゃないが、気に入った酒だった。
いつもならもっとうまいはずの酒も、砂埃のせいか、はたまた疲れか。
そんな些細なことすら、今の彼には考えが及ばない。気にかかるのは鉄治郎のことばかりだ。
「東京、か...何年ぶりになるかねぇ、そんな話は...」
東京は、悲劇の記憶がある鉄悟郎にとって、もう関わることがないよう祈る、そんな対象でしかなくなっていた。
だが。
『 ...俺は腹ァ括ってるからよ、爺ちゃんがどう言おうと絶対にいくぜぇ...』
『...俺は東京にいくんだ。』
まさか、一番大事な孫にそんなことを言われるとは、正直思っても見なかった。
「...はァ」
どうすることも、今はできなかった。
今、彼にできるのは寝ることだった。
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翌日。
あのあと家に帰ってきて、汗だくでそのまま倒れるように寝た鉄治郎は、結局どうすればいいかもほぼ思い付かなかった。
ので。
とりあえず修行にせいを出していました。
「...で?どうだったんだ?」
「駄ァ目だ、ちっとも取り合ってもらえなかったぜェ、まあ予想通りっちゃあそうなんだけどよ」
鉄治郎は康司を呼び、相談していた。
「 ふむ...」
「やっぱ、喧嘩、じゃないがこう、拳で語り合ったぜ?でもよ、爺さんあの年でまだまだ現役で強くてよォ」
鉄治郎にとっては、康司は自分の頭脳代わりだ 。康司に思い付かないとなれば、最早打つ手はなく、さらに修行と家の手伝いしかしなくなってしまう。
「何かいい案はねぇもんかなァ康司?」
ただ、問題なのは、
「わかった、ではこうしよう」
鉄治郎よりはるかに考えることができるといっても
「今から一ヶ月間、集中的にトレーニングをしよう。そして、さらに強くなって打倒村の住人だ。」
こいつは性格的に凄まじい阿呆であった。
