60代男性 スポーツジムで本格的にトレーニングをしている
スパルタンレースを「スーパー」のカテゴリーで完走できる
6月30日に競技に参加した際に転倒
直後から腫れはじめ夜には膝から下が腫れあがる
翌日に総合病院で左側副靭帯と前十字靭帯を損傷と診断を受ける
半月板のダメージについては急性期のため判断を保留とのこと
本日は受傷から3週間後
膝を伸ばしきらない角度で固定した状態で両側に松葉杖を使って来院
今回の患者さまは月に1回のペースで定期的に御予約をいただいている
1週間前にメールで怪我をした状況と経過を知らせていただき施術を受けても問題ないかと相談されている
画像と文章だけでは膝そのものに何ができるかの判断はできないと判断
松葉杖をついて左右がアンバランスな条件で生活することからくる不自然な緊張を対象に施術することを提案して本日を迎えている
実際に対面すると右脚が一目でわかるほど細くなっています
3週間も使わないでいると低下する筋力を視覚的に実感します
右膝の動きを確認すると屈曲(膝を曲げる)は90度で伸展(膝を伸ばす 真っすぐ伸ばせると180度))は150度
屈曲では「固くてこれ以上曲がらない」という感覚で痛み・違和感はない
伸展では「膝の奥… これが靭帯なのかもしれないんですけど痛いっていうか嫌な感じがあって…」 「これ以上動かすと力が抜けちゃうんですよ イテテテッて」「あらためて意識するとここ(ふくらはぎの辺り)も痛いな…」という状況
どの程度まで受傷した膝を動かせるか?
そのときに起こる反応は?
この2点を把握したわけです
そこから〈右膝の痛み〉に対する施術の優先順位は低いままという判断
膝が直角までしか曲げることができない
伸ばそうとすると少し曲がった状態で膝やふくらはぎに痛み・違和感がでる
このような状態では施術の刺激が回復の妨げになることが多い
患部に回復力が戻るのを待つのも治療のひとつ
背部の施術からスターをすると右側の腰椎あたりに今までになかった広範囲の緊張
何度圧しても手応えがないので患者さまに確認
「ここ触られている感覚はあると思うんですけど気持ちよさはないですよね?」と手応えがない範囲を回復しながら施術
手応えを物差しにしながら施術を進める
右の腸脛靭帯に関係する大腿筋膜張筋と大殿筋に緊張を解消したあとに右膝の状態を確認
「あれっ? 横になってるからみえないけど(右膝が)伸びてますよね??」
「膝じゃなくてここ(股関節前面)なんですか? …ぜんぜん違いますよ!」
と右下肢外側の緊張を解消することで右膝の動きが改善したようです
施術者として嬉しい変化ですが私は基本的に軽く動かしただけで痛みを感じる怪我に患部へのアプローチはしません
その理由は足首の捻挫を思い浮かべると理解しやすいと思います
なにもしなくても痛みがある患部は回復力が低下していることが多い
そこに刺激を加えて回復を助けるのは最小限で効果をだす繊細な技術が必要
とはいえ60代で3週間も片足を使わない生活は筋力の低下を避けられません
患部に負担をかけないことを最優先にして治療を組み立て
右脚を中心に〈内転筋群〉〈後脛骨筋〉〈大腿四頭筋〉〈腸腰筋〉を対象に緊張を解消
歩いて状態を確認
患者さま動きを確認したことを参考に 委中 陽陵泉 太谿 腓腹筋外側頭に円皮鍼
「もう松葉杖いらないですよ…」という状態まで変化が起こりました
とても嬉しい結果ではありますが帰宅は松葉杖の利用をおすすめ
施術直後は身体が変化しているので思わぬ事故が起こりやすいもの
それ以外にも肩関節痛が施術で解消されたケースで「…全然痛くない! 昨日はこんなに動かせなかった… イテッ!」と急に患部を最大限に動かそうとしてダメージを受けることは少なくありません
「うれしいのはわかります」
「でも今日は松葉杖を使って安全を優先してください」
「これからのことは明日の朝に考えるほうが間違いないと思います」
私なりのアドバイスをお伝えして終了
受傷から一ヶ月近い時間を安静にして過ごしたこと
日常的に健康を意識した生活をしていた
この2点が今回の思いがけない回復のキーポイントになっていると思います