王宮儀式から愛の行方まで

QUEEN VICTORIA

 

著:村上リコ

 

2018年9月30日 初版発行

株式会社河出書房新社

東大阪図書館より貸出

 

ヴィクトリア女王の生涯についての本です。

幼少期から亡くなるまでの

宮中行事から私生活など

どのように育てられ、生きたのかを記録した本です。

これまで幼少期の絵や資料に触れたことが少なかったので

それらを見ることができ勉強になりました。

初めて見る肖像画も多く、ビジュアルも楽しめました。

 

トーリー、ホイッグはそれぞれ

スコットランドで「馬を追う者」、

アイルランドで「無法者、匪賊」という

相手方を罵倒する呼び方が

グループの呼び名として定着した話(p.30)は

サフラジェットを彷彿させました。

 

またヴィクトリア女王を映像化した

作品を紹介しているのですが、

その日本語タイトルを改めて原題と比較すると

恋愛の側面ばかりが

日本語では取り上げられていると感じました。

原題「ミセス・ブラウン」(Mrs.Brown)の

日本語タイトルは「至上の恋」、

原題「ヤング・ヴィクトリア」(Young Victoria)は

「ヴィクトリア女王 世紀の愛」と日本では命名され、

ドラマヴィクトリア」(Victoria)の日本語タイトルも

「女王ヴィクトリア 愛に生きる」です。

「恋」「愛」が入っていないのは老年期を描いた

「ヴィクトリア女王 最期の秘密」

(原題Victoria & Abdul)だけです。

確かに恋愛して結婚する一女性でもありますが、

大英帝国を築いた君主、ヴィクトリア女王の

歴史ドラマにも関わらず、「愛」ばかりが

スポットライトを当たっているように感じました。

これが男性君主なら

いささか奇妙に見えるのではと思います。

女性だから政治などの公的な面ではなく、

恋愛、家庭という私的な面だけが

強調されているのではないかと

疑問に思い、女性君主の軽視だと感じました。

 

著者はヴィクトリア女王の欠点を批判しながらも、

その時代の中で生まれ育った女王ヴィクトリアの

生来の人間的魅力や善良さに心を寄せています。

その著者の暖かい姿勢が好ましく思える本でした。

 

ヴィクトリア女王、ヴィクトリア朝、

イギリス王室に興味のある方にお薦めです。

 

 

 

ヴィクトリア女王の生活と人柄を

臣下の記録を通して見るこちらの本もお薦めです。