『俺ではない炎上』

 

浅倉秋成 著 双葉社

 

 

【内容(「BOOK」データベースより)】

外回り中の営業部長・山縣泰介に緊急の電話が入った。「とにかくすぐ戻れ!」どうやら泰介が「女子大生殺害犯」であるとされて、すでに実名、写真付きでネットに素性が晒され、大炎上しているらしい。

SNSで犯行を自慢していたそうだが、そのアカウントが誤認されてしまったようだ。誤解はすぐに解けるだろうと楽観視していた泰介だが、成りすましは実に巧妙で誰一人として無実を信じてくれない。会社も、友人も、家族でさえも……。

ほんの数時間にして日本中の人間が敵になり、誰も彼もに追いかけられる中、泰介は必死の逃亡を続ける。

 

 

 

 

前作の『六人の嘘つきな大学生』は、アマゾンでもレビューが4500件にも上る高評価作品で、星4.5をもらっている。

あまりに評価が高いので、まだ文庫になっていないのに単行本を購入して読んだ。(後で調べたら、文庫になってすぐに購入でした)

私は読了して、そんなに高評価の人が多いの?ってびっくりした。

私は、あまり面白いと思わなかったので、どうして私だけ?って、理解不能になった。

そして、2作目のこの『俺ではない炎上』も評価が高いが、今のところ前作ほどではなく、『六人の嘘つきな大学生』の方が面白いというレビューが多い。

『俺ではない炎上』も私が購入した時はまだ単行本だったのだが、6月12日には文庫が出るらしい。もう少し待てばよかった。(; ^ -^)

 

本作は、構成・ストーリー展開が素直で読みやすい。

今はSNSなどで、情報が拡散されるので、悪質な誤った個人情報をアップされると、それは恐ろしいことになる。

この小説の設定は、その ネットでの陥れ が事の始まりとなる。

突然ツイッターに女性の遺体殺人を仄めかすツイートが自慢げにアップされた。

時間をおかずそのアカウントから投稿者の素性が暴かれ、投稿者すなわち殺人犯とされた。

そして 山縣泰輔 はネット上で写真と共に個人情報を拡散され犯人とされてしまった。

警察は、まだ泰輔のところには来ていない。

当初、警察に自分から出向いて説明すれば誤解は解けると思っていたが、自宅庭の 倉庫から女性の遺体 を泰輔は見つけて怯えているところを、近所の人に見られ写真を撮られてしまった。

SNSで泰輔の自宅で遺体が見つかったと拡散され、あっという間に炎上。

今や、ネットの野次馬たちは泰輔を警察が逮捕する前に確保して、ネットに自慢げに投稿しようと、誰もが動き始めた。

顔を知られているから、逃げるのも容易ではない。

警察からも一般市民からも追われてしまう。

もう、こうなれば、自分で真犯人を見つけるしかない。

泰輔は逃亡しながら、自分に成りすましたアカウント情報から犯人を見つけようとする。

殺人犯の嫌疑をかけられ味方はいない。リアルに自分がそういう立場になったらどうするだろうと考えずにはいられなかったので、この主人公には同情してしまう。

ストーリーは複数の視点で進んでいく。

この複数の視点が事件とどうかかわり、繋がっていくのかが興味が募りページターナーとなる。

 

読了。

しばらく、どういうこと?

意味がつかめずにいた。

なんと、読者はまんまと騙されていたのだ。

また前に戻り、どういうことだったのか確認作業。

ふーむ。

誤認するように仕向けた著者の仕掛けた罠にはまってしまった。

後になって検証すれば、なるほどあの章での内容はそういうことだったのかと理解する。

でも、作家はずるいよね。

そう思い込ませるようにもって行く文章は巧み過ぎて憎らしい。

まあ、1作目の『六人の嘘つきな大学生』より、こちらの方が私は評価が上だったな~。