『恐るべき太陽』

ミシェル・ビュッシ 著 集英社文庫

 

 

鬼才ビュッシが放つ、クリスティーへの挑戦作!

創作セミナーのために南の島に集まったカリスマ人気作家と作家志望の女性5名。ところが彼らは次々に死体となって発見され……

 

【内容(「BOOK」データベースより)】

画家ゴーギャンや歌手ジャック・ブレルが愛した南太平洋仏領ポリネシアのヒバオア島。謎めいた石像ティキたちが見守るこの島に、人気ベストセラー作家と、彼の熱烈なファンでもある作家志望の女性5人が〈創作アトリエ〉のために集まった。だが作家は失踪、彼女らは次々に死体となって発見され……。最後に残るのは、誰? 叙述ミステリーの巨匠ビュッシが満を持して放つクリスティーへの挑戦作。

 

 

 

出版社主催の《彼方で執るペン》コンクールで当選した作家志望の女性5人がマルケサス諸島の地上の楽園 “ヒバオア島” に集まった。

人気作家 ピエール=イヴ・フランソワ の指導の下、1週間 “創作アトリエ” に招待されたのだ。

ピエールは、5人に課題を出した。

一つは死ぬまでにしたいことを書き連ねること。まるで遺書のようだ

もう一つは、創作小説の冒頭で、ある人物が行方不明になる。その後どう物語を創作するかそれぞれ考えること。これが彼の出した2つの課題。

そして課題が現実となる。

崖の上に衣服を残しピエールは行方不明となった。

彼は生きているのか死んでいるのか、それともそれは課題の演出なのか。

 

創作アトリエに参加した5人のほかに、参加者の同行者2人もいる。

そして、彼らが宿泊する “恐るべき太陽”荘 の女主人と娘2人。

主な登場人物は全部でピエールを除いて10人である。

 

この島には20本の指を持つ彫像があるが、2か月前に突如として新たに5体の彫像が出現した。それも “恐るべき太陽”荘 の周辺に。

 

“恐るべき太陽”荘 の女主人が言うには、彫像にはそれぞれ特殊な力(マナ)が備わっているという。

どうやら、この5体の彫像はこの企画に参加した5人の作家志望女性たちを特徴づける力(マナ)を表しているような描写。

意図してこの5人はこの彫像になぞらえて選ばれたのか?と読者は勘繰る。

そして、物語は行方不明事件から連続殺人へと進んでいく。

 

最初の殺人事件は創作アトリエ参加者のベルギーの人気ブロガーで70歳の女性。

全身10か所あまりの刺殺だった。

そして次々と参加者の女性たちが殺されていく

 

アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』のオマージュか?

 

読了

この小説は読み始める前にすでに違和感を覚える

目次に注目。

ん?と思う目次

そして、複数人視点の章題に入り、もっと意味不明に陥る。

これが、何かこの小説の謎のヒントになると思って読む。

読み終わり、なるほどそういうことかと納得。

やっぱり違和感を覚えるということは必ずやそこには意味があるということだ。

読者は騙され続けていて、でもそれは、あとになれば構成の不自然さに気づくべきであったと読みの浅さに愕然とする。

一人称叙述詐欺とでも言ったらいいかな。

 

この作家の作品は『時は殺人者』に続いて2作目の読書。

前作もなかなか構成が良くできていたが、本作はより個性が出ていて、知能犯的な構成のミステリに仕上がっている。

読後、冒頭に戻って確認作業に入るのは、騙された読者が必ずすることだ。(; ^ -^)