『星を継ぐもの』【新版】
ジェイムズ・P・ホーガン 著 創元SF文庫
月面で発見された5万年前の死体は
どこからやってきたのか?
ハードSFの巨匠ホーガン不朽の名作
第12回星雲賞海外長編部門受賞作
【創元SF文庫60周年記念新版】
月面調査員が、真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。綿密な調査の結果、この死体はなんと死後5万年を経過していることが判明する。果たして現生人類とのつながりは、いかなるものなのか? いっぽう木星の衛星ガニメデでは、地球のものではない宇宙船の残骸が発見された……。ハードSFの巨星が一世を風靡したデビュー作。第12回星雲賞海外長編部門受賞作。
この小説は ジェイムズ・P・ホーガン のデビュー長編である。
初版は1977年。
今回2023年に新版化された。
読書通のブロガーさんが絶賛していたもので、ネットオフで手に入ったので早速読む。
上記あらすじでわかる通り、月面から発見された深紅の宇宙服をまとった死体。
どの月面基地の所属でもなく、この世界の住人でさえなく5万年前に死亡していたという。
原子物理学者であるヴィクター・ハント博士はトライマグニスコープを開発していて、それは物の表面のみならず内部も手に取るように観察できるという透視能力を持つ画期的な装置だ。
国連宇宙軍(UNSA)に新たに グループL が創設され、ハントが指揮することになった。
ハント博士は、この謎に挑むというストーリーになる。
あらすじだけで、壮大なロマンを感じて、かなり興奮する展開になりそうな予感。
この後に他の月面基地から14体の遺体が見つかる。
そして続けて月の裏側の月面下200フィートでも同様の 8体の焼死体。
そのそばには食料が入った金属容器があり、高熱にも拘らず中身は無傷。
その中の魚は現代の地球には存在しない魚であった。
彼らをルナリアンと称し、最初に発見されて深紅の宇宙服の死体をチャーリーと名付けた。
チャーリーが持っていたバックパックには原子力で動く装置の数々がコンパクトになってバックパックに収められていた。
そして、そこには地球上の文字ではない日記のようなものが…
高度な文明を持つルナリアンだ。
チャーリーの組織、骨格、化学組成は現代人と同じ。
果たして、チャーリーは地球人だったのか、それとも人間と同じ進化を遂げた他の惑星の異星人だったのか。
発達した技術文明が5万年前にすでに存在していたと言う驚嘆すべき事実に、生物学的、宇宙科学的、そして神秘性にどんどん興味が膨らんでくる。
月の歴史など詳細が語られているが、学術論文を読んでいるような感じで堅苦しく思うが、そこらへんは軽く流して読んでもいいように思う。
また物語は木星探検隊が宇宙船を発見。
どうやら、この宇宙船はルナリアンとは別の進化をした異種でハントたちは ガニメアン と名付けた。
スケールがどんどん広がって謎が謎を呼ぶ展開となりワクワクしてくる。
というわけで読了。
宇宙科学に疎い私には、難しすぎて理解できない部分が多々あった。
わたしは惑星や衛星などの知識もなく、説明文が研究論文のようで頭が混乱してきたのが情けない。
文章も固すぎて、もう少し平易な言葉で翻訳してくれたら読みやすかったのにと勝手なことを思った。
この5万年前に死亡していた深紅の宇宙服を着ていた死体が見つかったのは2028年の設定。
なんとわれわれ現時代の4年後ということだ。
作者は1977年に2028年を想定して書いたものだが、2024年に生きている我々は、まだまだ小説の様には進歩していない。
この小説では、月面に複数の月面基地があり、また木星やその衛星も探索しているという。
また、21世紀初めには地球人は月旅行を普通に楽しむまで進んでいるという設定。
SF未来を描く場合、どのくらい先の時代を設定するか、作者も考えるのだと思うけれど、2028年か~
もっと遠い先にしておけばよかったのにって思ってしまった。
そしてエピローグ。
章の最後の1行に書かれた、ある名前。
プロローグにあったこの名前が、ずーっと気になっていたのでやっとだ。
なるほど、このエピローグが、プロローグへとつながり、また謎が始まる。
これは続編があるということだ。
続編は『ガニメデの優しい巨人』と『巨人たちの星』で3部作となっているらしい。
このタイトルでわかる通り『巨人』が謎のキーとなる。
プロローグで出てきた巨人。
この巨人の詳細は、今回はまだ語られていない。
果たしてこの巨人は何者なのか…