『ぬばたまの黒女』
阿泉 来堂 著 角川ホラー文庫
神出鬼没のホラー作家にして怪異譚蒐集家・那々木悠志郎再び登場!
【内容(「BOOK」データベースより)】
生まれ故郷の村が近隣の町に吸収合併されると知り、十二年ぶりに道東地方の寒村、皆方村を訪れた井邑陽介。
妊娠中で情緒不安定の妻から逃げるように里帰りした陽介は、かつての同窓生から、村の精神的シンボルだった神社一族が火事で焼失し、憧れだった少女が亡くなっていたことを告げられる。
さらに焼け跡のそばに建立された新たな神社では全身の骨が折られた死体が発見されるという、壮絶な殺人事件が起こっていた――。深夜、陽介と友人たちは、得体のしれない亡霊が村内を徘徊する光景を目撃し、そして事件は起こった――。
果たして村では何が行われているのか。異端のホラー作家那々木が挑む、罪と償いの物語。『ナキメサマ』の著者が送る、ホラーエンタメド直球のどんでん返しホラー第2弾!
この作家の『ナキメサマ』が、とても面白かったので2作目も楽しみに読んだ。
1作目で登場した異端のホラー作家 “那々木悠志郎” がまたまた大活躍。
27歳の 井邑陽介 は、故郷の皆方村が近隣の町と統合されて名前が消滅すると知り、12年ぶりに同級生と集まることになった。
物語は陽介の「僕」という一人称で進んでいく。
陽介の妻は妊娠中で、陽介は嫌う自分の父親のようになるのではと、心が不安定のまま妻から逃げるように皆方村に来た。
彼がこの村を去ったのは中学三年の時。
その後、村を収める三門神社が火事に遭い、一族は焼け死に、その中には彼が好きだった 三門霧絵 もいたと今回級友たちから知らされた。
その後、代替神社として建立された皆方神社で殺人が起きていたことも知る。
この村に来てから、陽介たちは無残な殺人事件を複数目撃し、また不可解なことも起き始める。
また16年前、この村のトンネルから出てきたいくつもの白骨死体など、謎多き出来事が、徐々に明るみに出てきて、恐ろしい話になっていく。
また陽介らは、人間とは思えない作業着姿の幽霊?死人?らしきものを目にする。
あのトンネルから見つかった白骨は、落盤・崩落事故で死んだトンネル工事の作業員なのか?
12年前に焼け落ちた三門神社には 、
“罪人は死者に裁かれる”という伝承があった。
三門神社には、なにか謎が隠されているようだ。
連続殺人が起きるが、どの死に方も体の骨が打ち砕かれ、頭は木槌で粉砕されるという残酷なものだった。
その木槌をふるったのは、黒い装束の巫女である。
普通巫女は白装束のはずなのに、なぜ黒なのか。
陽介の同級生の男二人も殺された。
二人とも、罪を犯していた。三門神社の言い伝えである “罪人は死者に裁かれる” が実行されているのか。
そして殺人は続いていく。
先が気になり読み進めることになる。
読了。
『ナキメサマ』と似ているところが複数あった。
怪異が現実世界とうまく融合されて進んでいくストーリーは同じであったし、巫女がその怪異の要であることも同じ。
怪異からくる殺戮なので、北欧神話の「ベルセルク」のように忘我状態で人間はなかなか止められない。『ナキメサマ』と同様残酷極まりない殺し方だ。
この小説のキャッチコピーは「驚愕のどんでん返し!」だ。
私は、割と早い段階でこのオチに気付いてしまった。
最初から伏線がこれ見よがしに描写されていて、もしかしてと思っていたらその通り。
これは気が付く人多いんじゃないかなー。
気が付かなかった人は、結末最後の1行でのけぞることになるね。
もう一つ『ナキメサマ』と共通な点は、“哀れ” が根底にあること。
そのストーリー展開は、この作家うまいね。
本作は、ホッとすることに最後はハッピーエンド。
読後イヤミスにならなくてよかった。
あなたは、どんでん返しに気が付くかどうか、興味のある方はぜひ読んでみてね。