『神さまの貨物』
ジャン=クロード・グランベール 著 ポプラ社
【内容(「BOOK」データベースより)】
大きな暗い森に貧しい木こりの夫婦が住んでいた。きょうの食べ物にも困るような暮らしだったが、おかみさんは「子どもを授けてください」と祈り続ける。そんなある日、森を走りぬける貨物列車の小窓があき、雪のうえに赤ちゃんが投げられた――。明日の見えない世界で、託された命を守ろうとする大人たち。こんなとき、どうする? この子を守るには、どうする? それぞれが下す人生の決断は読む者の心を激しく揺さぶらずにおかない。モリエール賞作家が書いたこの物語は、人間への信頼を呼び覚ます「小さな本」として、フランスから世界へ広まり、温かな灯をともし続けている。
このストーリーは優しく語りかける童話の形式をとっている。
だが残酷な背景が見え隠れする。
時代は1942年ころ。
そう、あの ホロコーストが背景にある。
上記のあらすじに書いてある通り、貨物列車から投げ落とされたユダヤ人の乳飲み子(女児)を拾ったおかみさん。
子どもが欲しくて毎日神様に祈っていたので、神様からの贈り物だと思った。
物語の大筋は、おかみさんが神からの贈り物の子どもを貧しくとも、大事に愛情深く、立派に育て上げる物語だ。(こんな簡単に書くと身も蓋もないんですけど)
おかみさんは、貨物列車を見たのは初めてで、中はさぞかし素晴らしいものだと想像する。
そして、乗ってみたいものだと。
だが、その貨物列車は、ユダヤ人を収容所から移送する列車だった。
列車の行きつくところは…
この本は、ホロコーストに関する直接的な言葉は一切使っていない。
国名も書かれていない。
でも、どういうことか読者は理解する。
おかみさんや、周りの大人たちは子どもを守ろうと命を懸ける。
胸が熱くなるシーンがいくつもある。
それも強烈な感動ではなく、胸にじわじわと温かいものが沁み渡るような思いだ。
読み終わり、いろいろ 感慨深くもあり複雑であった 。
150ページほどの短い物語なので、1時間もかからないで読める。
是非、皆さんにも、ほんの少し時間を割いて読んでもらいたいと思う。
小説内でいう《くすんだ緑の制服の軍》とはナチスドイツ軍、《赤い星の部隊》とはソ連軍であると察しがつく。
ソ連は、ナチスドイツからユダヤ人を解放した
女の子は、その後<ピオネール>に選ばれ、国の機関誌の表紙を輝くばかりの笑顔で飾ったとある。
最高の名誉ということだ
<ピオネール>の正式名は【レーニン記念全ソ連邦ピオネー】といって、旧ソ連の共産主義少年団のこと。
ウクライナの戦争のこともあり、どう考えていいものか。
わたしは、ウクライナの戦争が始まった後に読んだので、出版直後に読んだ方とは違う感想を持ったかもしれない。
単純に過酷な戦争中での愛の物語で
感動ものだと言えるのか
私には分からない
もの悲しさと
複雑な思いのみが残った