『ハーメルンに哭く笛』

探偵・朱雀十五の事件簿2

藤木 稟 著 角川ホラー文庫

 

【内容(「BOOK」データベースより)】

昭和10年9月。上野下町から児童30名が忽然と姿を消し、翌々日遺体となって発見された。そして警視庁宛に「自壊のオベリスク」と書かれた怪文書が送りつけられる。差出人はTとあるのみ。魔都を跳梁するハーメルンの笛吹き男の犯行なのか。さらに笛吹き男の目撃者も、死体で発見され…!?新聞記者の柏木は、吉原の法律顧問を務める美貌の天才・朱雀十五と共に、再び奇怪な謎に巻き込まれていく。朱雀十五シリーズ、第2弾。

 

ハーメルンに哭く笛

 

 

前作以上に怪奇色強い物語になっている。

昭和10年9月6日、30人の児童が誘拐され、身代金の要求もないまま遺体が見つかる。

上野谷中の墓地に児童の遺体が並べられていた。

それも、それぞれに違う部分が損壊された無残な有様だった。

無くなっている腕が左右合わせて23本、足が12本、胴体が3つ、頭が2つ。

人体の欠損部分は見つからなかった。

その翌日、怪文書が届く。

内容は『自壊オベリスク』とだけで、差出人はTとある。

 

ドイツの童話『ハーメルンの笛吹き男』(実際にあったことの伝承ともいわれている)のように子どもを笛でおびき出して連れ去ることになぞらえて、この猟奇殺人犯を『ハーメルンの笛吹き男』と人々は言った。

また墓地の死体が見つかった同じころ、墓地近くにある研究所が放火により焼け落ちた。

研究所の津田理学博士と二人の助手が失踪していた。

この二つの事件は、前作(『陀吉尼の紡ぐ糸』)登場の馬場刑事が担当する事になる。

 

その後、高い木の上の枝に両脚のない遺体が座っているという奇怪な殺人事件が起こる。

遺体は歓喜の中に陶酔しているかのような笑いを作っていた。なんとも恐ろしい。

そして、またもや怪文書。

今度の内容は『風見鶏』とだけ、差出人はTとある。

 

いったい30人もの子どもを一遍に連れ去ることなどできるのか。

どうして遺体の部分を切り刻み、墓地に並べるのか。

またどのような方法で高い木の上の枝に遺体を座らせることができたのか。

火災のあった研究所はいったい何を研究していたのか?

猟奇殺人事件と火災とは関連があるのか?

事件は混迷を極めていくことになる。

 

 

内容的には、シリーズ1作目よりも2作目の方がSF色強く面白かった。

またサーカスの見世物も出てきて、おぞましい姿形の怪物ウロトフタスロー

興行的には人間であるとしているが、実際にはそうではないとサーカスの団長は言う。

果たしてこの生き物は?

それに関連して、朱雀が柏木に『パラケルスス』なる人物と『ホムンクルス』の説明をするくだりがある。

SF、ホラー好きな人は、この『パラケルスス』の名を聞くと、ゾクゾクするほど期待する人も多いのではないかな。

島田荘司や皆川博子も『パラケルスス』の『ホムンクルス』のことを書いていたように記憶しているけど、違ったかな?

 

というわけで、読了。

 

エピローグの最後の最後で、落ち込んでいた読者を喜ばせてくれて胸キュンに…

わたしは、最後から3行目の柏木が思わず吐き出した言葉に感激だった。

あの嫌味で意地悪な “朱雀十五” が大好きになれるよ。

作者に<いいね>たくさんあげちゃうよん。