『あの日、君は何をした』
まさき としか 著 小学館文庫
軽い気持ちで読み進めれば火傷するかもしれない
【内容(「BOOK」データベースより)】
北関東の前林市で暮らす主婦の水野いづみ。平凡ながら幸せな彼女の生活は、息子の大樹が連続殺人事件の容疑者に間違われて事故死したことによって、一変する。大樹が深夜に家を抜け出し、自転車に乗っていたのはなぜなのか。十五年後、新宿区で若い女性が殺害され、重要参考人である不倫相手の百井辰彦が行方不明に。無関心な妻の野々子に苛立ちながら、母親の智恵は必死で辰彦を捜し出そうとする。捜査に当たる刑事の三ツ矢は、無関係に見える二つの事件をつなぐ鍵を掴み、衝撃の真実が明らかになる。家族が抱える闇と愛の極致を描く、傑作長編ミステリ。
一 部
2004年3月。女性連続殺人犯が逮捕されたが警察署から逃げて3日経った。
自転車を盗み逃げているところが防犯カメラに映り、警察が追っていたところ午前2時頃、無灯火で自転車に乗った不審者を発見、15歳の男子中学生であることが判明、中学生は逃走し駐車中のトラックに衝突死亡した。
後にその中学生は事件とは無関係であったことが分かる。
息子を亡くした水野いづみの狂ったような絶望ぶりが描写される。
夫にも18歳の長女にも暴言を吐き、日常生活も廃人のように荒んで家族は手の打ちようがなく家庭は崩壊していった。
二 部
そして、15年後の2019年。
アパートの一室で24歳の女性が死んでいるのが発見される。
鈍器で殴られた後、紐状のもので首を絞められていた。
28歳の新人刑事と変わり者と言われている30代後半の刑事二人が事件を捜査する進行になる。
二部になると、まるで違うストーリーになり、これは一部とどう繋がるのかが気になり読み進めることになる。
本のタイトルの『あの日、君は何をした』は、一部で死んだ少年が夜中の二時に外出をしてなぜ警察から逃げたのか。
いったい少年は何をしていたのかというこのタイトルがこの本の謎解きそのものとなっている。
一部と二部の事件が一つの線に繋がることは想像がつく。
そういう構成の場合は、過去と現在が複雑に絡み合い進行していくのが常だが、そこのところはそれほどの複雑さはなく絡み合った糸をほぐしていく過程も物足りない。
いくつかの意外性は作ってはいたが、それも驚かされるものでもなかった。
結末も私はあまり好きではない終わり方だった。
この作家は初めて読んだが、親子の関係をテーマに書いているものが多いらしい。
この本に関して親子の愛情を良心的にとる読み手と、結局親も子も何をしたのかとそこに注目する読み手もいると思う。
わたしが読後思ったこと。
此の親にして此の子あり
わたしは、ちょっと皮肉めいて意地悪な取り方をした。
異論がある人もいるかも…