『たったひとつの、ねがい。』
入間 人間(いるま ひとま) 著 メディアワークス文庫
この表紙だけとったら、絶対わたしはチョイスしない小説。
ところがどっこい。この本も私の好きな叙述ミステリーらしい。
さて、どんなだましを食らうか楽しみに読むことにする。
【内容(「BOOK」データベースより)】
彼女と知り合ったのは学生時代だった。互いに心を通わせてる、そのことすらも確認しなくても分かる日々。そして今日、俺は思い切って結婚を彼女に持ち出してみた。下手に出て、お伺いしてみる。恐る恐る顔を上げて反応を確かめると、非常に希少なものが拝めた。彼女がにたにたと、ともすれば意地悪く見えるほどにやついている。つまり、良いよ、ということ?やったぁ…と、思ったその瞬間。あんな、あんなことが起こるなんて。それから、俺のもう一つの人生は始まった。
プロローグ 『悲劇と復讐の始まり』
拓也 には学生時代から付き合っている彼女がいた。
「あの、この調子で何年か経ったら、結婚してくれますかね」とお伺いをしてみた。
彼女から承諾を得たその瞬間。
とんでもないことが起きた。
そして、物語は想像を絶する展開となっていく。
ここまでがプロローグ。
ここから展開した後のストーリーとなる。
一章 『魂の牢獄』
二章 『車輪の旋律』
三章 『正しかった』
四章 『く歩』(『歩く』ではないことに意味アリ)
五章 『車輪の戦慄』
エンドロール 『悲劇と復讐の始まりと終わり』
上記のような章題になっていますが、ストーリーの内容については書かない方がいいでしょう。
というのは、表紙の絵柄とあまりにも内容にギャップがあり、それは読んで初めて驚かされるからです。
可愛らしい少女のイラストに、10代の子が読むような明るく楽しい小説と思いきや、まるで違います。
まあ、<復讐の物語>ということくらいは言ってもいいかな。
読後の感想はというと、これも書けません。
書くとなると、形容詞を羅列することになって内容がバレるからです。
ただ、この本面白かった?と問われると私は何と答えるか。
<面白くなくもなかった。>と答えます。
<面白かった>と答えるのが憚られるからです。(倫理観・道徳観故)
なぜこのような言い方をするのか、興味を持たれた方はぜひ読んでください。
258ページの薄い本ですから、スイスイとあっという間に読めますよ。
また、この本は読み終わってもすぐに本を閉じないでください。
エンドロールで、いかに読者が騙されていたかが分かります。
それなので、読後必ず検証のために <プロローグ >に戻ってください。
読者はどこで間違ったのか確認してください。
本文中、何気なく読んでいた部分が多くの伏線であったことが確認できます。それが後にすべて回収していきます。
細かいところも 完全に トリックが理解できると、この物語がどれほど良くできていたかが分かります。
私は読後すぐには 駄作もいいとこだ と思いました。
ところが詳細に検証していくと実に見事に伏線を作っていたことに驚かされました。
多分、駄作だと思った人は細かいところの伏線を、完全に消化しきれていないのだと思うのです。
簡潔な文体で、ともすればぶっきらぼう。それでいてユーモラスでときどき吹き出しそうになるところもあります。
そしてばかばかしい。(; ^ ー^)
この ばかばかしい がいいのです。
表紙の少女がカレーを屈託なく食べるイラストとユーモラスな文体にも拘わらず、物語があまりにも違い過ぎる。
この ギャップ がこの本の強烈な特徴です。
『たったひとつの、ねがい。』の意味にゾゾゾっとします。