『黒い家』

貴志 祐介 著 角川ホラー文庫

 

 

【内容(「BOOK」データベースより)】

若槻慎二は、生命保険会社の京都支社で保険金の支払い査定に忙殺されていた。ある日、顧客の家に呼び出され、期せずして子供の首吊り死体の第一発見者になってしまう。ほどなく死亡保険金が請求されるが、顧客の不審な態度から他殺を確信していた若槻は、独自調査に乗り出す。信じられない悪夢が待ち受けていることも知らずに…。恐怖の連続、桁外れのサスペンス。読者を未だ曾てない戦慄の境地へと導く衝撃のノンストップ長編。第4回日本ホラー小説大賞受賞作。

 

黒い家

 

 

 

この作家の『クリムゾンの迷宮』『天使の囀り』を読んであまりのインパクトにしっかりと記憶されている。
この『黒い家』というタイトルだけでも、恐ろし気で読もうかどうしようか、読みたいけれどこわーい。
というわけで躊躇していたが、この作家の一番の話題作なので、やっぱり気になって読むことにした。

昭和生命保険会社京都支社に勤める若槻慎二
クレームが入り、若槻が指名されて菓子折りをもってある家に訪問。
そこで、そこの子どもの首つり死体の第一発見者になってしまった。
状況や検死によってどうやら自殺らしい。
死亡保険金の請求がされた。
その家の主人の不審な態度に保険金目当ての他殺ではないかと疑い、上司に申し出て独自に調査することになった。
そこからの展開が、保険会社の裏事情などリアルな現実も踏まえた物語が進行していく。

読み終わり思ったこと。



中盤まではじわじわっと来る気味悪さ!
後半は膨れ上がって襲ってくる恐怖!

 


夜に読んでいて、そろそろ寝る時間なので本を閉じようと思っても、恐怖の真っただ中でやめたら余計怖い。
結局最後まで読んでしまった。怖かった~

サイコパスのような犯罪者の心理はどのようなものなのか。
平凡な人間性格異常者精神病者との境界は曖昧模糊であると小説内では言っている。
警察側と弁護側とでは、それぞれの思惑があるから、依頼を受けた鑑定士にバイアスがかかる場合もある。
極端な言い方をすると、百人の鑑定人がいれば百の違った精神鑑定がなされる可能性があると言っている。
この言葉が、とても胸に響いた。
私もいつも思う。鑑定結果は信用のおける正しいものなのか。
専門家であっても複数人の鑑定が一致しないのなら、それは信用できないように思ってしまう。
治療により精神病は病状をコントロールできることはある。
サイコパス<精神病質者>であって、持って生まれた人格障害なので治療でよくなることはないはず。
ここで鑑定を間違えると、犯罪者の収容する場所が違ってくる。
サイコパスを間違った鑑定で精神病とした場合、閉鎖病棟での治療でよくなったように見せかければ、出所したらまた罪を犯すことになる。
小説内でも、3人の心理学者が違う見解をぶつけるシーンがあるが、なかなか興味深いものがあった。

この作家の本は3冊しか読んでいないのだが、私の好みの順位をつけるとすると以下の通り。

1位 『クリムゾンの迷宮』
2位 『天使の囀り』
3位 『黒い家』


他の作品もそのうち読んでみようと思っている。
怖いもの見たさってあるものね。