『夜のエレベーター』
フレデリック・ダール 著 扶桑社ミステリー
“フレデリック・ダール” はフランスのミステリー作家。
サン・アントニオ警視を主人公にしたミステリーが大ヒット、180冊をこす人気シリーズだそうです。
でも、日本では翻訳は『フランス式捜査法』1作のみ。
というのは、あとがきによるとダジャレや新造語や隠語や誇張された比喩や下ネタや文学的引用などを駆使している文体でほとんど翻訳不可能らしいです。
この作品は単発ものです。
【内容(「BOOK」データベースより)】
「ぼく」は6年ぶりにパリへ帰ってきた。ともに暮らしていたママが死んでしまい、からっぽのアパートは孤独を深めるだけだった。だが今日はクリスマス・イヴ。にぎわう街の憧れの店へ食事に入ると、小さな娘を連れた美しい女性に出会う。かつて愛した運命の人に似た、若い母親に……彼女が思いもかけないドラマへと「ぼく」を導いていく! 「戦後フランス・ミステリー界最高の人気作家」と称されるフレデリック・ダールが贈る、まさに予測不能、謎と驚きに満ちた名品。
登場人物は、たったの5人。
主人公はアルベール・エルバン、“ぼく”という一人称で語られていく。
4年前にママが亡くなり、葬式には出なかったアルベールは6年ぶりにママのいないアパートに戻ってきた。
その日は、クリスマス・イヴ。
ママのいないアパートに居られなくて、あるレストランに入った。
そこで知り合った美しく若い母親と3,4歳の醜い女の子の母娘に出会い、彼女の家に行くことになる。
そこで、アルベールは、謎多き出来事 に巻き込まれる。
という、ごく単純なストーリーだけれどややこしい展開。
夜遅くに乗る、誰もいないエレベーターって、ちょっと恐ろしい気がする。
だから、題名からして、エレベーターで惨殺が…
そんな本だと思って、こわごわ読んでいたら、ぜーんぜん違った。
もちろん、人は殺されるんだけどね。
寝る前に少しだけ読むつもりが、200ページちょっとなのと、活字が大きくて行数が少ないので短時間で読了。
読み終わり、すぐの感想は、
これで終わり?!!
なんじゃこりゃ!
でもね、何か 不思議な余韻 が残る。
全編を通しての、淡々とした流れと虚無感。
孤独な男がとる行動は予測不能で複雑、そして滑稽。
本当に、不思議感が漂って離れなくなる。
オチを期待して読むと肩透かしに合うかもしれない。
でも、サスペンスたっぷりで皮肉とひねりの効いたフレンチ・ミステリーは大いに楽しめる。
ブラック・ジョーク的結末に、この作家の略歴を読むと、たぶん彼らしい作品なんだと思う。
暇なときに、ちょいと手に取る小話と言ったところかな。