『殺人鬼-逆襲篇』

綾辻 行人 著 角川文庫

 

B級ホラー映画には続編がつきもの。1回で終わるなんてこと絶対ないよね。

 

ということで、この小説も 『殺人鬼-覚醒篇』 に続いての 『殺人鬼-逆襲篇』

 

ますます殺人鬼の殺し方が残虐性を帯びてきた続編です。

そしてまたもや、作家のいたずらというべき仕掛けがあるという。

 

これは読まないわけにはいかないよね。

 

 

【内容(「BOOK」データベースより)】

伝説の『殺人鬼』、ふたたび。

双葉山の惨劇から三年、最初にそれと遭遇したのは休暇中の一家。

正義も勇気も家族愛も、ただ血の海に消えゆくのみ。

そしてそれは山を降り、麓の街に侵攻するのだ。

病院を、平和な家庭を、凄惨な地獄風景に変えていく。

殺す、殺す、殺す…ひたすら殺戮を欲する怪物に独り立ち向かうのは、不思議な“能力”を持った少年・真実哉。

絶望的な闘いの果てに待ち受ける、驚愕と戦慄の結末とは!?

 

殺人鬼-逆襲編

 

 

最初の被害者は家族3人のドライブ中、あの殺人鬼が山から下りてきて、めちゃめちゃに殺された。

 

殺し方はここに書くのはやめておこう。

 

次の被害者は、双葉山で殺人鬼に襲われ重傷を負って入院している男、白河誠二郎。

 

父親の惨状は信じられない恐ろしいものだった。

 

その被害者の息子 “白河真実哉” 9歳には特殊な能力があった。

 

ある時、突然に意識を失うことがある。

 

その時は、自分以外の人の目になり、その人が見たものを自分が見ているように見える。

 

今回は、深夜父親が殺されかけているのを、父親の目で見ているようにして見えた。

 

彼は14歳(中学生)の姉 “愛香” に話しても、いつもまともに受け取ってもらえないので、一人で病院に出かけた。

 

そこで見たものは、父親の凄惨な光景だった。

 

父親は半年前、昨年の9月。友達2人と双葉山に登った。

そして、あの殺人鬼に襲われたのだ。

 

一人は死に、ひとりは戻ってきてから気が狂い、父親は頭に重傷をおい、回復不能の植物人間。

 

その病院内で、看護婦や事務職の男も殺された。

 

また父親が殺された日に、冒頭の被害者3人の家族の生き残った母親が車の炎上で大やけどを負っているのが “真実哉” には見えた。

 

そして、父親と同じ病院に、男女の区別もつかないほどの状態で搬送されていたのだ。

 

 

結局、9人が無残に殺された。

 

残酷な殺人シーンは滑稽さが私には感じられる。

殺人鬼に襲われながらも、セリフを吐く被害者。

これがまた、コメディーになっている。と思うのは私だけか…

 

例えば、冒頭の家族3人。

父親も子どもも無残に殺された。

子どもが肉片と化した状態のものを殺人鬼に“喰え”と母親の口の中に突っ込まれる。

母親は、あたしの子の肉を食べるの?これを?

そういえば、ちょっとおなかが減ってきたような気もするわと母親は思う。

 

出発前に軽く食べただけだもの。

ねえ、あなた。町に入ったらどこか喫茶店に寄るんでしょ。

そこで何か食べましょうよ。夫はもう死んでいるのを知っているのに。

 

母親が子どもをぐちゃぐちゃにされて狂気に走ったとしても、母親のこの心の声は笑えるよね。

また、口に子どもの肉を突っ込まれ、あらあら、もう夕飯なの?お世辞にもおいしいと思えないけど、ちょっと生臭いわねと言いながら食べた。自分の子どもだと知っているのに。

 

なんじゃこれは、笑えるでしょ。

 

だから、残酷さはあまり感じないのよね。

 

読了して、この本の大半は殺人の描写ばかり。

途中から飽きてきた。

 

ストーリーは、特別興味をひくものでもないし、肝心の最後の仕掛けにはがっかり。

 

仕掛けというより、オチといった方が当たっているかな。

 

いくらなんでも、非現実的であり得な~ぃ!…

 

1作目の 『殺人鬼-覚醒篇』 も、無理筋な仕掛けだったけど、それでも楽しめた。

 

今回は、“ちょっととそれはないでしょ” といったところ。

 

まあ、綾辻さんと一緒に遊ばせてもらったことで良しとするか。