『キリング・フロアー』
リー・チャイルド著 講談社文庫
ジャック・リーチャーシリーズは本当に面白い。
先に6作目、5作目と読んでこんなに面白いのなら、1作目から順に読んでみようと思いました。
全く無名の中年作家が彗星のごとく現れ、処女作でアンソニー賞の最優秀処女長編賞を取り、欧米の文学界ではちょっとした事件になったとあとがきにありました。
この作家は英国人ですが、アメリカを舞台にしてこのシリーズを書いています。
英国を舞台にしたのでは書きえないもっと広がりのある、開放的なプロットを作りたかったと言っています。
リーチャーが活躍する話は、英国では起こりえないということです。
【内容(「BOOK」データベースより)】
ジャック・リーチャー。元軍人。仕事も家族も、友人さえも持たずただ一人放浪する男。
伝説のギター奏者の面影を求めて訪れたジョージアの田舎町で身に覚えのない殺人容疑をかけられ、刑務所で殺されかかった彼は、自分を狙う何者かの意志を察知する。
刊行と同時に全米マスコミの絶賛を浴びたアクション巨編。
殺されたのはもう何年も会っていない、財務省で通貨偽造を調査していた実の兄だった。
おれがこの手で犯人を挙げる、誰がなんといおうと。
容疑が晴れ釈放されたリーチャーは女性巡査ロスコーと共に事件を追い、町を覆い尽くすある巨大な陰謀を明らかにしていく。アンソニー賞最優秀処女長編賞受賞作。
リーチャーは、ジョージア州の田舎町のダイナーで真昼の12時にいきなり逮捕された。
それも殺人容疑だ。
ミランダ通告され権利を理解したか?と問われても、彼は答えを返さなかった。
何度か聞かれたが、彼は黙っていた。
長年の経験から、何もしゃべらないのが最善の策であると悟っているからだ。
そして彼のわかっていることがふたつ。
第一に、全く身に覚えがないことなら、警察といえども証明することはできない。
第二に、私は誰も殺していない。
「この町では、殺していない。それに、もう長いこと人を殺していない。」←いいセリフだ~
冒頭部分から、インパクトのある話から入るのが小説の常套手段だわね。
そして、彼は留置場から監房に移された。
数日後の釈放までの間、未決囚が入れられる拘置監房だと聞かされていた。
だから、オレンジの囚人服は着なくてもよいと……
ところが、掃除夫に「とんでもねえことになっちまったな。そこは終身刑の囚人が入るとこだよ」と言われた。
はたして、リーチャーの運命やいかに……
刑事部長やほかの警察官たちはリーチャーが無実だということを薄々感じていたが、警察署長のモリスンが、何やらリーチャーを何としても犯人に仕立てたい雰囲気。
リーチャーをどこかで会ったことがある気がするとも言っているので、ここは伏線だなー。
監房で、リーチャーは3人の囚人たちに殺されかけた。
強いリーチャーは、当然やっつけたよ。
そして、出所した。
その後、リーチャーに殺人容疑がかけられた、その殺された男は、何とリーチャーの兄であった。
何という偶然。
リーチャーがこの小さな田舎町マーグレイヴに来たのは、何年か前に兄からもらった絵葉書にあったギター奏者ブラインド・ブレイクの死んだ場所がここだったのだ。
それを確かめに来たのが理由。ブラインド・ブレイクはたぶん殺されたのだとリーチャーは思っている。←これは伏線だな~
リーチャーの容疑を濃厚にしたのはマーグレイヴ警察署長モリスンだった。
彼は、殺人現場でリーチャーを見たといったためだ。
だが、リーチャーのアリバイは完璧に証明された。
そして、その警察署長モリスンと妻は、自宅で残酷に殺された。まるで見せしめのように。
釘で磔のように壁に打ち付けられていた。そして喉はかき切られて……
睾丸は鋭利な刃物で切り取られていて検死解剖で妻の胃からその睾丸が見つかった。
食べさせられたのか~すごい残酷。
その警察署長の後任は町長のティールが代行することになった。
どうやら、この町は実力者クライナーによって支配されているらしい。
この町長もクライナーの息がかかっている。
今まで、殺人事件など1件もなかったのに、この4日間で4人の殺人があった。
そしてリーチャーは言う「もうすぐ5人目の被害者が出る」と。
いったいこの町で何が起きているのだろうか。
リーチャーは、鋭い頭脳で選り分けた。
警察内の信頼できる人間で確実なのは、新任の刑事部長フィンレイと女性巡査ロスコ―の2人だけだと。
フィンレイは黒人刑事、この署はフィンレイがただ一人の刑事なのだ。それも名ばかりの…。
彼は優秀であるにもかかわらず、まともな仕事はさせてもらえていない。
これも、町のことを知らない新任に秘密を暴かれないためのものだと、リーチャーは考えた。
そして、3人は捜査を開始した。
女性巡査のロスコーの家にリーチャーは泊まらせてもらっている。
(実は、リーチャーはロスコーを一目見たときから好きになっていたw)
二人が留守にしている間に、4人の人間が家に押し入った。
二人を、あのモリスン警察署と妻にしたように惨殺するつもりだったのだ。
リーチャーは言う「私を葬るつもりなら、四人の田舎者じゃ足りないよ」と。
さぁ、ゲームがスタートした。
面白くなってきたよ~ん。
リーチャーの、殺された兄は偽造防止策を担当していた財務省捜査官だった。
それも優秀な捜査官。
通貨の偽造が絡んでいるのか~
ますます面白くなってきた。
ここからは、ネタバレになるので捜査経過は省略。
悪い奴らは10人らしい。
リーチャーは、ひとりひとり始末していく。
それはそれは痛快だ。
10人の内9人はわかったが、ひとりがわからない。
どんでん返しでその一人が意外な人物だった。
それでも、10人中7人までやっつけた。
最後、敵の陣地では3人。一人は簡単に始末できた。
残るは大物二人。
リーチャーは、とても作戦家なので、好機が来るのを待つのも厭わない。
落ち着いているね~
そして好機はやってきた。敵陣に乗り込んだ。
戦い方がすごいよ、まるで戦場だね。
臨場感あふれる描写で、ページ繰るのが忙しかったわ。
映画にしたら、すごいスケールの映像になるよ。
彼が、この小さな田舎町に来たのは、兄の絵ハガキに書いてあった盲目の黒人ギター奏者ブラインド・ブレイクの地を訪ねて、彼の死の真相を知りたかったからだ。
これが、この事件につながっていた。
いや~、うまい構成だな~
作者さんお見事!!!
そしてリーチャーは、また放浪の旅に………
次作は『反撃』だ。
楽しみだな~