「早春 王漢陽に寄す」  李白

 

   李白  唐 701〜762

       杜甫と並んで唐代第一の詩人

       詩仙・酒仙の称あり

 

 

    聞道く(きくならく)春還る((かえる)と 未だ相識らず

    走きて(ゆきて)寒梅に傍うて(そうて)消息を訪う(とう)

    昨夜 東風 武昌に入り

    陌頭(はくとう)の 街頭の 楊柳 黄金の色

    碧水は(長江は)浩浩(こうこう)雲は 茫茫(ぼうぼう)

    美人(きみ)来らず 空しく断腸の思い

    豫め靑山一片の石を払いて

    與君(きみと)連日壺觚(こしょう)に 酒壺と盃をあげて 醉わん

 

 

  聞くところによると 春はもう来てるとのことだが まだ顔見知りではない

  庭の寒梅にも寄り添って 消息を聞いてみた

  昨夜 春風が 武昌に入った

  街の柳は 黄金色に輝いた 春は来た

  長江は浩浩果てもなく流れ 雲も茫茫どこまでも続いている

  君は来ない 空しき 断腸の思い

  いざあらかじめ 靑山一つの石を祓い清めて

  君と毎日宴をし 酔うんだ

 

  春は来ないし 君も来ない 

  昨夜 武昌に春風が来た 街の柳も黄金の色

  長江は果てしなく流れ 雲もどこまでも続いている

  君は来ない 思いは空しく果てがない

  君と毎日宴をし 酔い明かすために

  靑山一片の石を祓い清め 待っている

  

 

 

 靑山一片の石と共に君と酔い明かす とは 早春という季節の中で

 寒梅・楊柳・風・黄金色・長江・雲・青山・石の「自然」の真只中で

 友と共に飲み明かす ということだ