気狂い?の那美さんに『憐れ』の表情が  「草枕」

 

  那美さんは「強いられて」嫁ぐ

  倒産する 実家に戻る

  「薄情」「キ印」と呼ばれる

  修行僧から文を貰う 寺での読経中に行って抱きつく

  夜逃げする修行僧

 

  従兄弟が召集される 「死んで御出」「生きて帰っちゃ外聞が悪い」

  一文無しになった元亭主の満州行きに「お金を拾いに行くんだか死にに行くんだ

  か?」

  財布を渡す

 

  従兄弟の満州出征への見送りの汽車で 離縁された亭主を見つける

 

  この時の那美さんの表情に『憐れ』があることに

  画工漱石が気づくのをもって『草枕』は終わる

 

  それまでの画工漱石は 那美さんを

 

ー 軽侮の裏に 何となく人に縋りたい景色が見える

  人を馬鹿にした様子の底に 慎み深い分別がほのめいている

  才に任せ 気を負えば百人の男子を物の数とも思わぬ勢いの下から

   温なしい情けが我知らず湧いて出る

  どうしても表情に一致がない

  悟りと迷いが一軒の家に喧嘩をしながらも同居している体だ

  この女の顔に統一の感じのないのは 心に統一がない証拠で

  心に統一がないのは この女の世界に統一がなかったのだろう

  不幸に圧しつけられながら

  その不幸に打ち勝とうとしている顔だ 不幸せな女に違いない

 

  という感想を持っていた

 

 

  『則天去私』を目指している漱石は 『草枕』で『則天去私』にも問題がある

  ことを那美さんに託している

  天(自由・非人情)に付くべきか? 世間(人情)に付くべきか?

  不幸せな女 とは 自分のこと漱石自身のこと そして我々のこと?

 

  漱石は一生死ぬまで 「不幸せな自分」と向き合う 

 

  『則天去私』の統一感を得るために