「さざ波の音近く、、、、』松尾芭蕉 大津なりける湖仙亭に行きて

 

 「さざ波の音近く、三井の鐘 聞こゆるあたり、暫し(しばし)旅の宿りを求む。

 主(あるじ)は高橋瓢千という。

 志 風雅を好み、身 貧のいとはず。

 風雅は 我が好むところにして、貧は 我が友也。

 栖(すみか)は 膝を入るのみにして、狭きうれへ有りといへ共、

 馬車(うまくるま)の通ひすぎにあづかざる悦び有り。

 足らざるを楽しみて、淋しきを又友とす」

 

       

    此の宿は水鶏(くいな)もしらぬ扉(とぼそ)かな  (笈日記)

 

ーー水鶏が鳴くことを『叩く』ということから、こつこつと戸を叩いて訪れる意に掛けて、

  その水鶏さえも戸を叩かない、すなわち誰もめったに訪れてこない意味をこめた。

  俗界を遠く離れた琵琶湖の水辺の閑居を賞したのである

 

 

                        「芭蕉全発句」 山本健吉

 

 

 

   何となくあの映画「山椒大夫」の母田中絹代と子供たちとの舟での悲しい決定的別れのシーンを思い出す

   靄でけぶった 侘びしい昔の琵琶湖、、、、、