ヒロアカ劇場版最新作は、幕の内弁当(蟹の味噌汁付き)だ | 梯子ダルマ オフィシャろうブログ

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【ネタバレ有り】


「ヒロアカって面白いじゃん?あの個性が強すぎて身体に負担がかかる感じとか、体育祭で麗日が岩浮かす技とか、合宿でダークシャドー暴走しちゃうとことか、オールフォーワン戦とか、アンブレイカブルとか」みたいな、ヒロアカの好きなところを挙げるうえで確実に上位に食い込むであろうシーン、そのエッセンスをほぼ全て徹底的に盛り込んだ上で、原作者の「最終回ボツ案」という激アツの出口に全速力で突っ込んで、ドアをぶっ壊したような映画。


普通ならヴィランが出現し得ない島で、都市部のヒーローとの隔離。状況設定が素晴らしい。少年少女との交流も含め、このあたりの軸のプロットは合宿編を参考にしているのでしょうか。


オールフォーワンもどきのヴィラン「ナイン」たち。ヴィラン連合のように意志を持って集った集団であることは、なかなか最短では描写しきれず。ここのスクワッド感はあまり魅力は感じなかった。


離れの島に籠城。入り口を1つに絞り、敵を叩く。『アベンジャーズ /インフィニティ・ウォー』さながら!敵はマインドストーンではなく男の子を奪いにくる。


一撃目に青山・(疲弊した)八百万を持ってくるあたり、うまい配置。とくに後先を考えぬ最大出力のネビル レーザーは映画映えしますね。


マミー戦はもう少し上鳴を活かせれば良かったかもだが、そこはしっかり「避雷針」で大活躍。ここもスポットライトのバランスが優れてる。最初の襲来で尾白を活躍させてる辺りも良いですね。


キメラ戦は、「レシプロ」のスピード感、すっかり忘れかけていた梅雨ちゃんの毒設定を補いつつ、【神野での爆轟救出作戦】×【アンブレイカブル】という激アツパフェ状態。この辺から「なんだこの映画?少年漫画の神様が作ってんのか?」という気持ちになってくる。


スライス戦は言わずもがな【ダークシャドーの暴走】。ただそこを無闇になぞらず、障子の腕を切り落とされるという、原作におけるショッキングなトリガーもしっかり抑えていて偉い。


序盤のナイン消耗戦は、仮免試験における麗日×瀬呂のコンビ技。まぁ〜瀬呂くんが映画で映える映える。動きはもちろん、攻撃とサポートに大活躍で、その上みんな大好き「ダメージによるマスクオフ」まで。カッコ良いな!


オールフォーワン戦を彷彿とさせるラストの戦いに、掟破りの「デクによる個性の継承」。ファンなら一度は妄想したみたいなレビューが散見されたが、僕は正直考えたことなかったので、めちゃくちゃ驚いたとなれば良かったが、特典のコミックを何気なく一瞬チラ見してしまったせいでなんとなく展開は読めてしまうという不覚もうすこし驚きたかった(涙)


前髪ガン上がりの瞳孔ギラギラデザインは興奮しましたね。「本気になったら金髪になる」という、パワーアップ演出元祖・ドラゴンボールにまで感謝の念が及びました。


デクと爆轟、最初のデトロイトスマッシュは、まさに2人が最初に戦った戦闘訓練で放つ「上空(上階)への一発」を思わせる。規模が段違いですが。


最高規模の鬼作画バトルを、BGMのみで見せる潔さも凄い。爆発音が聞こえない分、デク の魂のすり減る音が聞こえてくるようで。


設定的にどう落とし前付けるのか、といえば、そりゃ必殺の「神秘の奇跡」と「覚えてない」なわけですが、そこにも「完全に譲渡する前に気絶したから?いや」と論理的な前振りを入れておくあたりも「なんだこれ油断も隙もねぇな」と思ったりしました。



極め付けに、かつてオールマイトから貰った言葉「君はヒーローになれる。」である。正解を出し過ぎなのではないか。


正解を出しすぎる、というのはつい先日『スカイウォーカーの夜明け』で味わった感覚でもあるが、42年の集大成と放送中のアニメの劇場版では状況も変わってくる。ヒロアカは「こんな作品の絶頂期に正解ど真ん中をぶつけられちゃう」強さである。その上で、決してここでしか見られないもの(Wワンフォーオール)があった。


また、他の作品が「スピンオフ」的な論調の劇場版を制作しがちな中で、前作も今作も、ヒロアカは劇場版の扱いに愛がある。もちろん作者総監修ということもあるが、それにしたって設定やら何やらが忠実に原作発のものだし。


今作は特に、明らかに今放送中のアニメより時系列先なのが、その証拠でしょう。物語る上で最も適したタイミングを考えている。徹底的に真摯で、ちゃんとしている。ラストの展開を含め、ベストのタイミングは原作の時系列だった。


セリフ・シーン・ストーリー・キャラクター原作の良さを徹底的に引用・再構成・オーバーホールして、島という箱庭に詰め込んだ、ヒロアカ幕の内弁当。もうそれだけで美味しいのに、蟹の味噌汁付きである。カニの濃い味噌の。お腹いっぱい。ご馳走様でした。