仲縄 | 梯子ダルマ オフィシャろうブログ

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ラジオネーム:梯子ダルマとして深夜ラジオにメールを送っていた、現在放送作家として働く26歳の男が書くブログです。

思ったことを書いて、賛同・誹謗中傷などの反応がきて、コメントがきっかけで会話をしたり、そんな交流が嬉しいです。


方向音痴だ。

とてもだ。

初めて訪れる場所では、
スマホ片手に右往左往。

これは別に言うのは恥ずかしくないのですが。


こっちは恥ずかしい。
「都道府県」も、分からない。

もちろん、近畿地方だからこの辺り、とか、四国は高知と香川と…とか、は分かります。

ただ正直、白地図を見せられて、県の名前を当てはめていくのは自信がない。「島根と鳥取どっちだっけ?」ってあるじゃないですか。あれが全国に満遍なくある感じです。


高校の時から気付いていたのは、「勉強ができない」ということ。いかにも常識人の顔をして生きてきましたが、正直、スカスカです。

自分の住んでる国のことが分からないんです。勉強してきたことが、一切身についていない。テストの前の、短期記憶だけで乗り越えてきた。インスタント知識は、一回蓋を開けてしまえば、長くは保ちません。


日本地図の、都道府県名を全て埋めるテストをした。小学生の時だ。頑張って覚えました。

「よーい、始め!」

もしかしたら、ミニモニ。の『ロックンロール県庁所在地』が、頭を流れていたかもしれません。ガリガリ、と地図を埋めていきました。

答え合わせ。隣の席の人と、答案用紙を交換して、丸付けです。「隣の席」「丸付け」社会人となるだけで、全く使わなくなる単語もあるものですね。久々の再会にドキッとしました。

丸、丸、たまにバツ。隣の席の佐々木さんは、それほど頭が良いわけじゃない。丸、丸、丸。終了。横を見やる。

「すごいね。」
ありがとう、佐々木さん。
僕は満点でした。

嬉しい。10歳か、9歳か、その辺りの僕。周りに見られたら、なんて自意識を背中に背負うには、まだまだ休み時間に邪魔なお年頃。恥ずかしげもなく、ガッツポーズしたような気がする。

「あ、これ、違うわ」

自分の握りこぶしの上に、細い人差し指が重なる。佐々木さんの爪先は、日本の最南端に突き刺さっていた。

「仲縄」

なんてことはない、漢字を間違えたのだ。
それだけだ。

「惜しかったね。」

佐々木さんの声が聞こえる。
惜しかった?
ダメなのか、間違いなのか。
間違いだよね。
あ、え?満点じゃないの?

「お前が点低いからって」という言葉が、舌の中盤まで差し掛かった瞬間に、猛烈な自己嫌悪と、悔しさに襲われる。ミスった。恥ずかしい、もったいない、終わりだ。

つくづく、答案用紙を交換する、というシステムの素晴らしさに感服する。一人で採点していれば、十中八九、見て見ぬ振りをしただろう。国が違えば大麻は吸い放題だし、先生が違えば僕は地理の天才だ。

まぁ、全然、今方向音痴で、地図がわからないことの言い訳にはならないのだが。

ただ、今でも見知らぬ土地で方角が分からず、途方に暮れている時は、「惜しかったね」と声が聞こえる。爪が伸びた、細い人差し指だった。指し示すのは、行く先ではなく、