ヒロキくんGOじゃなかった話 | 梯子ダルマ オフィシャろうブログ

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ラジオネーム:梯子ダルマとして深夜ラジオにメールを送っていた、現在放送作家として働く26歳の男が書くブログです。

思ったことを書いて、賛同・誹謗中傷などの反応がきて、コメントがきっかけで会話をしたり、そんな交流が嬉しいです。

「ヒロキくん?ヒロキくんでしょ。病院で会ったわよね。ねぇ、ちょっと。こっち来て話しなさいよ。ねぇ!」

おそらくは何かしら、精神面に病を抱えた人だとは思うのだが、夜、家の近くのコンビニ前の交差点で、ほぼ毎日立ち尽くしている、能面のように無表情なおばさんがいる。

若い男性「ヒロキくん」を探しているらしく、僕が通るたびに声をかけてきたり、コンビニの中まで付いてきたりする。「ヒロキくんGO」状態。

ある時は横を通り過ぎながらチラッと僕の顔を確認して「違うじゃないのよ」と1人でブツブツつぶやきながら引き返したり、暗がりで顔がよく見えない場合は僕のことをヒロキくんだと疑わず「ちょっと。ねぇ。ねぇ。話しなさいよ。」と歩いて追いかけてくる。本当に、本当に怖くて、早足で逃げた。ズリの実が来たらおしまいだ。




ある日、近付いてきた時に「違います。」とハッキリ言ってみた。印籠のように顔面を掲げ、「ヒロキくんじゃないですよ」と。

すると、彼女は「そうよね。ごめんなさいね!」と笑って、謝って、元いた場所に戻っていった。


僕は分からなくなりました。


あまりにもその「ごめんなさいね!」が自然で、普通だった。例えば「落ちましたよ」とハンカチを手渡された人が「あ、すみません!ありがとうございます!」とはにかむような、そんな自然な、笑顔だった。


今までの、直前までのあの「決して分かり合えない異物感、異質な無表情」が崩れ、僕と同じ、普通の人と同じ笑顔が溢れました。「普通の人」って、なんなんでしょうね。普通って何だ?