日本は三連休でしたが、この土日は他大学の宿泊型実習を担当していましたので、大学の水産実験所におりました。
といっても、私は窓口教員ということだけで、水産実験所の先生には大変お世話になりました。
と、毎年感じるこの時期。
連休最終日といっても、ラボで飼育している種苗がいるので、
大学には出るのですが、それでも本日は午後は少し休みをもらいました。
妻が仕事に出ていたので、自宅には私と愛犬ハナだけ。
浴室を洗い、湯船に湯を張り、薬草入浴剤を入れる。
浴槽の窓からは夏に後押しされた叢が広がり、坂の上の公園には桜の木が見えます。
曇天に緩やかな風が吹く、木々が揺れているのをぼーっと眺めながら、目を閉じます。
ゆっくち、目を開けると、これまでの人生が白昼夢であって、
実は妻も子も、そしてハナも存在しておらず、私だけがこの家に
ぽつねんと存在している。
そんな、感覚に陥ることがあります。
昨日までの実習の最後に、学生の皆さんに問いかけたことがありました。
この実習ではウニの受精の実験をします。
雄雌のウニから精子と卵を取り出し、それを混ぜ合わす。
すると、精子は瞬間的に我先に、卵を目指します。
見事、卵の中に入れるのは、一番手の精子。
受精が成立すると、他の無数の精子はもう入れません。
ウニの受精の実験の場合、これを顕微鏡下でオンタイムで見れるわけですが
とても胸をうつんです。
基本的に人間も同じプロセスを辿ります。
このような海の生物の受精の映像を見ていると、いつも強く思います。
もし私が誕生する前。
かつて私に繋がるはずだった精子が、二番手になってしまい、
もう一方の精子が、卵と受精していたら。
その場合、今の私は、私でいられたのだろうか、と。
そう想うと、とても我々がこの世に、ワタシとして存在することは
スペシャルなことだと感じます。
このような私の率直の想いを彼ら彼女らには伝えました。
生命を、生物学を学ぶことの意義は、知識をためるだけでなく、受験のためではなく
こんなところにあるのかもしれません。