少し縁あって、シンバイオシス株式会社という企業を
SNS上でフォローさせて頂いているのですが、
そちらの研究員が書かれたnoteの記事をご紹介します。
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https://note.com/symbiosis17/n/nd5df05396bc2?sub_rt=share_b

以降の文章はラボの学生に向けて、今日の話題ということで
伝えた文言です。


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現1年生には本記事と類似した内容を講義(基礎微生物学)で触れたのですが、
母から子へのバトンと言う形で、出産を通して、お母さんは赤ちゃんに細菌を渡していることが知られています。
私も講義でこれをリレーに例えて"バトン"だったり、「お母さんからの贈り物」
と評し説明していますが、将来お母さんになりたい学生は勿論、
将来お父さんになりたい男子学生も、ぜひ読んでみてください。

一点補足を入れると、note本文にて
「今のところ、子宮で羊水が破裂するまではほぼ無菌状態なのではないかという見方が強い」とありますが、
確かに、これまでそのように解釈されてきました。

これ、Collado et al. 2016の報告では、羊水もしくは胎児中にもフローラが構築されている可能性が示唆されています。
赤ちゃんを抱く羊水。勿論、無菌だろうという「長らく常識であったことが」どうもそうでもないぞ、というわけです。


近年、抗生物質だけでなく"通常の風邪薬"でされ、腸内フローラを乱すことが分かってきました。
日本人は世界稀に見る、薬信仰国とも言えますし、すぐ病院は薬を処方します。
「抗生物質≠風邪薬」という認識で、一般風邪薬は抗生物質でないから、そんなに体に影響がない
なんて、イメージを持っている人も多いでしょうが、そんなピンポイントに特定の菌や
生き物(ヒト)に影響を与えないわけがない、と私は常々思ってきましたが、
近年の分析技術の亢進が、これらを明るみにしています。
要は薬は薬ということを仰りたいのでしょう。

かの江戸時代の医師杉田玄白はこう述べています。

「医療をしないことがほどよい医療である」と。
氏は多くの病は薬を服用しなくても、自然の力で治癒するものなんだ
ということを指摘しています。


このような話から、最後に皆に考えて欲しいこと。

JST(科学技術振興機構)によるムーンショット型研究開発事業として
「望めば誰でも安心して子供を産み育てられる社会」に関する調査報告(令和3年)がなされています。

https://www.jst.go.jp/moonshot/program/millennia/pdf/report_21_yoshida.pdf
https://www.jst.go.jp/moonshot/program/millennia/pdf/17_yoshida.pdf



題目は一見美辞麗句が並んでいますが、実際の本事業の考え方をぜひ見てみてください。
簡単に言うと、"女性による産む負担を軽減"するために、赤ちゃんは完全なる人工子宮で培養し
女性の体に依存しない、赤ちゃんを生み出すシステム作りというところが、根幹になっています。
報告書の中には「男性でも妊娠できる」と言う文言があります。

2050年の実現を目指して、とありますので、その頃学生の皆さんは
50歳手前くらいでしょうか。
実際にこのシステムが導入されるかは今後次第ですが、もしかすると
皆さんのお子さんが大きくなった時に、この潮流に巻き込まれるのかもしれません。
以前からこの動きは諸外国では既に始まっていて、米国フィラデルフィアの研究チームは
2017年の時点で、バイオバック(人工子宮)を用いて、羊の胎児の育成に成功しています。
彼らは本技術で、年間3万人の赤ちゃんを生み出せると、と当時のインタビューで答えています。

ここで、最初の話を思い出してください。
なぜ我々殆どの真核生物は体の中に、特に腸などに細菌を招いているのか。
また、ヒトの赤ちゃんは産道を通る際に、お母さんから細菌をプレゼントされます。
新しい技術は否定しませんし、それを望む人が入るのも事実ですが、
このようなプロセスを排除して生き物を生み出すことを基本とする
生命観、には私は警鐘を鳴らすべきかと思っています。

若い世代の皆さん。
これから、親になるかもしれない皆さんは、
どう生きるか、またどのように子供を育てるのか
について、よく考えてみて欲しいと思っています。