この度ビーグルの花子が我が家にやってきました。
ビーグルというと、忘れられない思い出があるんです。
あれは、私が学部生の卒論にいそしんでいたころ。
ヒラメの循環濾過飼育に関するテーマで、研究室に泊まる毎日でした。
あるとき、大学のキャンパスを歩いていると、ふと目に入りました。
総務・教務等事務系の部署が入っている建物の正門の前。
階段に、何かいる。
眼を細めてみると。
あれは犬だ。
更に拡大します。
あれはビーグルだ。
なぜ大学にビーグルが。
私はそばに近づきました。
彼女(のちにメスと判明)はちょこんと階段の1段目に座っているのですが、
明らかに疲れ、汚れていました。
その眼は、どんよりと生気のない眼(まなこ)をしていました。
ああ、これは捨て犬だろうなぁ。
ラボのメンバーを呼んで、相談しました。
同期で、動物保護施設のボランティアをしている奴がいたんです。
アイツにも声をかけて、とりあえず汚れがひどいので洗うことにしました。
大学の駐車場わきの水道ホースをお借りして、
犬用シャンプーで、皆で、しゃかしゃかしゃか。
すると一同怪訝な顔を。
指先に何か当たるのです。
ごつごつごつ、と。
毛をまさぐって確認してみると。
ひえええええええ。
1cmを超えるダニが。
しかも1匹や二匹ではありません。無数にいます。
なんたること。
どのような道のりを辿ってきたのでしょう。
本来ならダニをそのまま引き抜くと、足がささったままになることもあるので、
動物病院に行くべきだったのですが、その時は清潔にすることを優先して
皆で洗髪、ダニ駆除を人力で行いました。
きれいになった彼女をどうするか。
動物保護施設でボランティアをしている彼が引き取り手を探す方向で、
それまで大学のラボで一時的に飼うことになりました。
すごい時代ですよね。
ラボの中で、しかも分析業務もあるラボで、迷い犬を飼う。
そんなことができたんです。
ラボの一角に、簡易の犬小屋も設置しました。
彼は捨てられたのか、歩んできた道のりが激しかったのか、
吠えはしないものの、人間を見る目はどんよりとした、そのものでした。
引き取り手が現れるまで、僕らは彼に人を好きになってもらうべきだと、
まずは彼女に名前をつけました。
富士子(ふじこ)です。
なぜ富士子なのかは、記憶は定かではないのですが、たしかルパン三世の峰不二子からもじっていたと思います。
それから私は富士子と生活を共にしました。
一緒に添い寝をして、ラボで寝泊まり。
朝は散歩。
そんなことを繰り返していると
やっぱり通じるんですね
彼女の眼がまるで変ったんです。
明らかに生き生きした、「あなた大好きだよう」という目です。
あれは嬉しかったですね。
彼女はその後、保護施設の斡旋で、引き取り手が見つかりました。
富士子との日々は、ある意味全く犬との生活を送ったことのなかった私にとって、
或る意味初めての、犬との共同生活だったといえます。
もう20年前です。
確かどこかに写真が残っているだよなぁ。
今度探してみよう。
そんなこともあって、花子を今回家族に迎え入れたのは
なんとなく縁を感じているんです。
富士子がたどった境遇を辿らせないよう、
一緒に人生を共にしたいと思っています。
むにゃ、むにゃ。
とろーん。
ぱちっ。