近年、「テラヘルツ波」が、産業界や学術分野の研究者から
注目されています。
テラヘルツ波とは、「光」のように直進する性質と、
「電波」のように透過・吸収する性質をもつ電磁波のことで、
その働きがここ十年ほどで解明されるようになってからは、
テラヘルツ波がもつ素晴らしい可能性に対して
理解が広まり始めました。
今では医療や農業、エネルギー、食品など、多様な産業に
革新的な進歩を促す化学技術として期待されているほか、
生命や宇宙の謎を解き明かす鍵になるのではないかと、
学術分野の研究者からも注目されています。
テラヘルツ波は医療の分野でも大いに注目されています。
その用途の一つとして有望と考えられているのが、
エックス線に代わる安全な非破壊検査用光源としての実用化。
テラヘルツ波を照射することで虫歯の断層撮影をしたり、
やけどの深さの診断ができるほか、癌化した細胞を
早期に発見できる可能性があると考えられています。
東北大学の小川雄一教授らのチームは、テラヘルツ波を用いて
特定のタンパク質を選別する研究に成功しました。
これを応用することで、食品中に含まれる
アレルギー物質の検査や、新薬候補となる
タンパク質を探す研究に、役立てることが可能になるといいます。
また他の大学では、テラヘルツ波を身体に透過させることで、
癌細胞の位置を特定させる実験に成功しました。
さらにネズミを使った実験では、癌の分裂・
増殖をとめるという結果を出した研究機関もあります。
テラヘルツ波は照射することで、傷ついた細胞を
修復するという驚くべき作用があることもわかっています。
またテラヘルツ波を照射することで、「変性変化」という
現象が起こるということも解明されました。
テラヘルツ波を照射すると、そのものを構成する
原子の振動が共振し、最終的に結晶を構成する原子・
分子の配列様式の「乱れが是正される」と考えられています。
すると照射をやめた後も高いレベルで原子や分子が振動し、
テラヘルツ波が多量に放射されることになり、
物質本来の特徴が顕著になるといわれているのです。
そうした現象が「特性変化」です。
照射の対象が人であれば物性変化によって
細胞の乱れが是正され、人体が本来必要としない
細胞の増殖を防ぐ可能性があるというのです。
また、細胞の劣化を防いで、老化を防止する
働きも考えられるとのこと。その他にも、
血行を良くしたり、生活習慣病の改善などにも
応用できると考えられています。