フェニル硫酸は糖尿病性腎症のアルブミン尿の原因因子である★抄読会ver★
Gut microbiome-derived phenyl sulfate contributes to albuminuria in diabetic kidney disease(2019年4月 Nature communications)糖尿病性腎疾患がすべての糖尿病患者の約20-30%で発生し末期腎疾患や心血管イベントおよび死亡の主な原因となります。糖尿病性腎臓病の早期治療を行い、透析導入を予防することが極めて重要である。eGFRや尿中アルブミンなどの既存のマーカーで、どの患者が糖尿病性腎臓病を発症するリスクが高いかを予測することは難しく、また末期腎不全への進行をふせぐ有効な治療法が確立されていないのが現状である。そこで糖尿病の初期段階で合併症のリスクの高い人を特定するためのバイオマーカーを発見した。ヒトの腎臓毒素排泄を模した遺伝子改変ラット(SLCO4C1ラット)を用いて糖尿病性腎臓病の発症時に蓄積し、その排泄を促すことで病気の進行が抑えられる代謝産物を網羅的に探索した。糖尿病性腎症では、腎臓の濾過機能を果たすポトサイトや基底膜が障害されて尿中アルブミンが増加するが、遺伝子改変ラットでは基底膜やポトサイトの障害が減少し、尿中アルブミンが減少した。そこでSLCO4C1は代謝物を尿中に排泄する輸送体であり、特定の基質が蛋白尿の減少を引き起こしたと考えられ、•糖尿病性腎臓病による腎障害にかかわる重要な代謝産物として、フェニル硫酸(PS)を同定した。フェニル硫酸は通常腎不全で検出され腸由来の尿毒症毒素として検出される。フェニル硫酸を6週間経口投与したマウスの腎組織はメサンギウムの拡大を明らかにし、足突起の消失と糸球体基底膜肥厚をみた。これらはフェニル硫酸が糖尿病マウスにおいて足細胞障害をおこすことを示唆している。フェニル硫酸と尿中アルブミンとの関係について調べた。フェニル硫酸は糖尿病患者で高く、その値は尿中アルブミン量に比例していた。糖尿病性腎臓病患者の内、微量アルブミン尿の患者でフェニル硫酸が腎機能や血糖と独立して2年後のアルブミン尿増加と相関する因子であることがわかった。これによりフェニル硫酸はDKD患者における原因物質であるとともに新たな予測因子であることがわかった。フェニル硫酸を低下させることがアルブミン尿や腎機能の改善をもたらすかを検討した。フェニル硫酸はアミノ酸の一つであるチロシンが腸内細菌が持つチロシンフェノールリアーゼ(TPL)という酵素によってフェノールに変換され、体内に取り込まれて肝臓でフェニル硫酸に変換されてできる。TPLは一部の腸内細菌によって産生される酵素でヒトはもっていない。この腸内細菌のみがもつTPLを阻害することでフェニル硫酸の産生が抑制されるのではないかと考え糖尿病モデルマウスにTPL阻害薬(2AZAチロシン)を投与した。すると、TPL阻害薬を投与した糖尿病マウスで血漿フェニル硫酸の濃度が低下した。また、尿中アルブミン量、クレアチニン値も低下した。結論①フェニル硫酸が糖尿病性腎臓病の原因かつ増悪因子である。②糖尿病性腎臓病の治療にはフェニル硫酸の測定、TPL阻害薬のなどの異なる治療を組み合わせて、フェニル硫酸を低減させることが有用といえる。<感想>ちなみに、これは日本の大学での研究です。また、このような研究からTPL阻害薬など新しい薬が開発されるのではないでしょうか。個人的にはSGLT2阻害薬も腎臓に対しては、同じような作用があるのではないかと思ったりしております。難しい話でしたが、たまには基礎研究も読んでみると面白いですね。