「労働市場の流動性強化」について | ラヴログ

「労働市場の流動性強化」について

三橋貴明氏の「労働市場の流動性強化」について
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11493522087.html

このエントリで三橋氏は・・・

「企業が正社員を解雇しにくいから、逆に雇用が増えないのだ。正社員解雇を容易にすれば、企業は人を雇うようになり、失業率が下がる」


これに対して

バブル崩壊後やデフレ期には、雇用のパイが縮小していっているのです。
 そんな時に労働市場の流動性強化を実施すると、単に喜んで企業側がリストラクチャリングを進めるというオチになります。



という主張します。
その例としてスペインを取り上げ、

失業率の推移 - 世界経済のネタ帳

上の図の2010年に線を引き


「労働市場の流動性を強化し、正規社員を解雇し易くすれば、逆に雇用は増える」
 という理屈に騙され、失業率を下げることを目的に、2010年に「正規社員解雇を容易にする」形で労働市場改革を行ったのです。


と指摘しています。

でもこのグラフから、解雇規制が失業率をかえって高めた主要因といえるのでしょうか。
それならリーマンショックの影響と思われる2008年から2009年の方が変化幅は上です。

また、ジェトロの通商弘報によれば、
http://www.jetro.go.jp/biznews/4f9a2aac785c8

スペインの高い失業率の背景にはさまざまな要因があると指摘。

■季節や景気の変動の影響を受けやすい観光や建設に依存した産業構造

■働き口が過去4年間で13%減少した一方で、失業した世帯主に代わり仕事を探そうとする扶養家族(成人)などが積極的に雇用事務所に失業者として登録したこともあり、統計的に労働人口が3%増加している、といった点も、失業率の押し上げ圧力となっている。

■スペインの失業率がほかのEU諸国よりも高いのは、労働市場の柔軟性が欠けていることにも原因がある

と、三橋氏とは反対に労働市場の柔軟性が欠けるという指摘もあり、実際にスペインの解雇規制の強さは問題としてあるようです。

さらに「欧州債務危機の影響でEU全体の景気が急減速する中、スペインは2011年末に事実上の景気後退入りした。」

というから、その方が失業率上昇の主要因でしょう。

最も重要なのは、三橋氏の主張する2010年の雇用流動性強化と線引きした部分。
これは労働改革法のことだと思うのですが、それってこちらの認識に間違いがなければ2010年に成立して、施行されたのは2012年2月です。
ですから、2010年からの線引きでむしろ悪化した主張するのはかなり恣意的です。
果たしてスペインという特殊な事情を引き合いに、日本の労働市場を語るのは妥当なのかどうか。

ただし、三橋氏をはじめ経済学批判、反自由貿易の方々は事実を見ません。
それはイデオロギーによる観念論だからです。

ですから、このような指摘にも意見を絶対に変えません。

追記、グラフを比較。
スペイン2
三橋氏のグラフ

スペイン3
こちらのグラフだと、それ以前の失業率の変化幅の方が大きくて、影響はよくわからないです。
そうだと説得力に欠けるので、上のように2010年からとしたのでしょうね。