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不謹慎ながら印象論を

【送料無料】不謹慎な経済学

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パリス・ヒルトンは刑務所入りで得をした!
官僚の天下りは正しい。ニート対策は有害無益。五輪の開催国は不況になる……など、一見非常識だが実は正当な「不謹慎な経済学」を、気鋭のリフレ派学者が解説。

【内容情報】(「BOOK」データベースより)
気鋭のエコノミストが教える「正しい暴論」。常識のウソとデタラメを徹底的に暴く!パリス・ヒルトン、天下り官僚、オーラルセックス、格差問題、テロリスト、オリンピック、ツンデレ萌え、そして日本銀行…知恵と笑いと毒ですべての問題をズバリ解き明かす新しい経済学、ここに誕生。

【目次】(「BOOK」データベースより)
パリス・ヒルトンが刑務所で得たもの/人間関係が希薄化したのは、みんなが望んだからだ/オーラルセックスとエクスタシーの経済学/社会保障はテロリストのおかげで生まれた/官僚の天下り、本当は正しい!/ニートもハケンも、役人の利権を生むだけだ/経済の安定は攻撃的ナショナリズムを和らげる/ボランティアを義務化すると、経済格差が拡大する/最低賃金を引き上げると、失業も雇用も悪化する/ノーベル賞受賞者は、なぜ人種差別主義者と呼ばれたのか/アルファブロガーはラーメン屋に行列する人と同じ/リークと無責任の海に沈んでいくトンデモ中央銀行/クーデターが戦前の日本をデフレ地獄に突き落とした/「主権在米経済」が失われた10年に幕を下ろした/W杯や五輪が終わると、開催国は不況になる/世界最大の債務国アメリカの経済はいつ崩壊するのか

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
田中秀臣(タナカヒデトミ)
1961年生まれ。早稲田大学大学院経済学研究科単位取得退学。現在、上武大学ビジネス情報学部准教授。専門は経済思想史・日本経済論。「リフレ派」経済学者の代表的な論客として、各メディアで積極的な発言を続けている。サブカルチャーにも造詣が深い。『昭和恐慌の研究』(共著、東洋経済新報社)で第47回日経・経済図書文化賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


読みました。

物事にはいろいろな見方があります。
一部の面だけ見ても、それだけではわからないことや説明できないことが多いでしょう。
トリクルダウンが起きなかったことやグローバリゼーションが競争を引き起こすなどを理由に、自由貿易や自由市場を批判する方などがいます。
実際に、様々なことが絡んでいるので単純に否定できるとは思えません。
また、経済学は生産性の上昇、効率的なものだけを支持するわけではなく、公平性とのトレードオフというこちらをたてればあちらがたたず的なものの見方も教えてくれます。
アメリカの一人勝ち競争的な社会は経済成長に貢献しましたが、格差を生みました。これにはアメリカの政治的な分配の問題や、思想が絡みます。

これまで日本の終身雇用や年功賃金は小さな格差で効率性を上げていた。日本でもアメリカ的な成果主義なども導入されていますが、かならずしもそれがうまく機能するとはいえないでしょう。
何度も書いていますが、デフレで実質賃金が上昇している中では日本的なシステムも機能しないでしょうし、アメリカ的な競争、正規雇用と非正規などの格差は会社にとって長期的にはプラスにならないと思います。

この本の主張に適うかわかりませんが、そのように考えました。

この本で一点気になったのは「冬ソナ」を批判した嫌韓流という本への「政治性が微塵もないような純愛ドラマと、政治や外交政策への批判は分けてやるべきだ」と常識が通用しない、戦前の「敵性映画」と同様だと批判した部分です。
私自身はすでに嫌韓ではありませんし、ネトウヨ的でもないつもりです。
ですが、太下 義之氏(UFJ総合研究所 芸術・文化政策センター主任研究員)によれば、

実際に、日本の隣国である韓国では、21世紀の国家イメージの世界化・一流化が、国家競争力強化と対外交渉力の増大及び海外活動領域の拡大に不可欠な要素であるとの判断から、1996年に国家的な戦略「韓国文化CI」を策定・実施している

ということですから、作品には政治性が微塵も無いかもしれませんが、上記が事実であれば韓国政府には政治や外交政策的な意図があるのは明らかでしょうし、私自身韓国文化(K-POPなど)に触れたことで嫌韓がかなり解消されました。
これは韓国のイメージ向上という政治的な意図は効果をもたらしてているといえるでしょう。
また、一個人だけではなく少し前の調査でも韓国のイメージ向上を果たしたことで、そのような効果は無視できないと考えます。
しかも、嫌韓流を読むと結論は「作品そのものを楽しもう」、こう締めくくっています。
むしろ、切り離したほうが良いと主張して、作品に対しても面白くてハマったとも書いてあります。
そう受け取られないのも、これを読む対象者を考えればわからないでもありませんが、本当に田中氏はこの本を読んだのだろうかと、首を傾げたくなります。




この本は格差についてより重点的に書かれているようなので、それについて。
派遣切が問題になったリーマンショック後の日本経済ですが、それについてマスコミが大きく取り上げ派遣村などが話題になりましたが、非正規雇用の派遣の割合というのは実は少ないことはデータなどで明らかです。

どうも経済格差や貧困が商品的なものになっていると田中氏の指摘に私も同意します。
その中で、鋭い指摘があります。要約すると、

格差の原因をグローバリゼーション、IT革命、規制緩和などの構造改革とする見方があります。
しかしながら、これは日本のデフレと失業率の増加や不況と整合的ではないとします。

1、構造改革は供給側の効率化で、景気とは無関係。
景気はマクロ経済政策が必要、むしろそれがないと効果が得られません。つまり構造改革が格差を大きくすることはあっても、原因ではないということです。

2、グローバリゼーションに伴う、市場主義による構造変化に日本のシステムが機能しないことにより、成長が阻害されているという指摘も、それまで日本はさまざまな構造改革、規制緩和が実行されましたがそれが90年代に入ってからうまく行かなくなったことの理由になりません。これも総需要がないことが原因でしょう。

若い世代の経済格差は不況による新卒市場の就職難で、中高年の格差は不況を反映したリストラなどがその原因です。
つまり日本の格差は不況の長期化がもたらしたものだということです。
アメリカのように経済が好調だったなら、格差の原因が供給面などというのならもまだ理解できますが、日本では総需要不足、不況こそが失業や格差の原因でしょう。

これとは別に、高齢者の格差もあります。

「成長が格差を縮小させる」
■高齢者間の格差は縮小している

 日本の所得格差が拡大していることが大問題になっている。しかし、多くの検証によると、それは高齢化に伴う現象で、高齢化の影響を調整してみると、格差はそれほど広がっていない。原田泰氏、「WEBRONZA」朝日新聞社より引用



ですから、構造改革が所得を増やすということではありません。
デフレ、低成長ではそれはゼロサムかそれ以下のイス取りゲーム的なことになるだけです。





この本には経済学が分析道具として使えること、市場主義やお金がすべてではなく、経済は楽しいということを教えてくれます。
日本のエコノミストは、なぜその経済学を教えながらそれを信じることができないのであろうか。
所属する組織の(ための)分析ではないかとも指摘しています。
これには私も同感です。

経済学的なものを否定して、グロバリーゼーションの一部のマイナス面だけを強調して、読者を煽るような経済記事を書く方たちなど、本を売りたいのは作家として当然ながら、どこかの組織に所属しているのではないかと出版社や利害関係などからも想像できますし、そのハイペースな出版は信者のような存在に購入させるための、そういう商業的スタイルを連想してしまいます。
この方たちの本がアマゾンの評価が高いことから、世間で一般化している経済学かもしれません。
田中氏のこの本がアマゾンでは大学教授の書く本とは思えないとかなり不評(全体で星2つ)なことからもそれが覗えます。(どれも私の印象論か知識不足の間違いか、ですけれども)