経済論戦から学ぶ、貿易と賃金上昇。 | ラヴログ

経済論戦から学ぶ、貿易と賃金上昇。

【送料無料】経済論戦

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【内容情報】(「BOOK」データベースより)
「エセ経済学」を完膚無きまでに叩きのめし、返す刀で「経済ハルマゲドン本」を一刀両断に!世間知にとらわれた「経済学を知らないエコノミストたち」を相手にした獅子奮迅の闘いの記録。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1部 日本の経済政策-金融政策、為替政策そして構造改革(日本経済の危機-その本質と処方箋/デフレ不況を読み解く/「サプライサイド政策」はどこまで経済学的か-需要側を無視する議論の危険性 ほか)/第2部 政策批判とメディア批判(論戦・小泉政権下の経済政策-MM(メール・マガジン)『日本国の研究 不安との訣別/再生のカルテ』/アカデミズムから見た経済ジャーナリズムの問題点)/第3部 グローバリズムの神話と現実(虚妄のアメリカ陰謀説/対談「日米摩擦」の何が問題か/異端から正統へ-ポール・クルーグマン ほか)

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
野口旭(ノグチアサヒ)
1958年生まれ。1982年東京大学経済学部卒業。1988年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。専修大学経済学部講師、助教授を経て、現在、専修大学経済学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)



読みました。(後でこの記事読んだら、グダグダで何を言いたいのかわからないので、大幅に加筆修正しました。)

野口氏は経済学者として世間知に挑んできました。
よくある経済学批判が経済学者へと向けられることもしばしばです。
ですが、経済学者と一括りにするのも違うと考えます。
批判する方たちは、その対象をどこか具体的にイメージしていると思うからです。
それが経済学の多くの同意を持った内容への主張なら兎も角、マクロ経済学、経済学者としてしまうのはいささか乱暴な気がします。
だからといって名を挙げて批判することが望ましいというつもりはありません。
しかしながら、批判された側にとっても誰に対してか曖昧な批判よりは、より具体的な批判の方が論争は再考をもたらすことになるので、好ましいものになるでしょう。


個人的な好みの問題ですが、「意外な事実」という、事実という部分に反論はあるかもしれませんが、兎に角そういうのが好きです。
野口氏の著作には、常にそのような世間知を覆すような発見があります。といっても、経済学の本を何冊も読んでいれば既知の事実ではありますが、まだまだそのような誤りと思われる主張が散見されるのが現実ではないかと思うのです。

例えば、「国際競争力」という概念が、国際経済学には存在しないこと。
国際経済学が国際貿易において教えることは比較優位であること。
またその比較優位は絶対優位ではないので、生産性が他国よりも低いことを国際競争力というのなら、それでも自国での生産性が他の産業より比較優位であれば貿易は可能となる。
つまり、貿易は勝ち負けではないということです。
他にも他国の生産性向上が、日本のそれより高くなることは日本にとっての国際競争力の低下、負けを意味するのでしょうか?
他国の生産性の向上は、相対的に製品価格をより安価にします。そうするとどうなるかというと日本の貿易利益が増加することになります。
日本の劣位産業が、それにより衰退しましたが、他の産業でも石炭や農業など戦後の貿易の自由化以来、実際に同様なことが起こりました。
それにより、日本は負け続けたということになるのでしょうか?
そうではなく、その都度比較優位と思われる産業への調整を果たし成長してきたのです。


それでは、生産性が低下した場合を国際競争力の低下として、そうなった場合に労働者の賃金は低下するのでしょうか?
日本ではそういうことが主張されています。
しかしながら、それがもたらすのは他国の賃金上昇です。確かに企業同士は同様な産業同士で競争しているのは国内外問わず事実です。では、競争力(生産性)維持のためには賃金の低下が必要なのでしょうか。
これも一面的な見方が多いような気がします。というのは為替レートやデフレの問題も別々に捉えた議論が多いからです。
まず、デフレは実質賃金を上昇させます。デフレは貨幣価値を増加させるのでそうなります。海外から見た場合に円高もそうなります。
為替レートが一定のもとでの分不相応な高賃金、賃金が一定のもとでの分不相応な円高は、基本同じことです。
ならば賃金を低下させるよりも、為替レートの調整のほうがその調整を含めたコストは為替操作のほうがはるかに同意を得やすいでしょう。
それでも、国際競争力の維持を理由に賃金が上昇してこなかったという、2007年ごろまでの現実があります。
これが国際競争を理由とする、あるいは可能性があるという指摘もあります。

また高付加価値産業への転換の必要も、付加価値とはGDPなのだから低賃金は生産性向上にならないという主張もあります。
本来「高付加価値」とか、「高収益」も産業固有のものではありません。
農業がかならずしも低付加価値で、ハイテク産業が高付加価値ということではないからです。
うまい儲け話はない、需要と供給による調整で適切なものになるからです。(なんらかの介入がない場合)
他国にできないものを生産することが貿易の本質ではありません。国内で生産できるものでも比較劣位なら輸入したほうが利益であり、それは相手国にも同様にあてはまるという、あくまでも比較優位かどうかによるからです。
そして、デフレ下では実質賃金は上昇します。賃下げなどリストラ圧力がかかります。円高下の輸出企業も同様です。
ですが、円高もデフレも企業がいくら努力をしようとも、どうにかできる問題ではないということが重要であると、野口氏は主張します。
それができるのは、金融政策と財政政策という政府と日銀のみが行使しえるマクロ経済政策だけなのです。

つまり、金融政策と財政政策という政府と日銀のみが行使しえるマクロ経済政策が十分ではなかったことが、企業などが国債競争力を理由に賃揚げの要求に応えられなかった理由になると考えます。